借金依存の息子と縁を切ったが(2/2)

オープンカウンセリング3依存症, 息子

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斎藤学からの回答

斎藤:最初は5千万と言うのを2千5百万に弁済してすましたと。で、また4年のうちに3千万の借金を作ってきたということですね。
債務依存とか借金依存という言葉はあります。この手の人は借金を他の人に支払ってもらったら、またすぐに作ります。前回よりちょっとづつ増えるのが特徴で、この人もそうですね。ほんとうは5千万と言われていたのを、自分の力で一生かかっても返すという経過をおっていれば、あなたの方にあまり問題をもってこなかったのでしょう。
対策は、姿を隠すしかありません。

──でも息子は「草の根を分けても探す」って。

image060111.jpg斎藤:言いますよ。いろんなこと言って脅します。ただ脅しはいろいろ言うけれど、実際にはやりません。それから、母子が一緒に住んでいたりしますと警察は「親子関係に不介入」と言います。でも、逃げたお母さんを追っかけてきたりした場合には、警察は対応できます。
今あなたが守っている家をそのまま確保して問題解決しようとすると、非常に難しいです。売却がいいでしょうが、その場合も、息子の方に金が流れない用意しなければならない。そういうときにこそ弁護士が必要なんですよ。当人の借金があなたに及ばないような措置をとる。それから家作についても本人が勝手に売り飛ばしたりしないような措置をとってもらう。それをていねいにやった上で、あなた自身は身を隠す。


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娘さんはあなたより有利なんですけど、害が及ぶことは免れないでしょう。脅しくらいは避けられないでしょうが、あなたが娘との連絡も断てば、娘に害は及ばないでしょう。

──でも、全部失わすっていうもんですから、とても怖くて。

image051226_2.jpg斎藤:そういうコトバが届く位置にいるから怖くなるのですよ。でもあなたは家を出て、最愛の娘さんとも会えなくなるわけだから、何もかも失うことになる。それが息子さんの望みなんでしょう?

実例をご紹介しましょう。西日本の方で大きな会社を代々経営している名門のおうちの子どもが暴れ始めました。姿を隠そうとしたお母さんがいちばん困ったことは、その土地には親戚縁者がいっぱいいるもんですから、暴力息子がそのひとたちの所を順々に襲うことでした。
しかたなく彼女は上京し、どうやって知ったのか、私が東京都の研究所にいたとき、そこに転がり込むように来られました。その人は昔看護師をしたことがあったというので、「免許は家においてきた」といったけれど、「そんなものはどうでもいい」と、知り合いのG県の病院に送って看護師にさせました。いや最初から看護師じゃなくて最初は患者として閉鎖病棟に入れたんです。入れないとまた家に帰ると思って。鬱病の診断で「病棟から出すな」って病院のスタッフにいって。本当に彼女は息子の暴力のおかげで鬱病になっていますから。あなたも鬱病だと都合がいいですね。精神病院の中は安全よ。閉鎖されてますから息子さんは見つけても中には入れないし、屈強な看護師がいっぱいいますから守ってくれます。

で、その息子は、お母さんがどこいったのかわからなかったですよ。この息子は、知能犯的な嫌がらせはしないで、ひたすら暴れるタイプで非常に危険な人だったから、かえってお母さんもあきらめがついたんでしょう。泣いてましたけれど。
でもそこに1年近く入院していたら、もともと看護師さんなものだから、いつの間にか堂々と看護師してましたよ。それから5,6年たって、わたしのところへ訪ねてきたのですが、息子は今は落ち着いてお母さんが捨てた家に住んで、親戚に迷惑かけることもなく働いてるってことでした。ただ、会いに行ったり、家に戻そうとしない方がいいって言って、その上で「どうしますか」といったら「わたし、今のところがいいですから、このままいます」と今もその病院にいますよ。ずっと。

この人は看護婦さんと言っても看護学校の先生していたんです。だから県下では教え子もいっぱいいて、有名な人だったらしいです。だから息子から逃げたときには地位も名誉もなげうってだったのですが、でも今幸せそうですよ。その手の相談があると、自ら「逃げなさい」と諄々と説いています。「逃げ場はありますよ」と言います。ああいう人がいるとすごく迫力があるんですけれど。あなたとよく似ている。そういう点で。

そうですね、最初はどうなんだろと思うかもしれないけれど、3年くらいたつと、その土地の中で人間関係も出来てくるし、4,5年立ったときにちらほらと「息子はそれなりにやっている」という風の便りが聞こえてきます。人間どこかに、「頼る人がいる」とか「その人から充分ものもらっていない」とかっていう考え方があるときは成長できないのです。一生娘やってようとか、息子であることをその者に認識させようとかって考え方になる。親のすねを狙って自分の成長が出来なくなってしまう。

──せっかく退職金で建てた家です。

斎藤:それはまあ、いずれあなたが、使えるようになると思いますけれど、でもそのことにあんまり気を残さずに。でも実際に一人の人がどこに住んでどうやって食べていくかというのは、その人その人の様々な工夫がいるところで、そこまで私が踏み込んじゃまずいですね。

でもね、借金の圧力に押されると、とんでもないこと考えるようになりますので、あんまり、オオカミの前に餌投げるみたいに、あなたがブラブラしてない方がいいです。

結局問題の解決というのはそれなりに痛みを伴います。自分の方は平穏にして解決だけが向こうからやってくるということはないですよね。結局解決をとるか痛みを避けて解決を先延ばしするかという話になります。

──病院に行っても治らないんでしょうか

斎藤:どうやって病院へ連れて行くの? それこそ、「じゃああなたの借金を全部払ってあげるから入院して」って話をあなたはするに決まってますよ。息子さんは今、迷いの中にいるのです。その迷いは、自分の真の力に気づかないところからはじまっています。「見捨てられる不安」が、恫しのコトバを吐かせているのですが、そうしたコトバが口をついて出てくるときに助けてはいけないのです。

こうした時に親にできることは唯ひとつ、息子の力を信じて見守ることです。そしてそれが一番難しいのです。息子さんはあるいは精神療法によって救われるかも知れません。しかし、それを求めることができるのは息子さんだけです。彼がどういうふうに回復の道をたどるのか見守りましょう。何もしてあげないことが、彼を助ける最善の方法なのです。

※この原稿は「斎藤学オープンカウンセリング」での相談者と斎藤学のやりとりをもとに作成されました。

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依存症, 息子

Posted by iff