出逢いが足りない私たち(1/2)

対談その他

「出逢いが足りない私たち」(祥伝社コミック文庫)より

あとがきにかえて
内田春菊×斎藤学

斎藤学先生は、依存症や家族の機能不全に関する研究の第一人者として活躍している精神科医です。今回、かねてより斎藤先生の本の読者である内田さんからのラブコールで、この対談が実現しました! ホルモンの話から家族の話まで、興味深い話題の数々をお楽しみください!

image060306.jpg斎藤先生、フリーランスになる!

斎藤 この本に出てくる子は仕事、仕事って、なかなかカタカナ仕事も大変ですね。内田さんは心配ってないの? フリーでやってきて。
内田 私の場合、幸運にも仕事はないのが心配じゃなくて、きすぎるのとトラブルをどうするかっていう悩みが多かったですね。私セックス描くの平気だったから、それだけで若い頃は一挙に仕事がきて。
斎藤 男より女のほうが度胸がいいのかな。私、今度初めてフリーランスになるんですよ。もっと本を書いたりしたくてね。
内田 わ! それはすごく楽しみ!
斎藤 前にチャンスがあったときは自信がなくて開業しちゃったんだけど。
内田 自信がなくて開業! こんな話初めてききましたよ私(笑)!
斎藤 開業すれば人がくるのは当たり前でさ。私の感覚だとまず自分の名前が知られることがイヤなんだよ。その点、内田さんや中村うさぎさんはえらいよ。私、開業のときなんて「下半身裸で群衆の中にいる夢」を見ましたもの。これは定型夢のひとつで、恥に関する夢でね。なまじ夢判断の本とか読んでるから「見ちゃった」って思ってね。
内田 自分ですぐわかっちゃう(笑)。先生ご本名ですしね。私は本名じゃないから。
斎藤 タヌキとかにしておけばよかったかな。うさぎなんて可愛いものじゃなく(笑)。

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精神の病と、精神科医という職業

内田 斎藤先生もそうですが、精神科医って命がけの職業っていうか…。
斎藤 私は電車に乗らないんですよ。この10年はずっとそう。医者やめる理由のひとつは、そういうのがイヤになったっていうのもある。あと「エロトマニア」っていう被愛妄想を抱く人たちがいてね。これは振り切るのが大変なんですよ。精神科医はみんな経験あると思うけど、色々自衛してますね。
内田 私が香山リカさんから聞いた話では、ネットでHP作っているだけで香山さんに「僕のこと知ってますよね」って話しかけて、香山さんが「知らない」って言うとすごくがっかりする人がいるって。そこから始まっちゃうと大変だなって。
斎藤 やっぱりファンタジーは誰にでもある。人間はファンタジーで生きていますからね。だから自分のファンタジーが問題なく作れて、リアリティがあまりない世界で生きていけるとなると、みんなそこに入っていっちゃう。この作品もちょっとそういうとこ描かれているね。例えるなら部屋の中にコタツがあって、そこに寝転がって手の届くところに何でもある状態で。蛸足だね。
内田 蛸足(笑)。何でも手が届く世界ですね。
斎藤 そう。それってまさしく子宮なんですよね、コードでつながっててね。

この作品とインターネット

斎藤 描けない人間からみると、こういう作品が描けるってすごいことだよね。この漫画は最後は崩壊していくけど、ここでパサッと切っちゃったっていうのは意味があるの?
内田 これは結局、誰にも起こるかもしれないっていうようなところに話を落とした、っていうことかな。タレントの女の子とイラストレーターの卵の女の子っていうのは関係はないのに、あまりにもその人に関心を持ちすぎてこういうことに。ネットの電波を通じて混じったり吸収されたり、っていうようなお化け漫画ですね。
斎藤 すごくクールというかシュールだよね。なんて言うか、ベタでいく人には難しいよね、この怖さを楽しむのって。わかる人にはいいんだけど。私が読んだ限りでは内田さんの今までの作品とはちょっと系統が違うような気がしたな。
内田 私本当はあまりインターネットのこと知らないんですよ。でも悪口がいっぱい書いてあるようなところをちょっと見たときに、「このエネルギーは発電とかに使えないのか!?」っていうくらい何だかすごいものが渦巻いていて。
斎藤 インターネットって、私たちのコミュニケーション手段としてね、人間の精神に何かを付け加えてくれるものなのか、あるいは崩壊のプロセスに招き入れてしまうものなのか、知りたいとこでしょ、みんなね。

内田さんはドーパミン系の人!?

内田 先生、ちょっとホルモンのお話を聞きたいのですが、竹内久美子さんの本ではテストステロン値が一番高いのって役者だって。スポーツ選手より高いんですよね?
斎藤 そうですね。テストステロンっていうのは大きく分ければドーパミン系のホルモンなんです
よ。睾丸から一番多く出て、女性の場合は卵巣からも出ますね。で女性の性欲を決定してるのはこのテストステロンなんですよ。エストロゲンじゃなくてね。
内田 じゃあ私はドーパミン系が強い方なんですね。
斎藤 うん、あなたはドーパミン系の人なのかな。ドパミナジック・パーソナリティ。
内田 そんな言葉があるんですか?
斎藤 ないけど私が作った(笑)。
内田 やめてー(笑)!
斎藤 性欲を強くする方法は、…ってさらに強くする必要ないですけどね。
内田 はい、強くする方法教えてください(笑)。
斎藤 ドーパミンと同じ物質っていうのは外部にあって、それは「シャブ(覚醒剤)」なんですよ。
内田 シャブ! 私、自分で意識したところなんですけど40歳前から、怒りが性欲につながることが多くなって。
斎藤 それって私がよく聞く、シャブ中の女の人によく似てるね。
内田 Y(担当編集)、なぜメモする! しないでよ(笑)! 私やってないですよ。
斎藤 やってないと思いますよ。もとから強いから必要ない。
内田 必要ない! そっちのほうがショックー(笑)!
斎藤 男は生まれつきのドパミナジック・パーソナリティ。達成感がないと段々憂鬱になっていくのね。
(続く…)

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Posted by iff