« 何とかしたくないのか | メイン | 検討方法(1) 損益分析(メリット・デメリット) »

2007年07月17日

長く続く抑うつ感に対して

 CBASP(Cognitive-Behavioral Analysis System of Psychotherapy:認知行動分析システム精神療法)というアプローチがある。
 21世紀初頭にイギリスで発表され、慢性うつ病等に効果が確認されたといわれ、注目を集めたものである。
 面白い事に、境界性パーソナリティー障害などには効果が全く無かったとの報告もあり、適切なアプローチも症状によって異なる事をはっきりとさせてもいる。

 CBASPに関しては私は専門家ではないのだが、その中で参考になる点があればと思い、概略を述べてみる。

 まず、うつ病を「個人×環境」の相互作用と位置づけ、ストレッサーに対する適切な対処が上手くやって来れなかったことによって生じているという立場に立つ。また、自己責任を重視しており、うつ病者が自分の人生に対して責任を負うと考えている。

 これは、人生における選択肢を増やす可能性を追求したものでもある。そして状況の理解と、自分の行動が状況に及ぼした関連を見つめ、問題解決技法を教え、自らの行動の結果がどのようになるのかを自覚できるようにしていくのである。
 その際に、治療者と患者の間の関係を密接に取り扱うので、治療者にもかなりの技量と境界線の制御能力が求められる。
 その中でも対人分別練習も重要な部分で、治療者は自らを活用しながら患者の重要な他者との関係を探り、問題になり易いポイントを明確にしてアプローチするのである。

===
 最後に、より行動療法的であるが、状況分析を徹底的に行ったうえで、負の強化を主要な動機付け戦略として用いるのである。負の強化とは不快感を減少させることが出来る行動を増やしていく(強化していく)というものである。

 状況分析においては、どのような事柄が始まって終わったのか、という一定の定めた期間における一連の事実を自分の行動や、その結果としての事実も含めて洗い出すことを行う。
 解釈は必要なく、何が起こったかを説明できる事だけが求められる。その上で、それに対しての意味を求め、自分の求めた目標と比較させ、何をどのようにしていく事が出来るのか、検討し、現実の結果にしっかりと直面させるのである。そして、現実の結果と期待した結果に至るプロセスの違いを確認させ、行動を評価させ、修正していくのである。

 以上振り返ると、これは大変難しそうだ、と思われる方もいるかもしれないが、それ以上にきっと治療者にとっても難しいものなのであろう。
 精神力動アプローチと認知的アプローチ、行動的アプローチが混在し、かつ治療者に課されている態度にはかなり厳密なものがある。その中には密接な関わりを持ちながらもあくまでも患者に主導権を持たせながら、上手く導いていくという高度な技術が求められる。

 ある大学の教授がこのアプローチをスーパービジョン無く活用してみた所、効果は確認できなかったが、イギリスにいるこのアプローチの専門化にスーパービジョンを受けながらセラピーを進めると、漸く効果が確認されてきた、という報告もしていた。
 私もこのアプローチについて読んだ後、「面白い!」という思いと共に「できるかもな…」と傲慢にも思ったが、その事は恥ずかしい事になるので内緒にしておく。

 しばしばこのブログにおいて、境界線の重要さ、自己責任についても述べてきており、重なる所も見出してもらえるのではないかと、少し硬いものを紹介してみた。難しそうだと不安になる必要は無い。たくさんの有効なアプローチが開発されてきている事の証拠だし、対人関係に求められる距離も時代の流れによっても変化してきている事を感じさせ、たくさんの希望もある。

 今回は少し読者を困らせたかもしれない。今までは認知行動療法の考え方やモデルについて主に書いてきたが、次回以降数回にわたり、技法などのアプローチを具体的に書いてみたいと思う。

木附ブログ

« 何とかしたくないのか | メイン | 検討方法(1) 損益分析(メリット・デメリット) »

投稿者 iff : 2007年07月17日 13:55

2007年07月17日 13:55:[←ブログメインに戻る]←IFFトップページへ][↑ページ上端へ