研究報告

長崎奉行書判決記録に見る江戸時代の酒乱と酒狂

田中輝好(駒沢女子短期大学)

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抄録:
 長崎奉行所判決記録(犯科帳)には江戸270年の歴史の中で寛文6年から慶応3年までの200年間の奉行所判決が収められている。江戸期を通じての三大娯楽は俗に「呑む、打つ、買う」2)と呼ばれ、治安を乱す社会悪の原因と考えられていた。

 現在でも同様であるが、飲酒のみならば何ら問題にはならない。しかし、飲酒を原因とする不祥事は当然処罰の対象となった。江戸期を通じて飲酒という嗜癖が社会治安を悪化させる要因であることを認識していた当局が、酒乱、酒狂の者の検挙に力を注ぐことよりも、その予防政策に力を注ぎ、治安の悪化、家族関係の崩壊を未然に防ぐ努力を行っていた事実は、現在社会の参考とすべき事例と言えよう。

索引用語:酒狂、酔狂、判決記録、長崎奉行所 drunkard, drunken frenzy, decision record, Nagasaki-bugyousho (Nagasaki Magistrate)

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