特集 イジメという人間関係

日本的いじめの成立と育児

正高信男(京都大学霊長類研究所)

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抄録:  いじめの質問紙による意識調査を、中学生を対象に、日本・イギリス・グァテマラで行い、比較検討を試みた。その結果、日本のいじめの特色として、暴力行為を暗黙裏に容認する傍観者層の存在が、大きな役割を果たしている事実が明らかとなった。さらに傍観者層に分類される生徒の家庭背景として、父親はホワイトカラーで母親は専業主婦という、典型的な核家族に特徴づけられる育児が、深く関係している可能性が指摘された。

 父親の影響が稀薄な反面で一方的に濃厚な母親との関係が、子どもの価値観の形成に強く影響をおよぼしているのではと推測される。また、いじめの関係の成立を可能にしている集団心理のメカニズムのモデル化を行った。

索引用語:いじめ、母親育児、認知的不協和