症例報告

身体疾患の仮装をした外傷後ストレス障害の1例

岩橋成寿(総合磐城共立病院心療内科)

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抄録:
 気管支喘息発作と急性出血性胃炎を発症し、外傷後ストレス障害(PTSD)が診断された25歳女性例を報告した。  患者は喘息発作、心窩部痛、悪心、嘔吐のため呼吸器科に入院し、上部消化管内視鏡検査で急性出血性胃炎が認められた。第3病日の夜に、強い不安・恐怖感と5ヵ月前の従兄による1週間の軟禁事件を訴えたため、心療内科に紹介された。警察による実況検分後に発症し、さらに18歳時にレイプ被害歴を有していることが明らかになった。

 身体症状以外に、侵入的回想、犯人に似た男性の回避、易刺激性、怒りの爆発、夢の中での想起、過剰な驚愕反応を患者は有しており、PTSDが診断された。薬物療法は、フルボキサミン、スルピリド、アルプラゾラム、クロナゼパムを投与し、さらに悪心を抑えるためクロルプロマジンを要した。支持的精神療法および自律訓練法を併用して治療した。

 本例においてはPTSDに起因する自律神経の過覚醒と視床下部一下垂体一副腎軸の機能失調により、気管支喘息発作と急性出血性胃炎が誘発されたと推測された。PTSDには、身体疾患を呈して発症する例が存在することを念頭に置くべきであると思われた。

索引用語:外傷後ストレス障害、気管支喘息発作、急性出血性胃炎、視床下部一下垂体一副腎軸

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