研究報告
抄録:
本論の目的は、短期療法によって介入した複雑性PTSD の一女性を対象として、抑うつの変化と、情動知能の変動が抑うつの変動に及ぼす影響について、時系列分析によって検討することである。
データは、クライエントが毎日評定したPOMS とEQS を使用した。
抑うつは谷−山−谷−山−谷−山という周期性を帯びた6 個のセグメントに分割され、シミュレーション・モデリング分析によってレベルの変化を検定した。
その結果、山にあたるセグメントのあいだに有意な変化が認められ(r=−.427、p < .05)、周期的な変動を示す抑うつが低下したことが理解された。
また、抑うつの変動率を被説明変数、情動知能の変動率を説明変数として回帰分析を行った。
その結果、弾性値は…−0.432 と推計され(t(139)=−7.986、p < .001)、情動知能は抑うつを静穏化させる方向で日々影響を及ぼしていたことが理解された。
索引用語: 時系列分析、情動知能、短期療法、複雑性PTSD、抑うつ
time-series analysis, emotional intelligence, brief psychotherapy, complex PTSD, depression