第2回優先順位をどうつける

人生の要素

人生には様々な要素がある。仕事、家族、就職、結婚、家庭、学業、介護など、同じ要素があったとしてもライフステージによって優先順位は変わってくる。

学生時代には学校と家しかなかったフィールドが、年数を加えるにつれて増え、より複雑化してくる。

40代の会社員なら、大きく「会社・仕事」と「家庭」とに分けられるだろうが、仕事は多種多様になり、趣味の比重が大きい人、社会人になってから大学院に通う人など、暮らしの中での優先順位はそれぞれ違う。

子育て中の女性会社員であれば、男性の会社員より「子育て」に関する優先順位は高くなるだろう。

同じような立場にいる人でも、個人の考え方や家族などの人間関係で、それぞれの要素の重要度も違ってくる。また、自分で考えた優先順位どおり進められない場合もある。

ワークライフバランスを考えると、偏らずにバランスよく暮らすのがよいように思えるが、いつもそうしてうまくいくとは限らない。

入学試験のように簡単なものから手をつけて総合的に高得点を取った方がいい場合もあれば、一番の難問を処理するまで、次に進めない場合もある。

仕事だけを考えると、その職場の価値観に従って優先順位を考えればいいとはいえ、時期が重なったり人間関係が複雑に絡みあったりするケースもあり、 時間・給与・人間関係・責任の重さなど仕事の条件と自分の性格や能力をよく吟味して、何から手をつけていくか優先順位をつけるのは簡単ではない。その方法で結果が大きく変わってくるため、優先順位のつけ方次第で、評価や将来にも結びついてくる。

人生の大きな要素が、「仕事」と「家庭」でよいときもあれば、ライフステージによっては「仕事」より「パートナー」「子ども」「親」「友人」が優先されるべきときもある。

今の生活は、どんな要素で構成され、何が重要な位置を占めているかを認識することが大切だ。

ただ、年齢や環境が変わると、構成要素は同じでもバランスが変わってくる。

自分自身は会社のポジションが変わらずとも、周囲が変われば人間関係は変わる。

変化に気づかず、以前のままの感覚の優先順位で過ごしていることが、いずれ自分自身のワークライフバランスに影響を及ぼすことがあることを注意しておく必要がある。

家族の問題に向き合う

仕事は目標が明確なので途中で問題が発生しても、目標に向けて優先順位をつけて対処しやすい。しかし、「家族」については正解がないだけに難しい。

男性が仕事を優先し家庭をおろそかにしたせいで、問題が大きくなってしまい、取り返しがつかなくなったという話をよく耳にする。

夫婦間のズレ、子どもの問題や親の介護など、どんな家庭でも起こりうることだ。

妻がずっと不満を抱えていて、子どもの成人とともに熟年離婚をするケースも増えている。

同じ屋根の下に住んでいて毎日顔をあわせていても、家族に対する期待や“家族観”にはそれぞれ違いがあるのに、互いに認識していないことは少なくない。

家族間で十分なコミュニケーションができ、わかり合っていると自信をもっていえる人は、どれほどいるだろうか。

家族とはいえ、素直に共感や理解できないこともあるし、知られたくないこと、相手を気遣って心配させたくないがために隠していることもある。

家族内で何か起きたとしても、時間が解決する場合もあるし、早めに対処して解決に至らなくても、折り合いをつけることができれば、それほど大きな問題にはならずに済むかもしれない。

しかし、家族間のことは、「言いたくても言えない」、「互いの信頼感の一線を超える引き金になるかもしれない」という気遣いと恐怖で、面倒な問題ほど後回しになり、手が付けられない状況になることが多い。

人生を振り返ってみて「あの時点で、あの選択をすれば」と悔やむ人も少なくないだろう。問題を先送りにして回避するのは、優先順位の判断ミスである。

仕事で評価され社会的地位が高くても、家庭を放置したり破綻させたりする人は、ワークライフバランスのとれた人生を歩んでいるとはいえない。

「男性は家庭より仕事を優先して当たり前」という風潮が日本にはまだ現存しているし、「家事や子育ては女性の役割」という意識がまだまだ強い日本では、子どもの問題は母親の責任にされる場合が多い。

家庭の問題と仕事をどのように優先順位をつけて対応していくかは、男女関係なく、とても重要なことである。

本来、家庭の基盤がしっかりしたうえで仕事をしてこそ、逆に、仕事をすることで家庭が盤石になることが、幸せに近づけるのではないだろうか。

人生において自分にとって重要な要素が、それぞれ満足いく形で相互に作用していることがバランスのとれた人生と言えよう。

原発による自主避難に見る優先順位

3・11の原発事故後、福島から避難生活をしている人は、約15万人。そのなかでも、福島から県外に自主避難をした人たちは約6万人いる。避難者は全国に散らばっているが、避難先では、山形県、東京都、新潟県の順に多い。(参考:福島第一原発 遠い収束(東京新聞 2013年3月11日)

そのほとんどが父親は福島で仕事を続け、放射能による子どもの健康被害を避けるために母子だけで避難した人たちである。避難先の都道府県によって助成の内容はバラバラである。

震災後3年目を迎える現在、このまま避難生活を続けるか、福島に戻るか、さらに別の場所に避難するか、常に選択を迫られている。

2013年3月に福島に戻った人は、前年の3月より多い。子どもの進級・進学の区切りというのもあるが、二重生活による経済的負担が限界で、帰らざるをえなくなった人が多い。

また、夫婦が離れての生活で離婚の危機、孫に会えない祖父母の不満など、これ以上離れていると家族がバラバラになる、精神的に限界といったことで戻った人もいる。

福島県内の健康調査では甲状腺異常が出ている子どもたちの数値も上っている実態があり、福島が必ずしも安全ではないと思いながらも、健康被害のリスクよりも家族の関係を選んだのである。

もともと自主避難した人たちは福島では比較的収入が高く、夫が公務員や優良企業など安定した職についていて年収600万以上の人が多い。だからこそ福島と地方での二重生活を始められたのだが、低所得で自力で避難することさえできない人もいる。

父親は家族と一緒に避難先に移転したくても、そう簡単に今と同じ条件の転職先を見つけるのは難しい。また福島に購入した家を持つ人は避難してもローンは減免などにならず、地価が下がった福島で売るにも売れず、避難先に住民票を移すとローンの利率が上がってしまうため、どうしようもできない。

放射能汚染の健康被害についての考え方は世代でも人によっても違う。福島に残る高齢者に、なぜ孫に会えないのかと責められる母親もいる。

福島の人たちに対する公の調査では、「除染も進んでここで頑張ります」と返答するが、個別に聞くと福島を出たいという人が半数近くあるという調査結果もある。

このように福島の人たちは、家族、仕事、健康、子育て、教育、経済、住居、精神状態など苦渋の選択を迫られながら優先順位をつけ決断している。

ある人は母子で県外避難し子どものために福島に帰らない決断から離婚し、ある人は夫や両親からのプレッシャーに抗えず子どもへの罪悪感を抱えながら福島に戻り、ある人は家族全員で沖縄に移住している。このような選択は、地震国日本に住んでいる人であれば、他人事ではない。

現実の問題は、何かを捨てなければ前に進めない場合もあるし、最も困難とわかっていることを選択しなければいけない場合もある。

生きていくには働いて生計を立てることは当然だが、今、目の前にある仕事をどうするかではなく、人生の中で仕事をどう捉えるかという視点が重要である。

その時に最も必要だと 感じたことを優先的に選択して実行していけば、納得のいくワークライフバランスのとれた人生になるのではないだろうか。

2013/6/20

Posted by iffp