「トラウマを言葉にする一『セルマ』の著者を迎えて」(カミーラ・ギブ×斎藤学)抜粋

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目次

  1. 子どもの心のなかを描く
  2. 児童虐待、日本の現状
  3. 被害者が言葉を持つ
  4. 虐待を受けた子どもの行動
  5. 回復のための3つのステージ
  6. 自己発見から統合へ

抜粋

ギブ:私が語りたかったのは、希望という物語です。これが現実的かどうかはわかりません。

先生がおっしゃったように、その人物の人格によっても違ってくるのかもしれませんが、セルマの場合は、性的虐待を受けても人格は完全に破壊されずに、何らかの人的な資源を持ち続けたということがあると思います。彼女には、弱々しいながらもユーモアのセンスがあった。このユーモアを彼女が活用して、苦しい状況をウィットに変えていきました。

このような自分の資質を想像の世界で活かして、彼女は想像上のいろいろな人物や友だちを創ったわけです。確かにだれもがヘロインを持ってはいないかもしれない。彼女のある面がヘロインなんです。自分の肉体的な力をヘロインに託したのです。

最終的には彼女自身の人格とそれが再び統合されるのですが、そういった意味で、セラピーは彼女にとってはとても重要な手段でした。

セルマの場合は非常に具体的な精神分析という形式のセラピーが受けられました。そこで、安全、信頼、信用、そして愛されると’いう環境をかちとったわけです。