カテゴリー「オープンカウンセリング6」の一覧

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2006年03月27日

薬物で刑事裁判にかかっている息子(1/2)

相談者からの質問

image060327.jpg あさって、息子の初公判があります。息子は四年前、18歳の時にブタンガス依存から始まって、今は覚醒剤に手を出して逮捕されました。この間も先生にご相談に伺って、息子をダルクにつながらせるようにといわれましたので、いま、薬物依存の本などを息子に差し入れています。読んではいるようなのですが、「治療にかかりたい」とは言ってくれません。

 亡くなった夫の残してくれた遺産で、母一人子一人で育ててきましたので、いろいろと不安になってしまいます。育て方に原因があったのかとも思います。「共依存」ということを習いまして、私にもそんな面があったような気がしています。こうして本を差し入れて息子を治療につなげようとするのはコントロール願望になるのではないかと迷ったりします。

===
斎藤学からの回答

斉藤:薬物依存の基礎にあるのは精神依存ですよね。精神依存て何ですかといったら、使っちゃいけないとわかっている薬を使ってしまうことですよ。

 あなたの息子さんも、覚醒剤を使ったら、捕まって拘置されて裁判に掛けられるってことはわかってるのに、お母さんからお金をまきあげてまでクスリを買おうとする。かなり強烈な精神依存があるからです。
 精神依存は、身体依存のように外見ではわかりません。行動の履歴から診断する他ないのです。覚醒剤など非合法薬への依存であれば、今回のように警察に逮捕されたときが転機になると思います。裁判の時に弁護士がつきますから、「治療に専念します。NAなどの自助グループにも通います」と本人に言わせて、それを条件に執行猶予をつけてもらうことでしょう。

 息子さんとお母さんとの関係が共依存と呼ばれるものかどうかは、もう少し様子を見せて頂かないとわかりませんが、仮にお母さまが始終息子のことばかりに気をとられて自分の生活ができなくなっているとすれば共依存ですね。
 この際、息子の覚醒剤乱用は司直の判断に任せて、あなた自身の生活の質をあげてみてはいかがですか。例えば身を隠して別居するとかして。

 ──お考えはわかるのですが、息子には精神異常みたいな症状が出たこともありますので、気になるのです。
 四年前、息子と一緒に暮らしていたときに、息子が幻聴が出まして、一週間、毎日毎日、同じ言葉を繰り返すんです。その言葉の意味が気にかかって。斉藤先生だったら説明してくださるんじゃないかと思ってきました。
 毎朝四時頃起きて、必ず決まって「なあになあに」から始まって、「わかったよ、母さん、いけばいいんだろ」と言い出して、私の部屋へ来て、「母さん、今呼んだろ?」ってきくんです。それが一週間続いて、八日目に「呼んでないわよ」っていったときに、「間違いなく聞こえたのに、どうしてそんなこと言うんだよ」って怒り出して暴れまして、私は怖くて家を飛び出したんですけれど。毎日同じ言葉だったものですから、ずっと気になって。(続く…)

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2006年03月28日

薬物で刑事裁判にかかっている息子(2/2)

からの続き)

image060328.jpg斉藤:それは中毒性精神病と呼ばれるものかも知れませんね。薬物依存というのは習慣行動のことですが、ある種の精神作用物質が繰り返し摂取されて神経系に影響を与えるようになるとこうした状態になることがあります。
 覚醒剤はドーパミンという脳内ホルモンに良く似た物質です。ドーパミンが脳内で過剰に活性化された状態が統合失調性障害ですが、覚醒剤の連続過剰摂取の際にも被害妄想や幻聴が起こって精神病のような症状が出ることがあります。そうした人は追跡されている、迫害されていると思うわけですから危険なこともするようになります。覚醒剤依存者の「通り魔的刺殺事件」といったものが報道されたことがありましたね。

 でも、息子さんの場合は、これとも違うような気がします。4年前というと、まだ覚醒剤乱用に入る前ですよね。
 「毎朝四時に起きて」ということですから、睡眠障害があって、睡眠リズムが崩れていて、夢幻様状態(夢の中の出来事を現実と取り違えて演じてしまうという「意識障害」の一種)に入っていたのかも知れません。毎朝同じことを言うというところが「病的」ですね。

===
 病気というものは、健康な状態のときのその人に固有で豊富な行動レパートリーが失われて、病気に特有の傾向が見られるようになるものです。健康な人は毎日バラエティに富んだ夢をみて、個性的な寝言を言います。しかし、薬物依存症、アルコール依存症の人の寝言というのは、同一のものになりがちです。

 この場合、統合失調症系の寝言(追われている、迫害されている)じゃなくて、むしろウツ病系の寝言(私は悪いことをした、もうダメだ、貧乏になってしまった、死ぬほかない)なんです。自己懲罰的です。自分で自分を責めているところがあるのでしょうね。覚醒しているときには自分を責める声(幻聴)が聞こえたりします。
 つまり息子さんは内心、「お母さんごめんなさい」という罪悪感に苛まれていたのではないでしょうか。「お母さん」が彼の夢の中で懲罰者として登場していたのかも知れません。だから暴れたのかも。

  しかし、18歳でこういう状態が来てしまったというのは早いですね。ブタンガス依存は、シンナー吸引依存と並んで、脳神経系の破壊力が強いという印象があります。若いときから痴呆化したり、人格の平板化が起きたり。
 薬物誘発性の夢幻用状態や解離性障害は「癖になる」可能性があります。トラウマ(外傷体験)によるフラッシュバックも起こり始めると起きやすくなってしまいますね。あれと似ています。少量の薬物摂取でもひどい意識障害や健忘が起こったりする。風邪で熱を出しただけで症状が出てしまったり。

 お母さまの側の対策としては、繰り返しになりますが、なるべく本人への世話焼きから離れることです。ご自分の生活設計を第一に考えること。息子さんのことは出来るだけ頭から離して法的処遇や自助的施設に任せることにしましょう。おひとりで、それをするのは辛いでしょうから、JUSTのミーティングなどで同じような体験(息子や娘に関する悩み)をお持ちの方々と話をする機会を増やす必要がありますね。
 息子さんはあなたの援助を期待できなくなってからの方が自分の力に気づくようになるはず。そうすれば、自分の生活に自分で責任を持てるようになりますよ。これが出来ないと、つまり拘置を解かれた息子さんの求めに応じて同居ということになると問題は振り出しに戻ってしまいます。

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2006年03月29日

息子の借金をどうしたらいいか(1/3)

相談者からの質問

 もう31歳になる息子のことです。本当は、あまりお話ししたくないのですが。

image060329.jpg 仕事は自由業で不定期収入です。金銭にルーズで多額の借金を抱えています。友達のものを平気で質屋に入れてしまったりします。サラ金に数百万の借金があって、今、分割返済中です。そのお金は、主人が勤務先から退職金を担保に借り入れています。それだけでなく友人からの借金も300万くらいあって、それは息子が信用保証協会から借入して返そうと借入申し込み中です。わかっているのがそれだけで、でもこれで全部かどうかわからない。これに対して母親としてどう対応すればいいでしょう。

 昔からギャンブルやゲームが好きな子だったので、主人がすごく心配しまして、必要なお金も持たせないようにしていたのです。それでかえって区別がつかなくなってしまったのかと思ったりします。
 一度、本人もこのクリニックへ来たのですが、その後、絶対に来たがりません。

===
斎藤学からの回答

image051226_2.jpg斎藤:彼が一度だけここへ来たのは、来ることによって、自分の借金をある程度親にも責任をもってもらえるという理由があったからでしょう。普通、この手の方はそうでないと来ません。それに、当人が来れば問題がうまく片づくかと言えば、そうもいえないんです。これはむしろ親御さんがこういう場にいらして「どう対応するか」ということを会得していった方がいいですね。

 さて、この問題は、ギャンブルというよりも、「スペンダホリック」というものです。消費依存者とでも言いますか。ホリックはワーカホリックとかアルコホリックというように「依存症を持っている人」という意味です。この息子さんの場合は、ギャンブルもあるのでしょうが、「借金をいつも持っている」ということで、人生に緊張を与えて、多少アドレナリンの量を多くして、脳内活性物質を出して生きているというタイプの人です。これは体質・気質ですから、これを変えるのは大変なことで、まず、本人がその気にならなくちゃかえられません。
 だから親が「この子はこういう子だ」というふうに見切るのが、まず一つの仕事です。

 ──主人は、そんなに借金が好きなら、家を買うためのローンを作れ、というふうにし向けた方がいいかもしれないと言ってもいるんですけれど。

斎藤:ローンを支払うために彼はほかのところからの借金がどんどんふくらむ状態になるでしょうね。そういうご意見は、息子さんを見切ってるとはいえません。
 見切るというのは、当人の能力を見切る。彼の気質がどういうものであってどういうものでないかということを見切るんです。見切るというのは区切ることですから、父親原理の仕事です。まず、あなたにはうまくできないだろうと思います。と、いうことは、これから延々と借金は残り、しかもふくらむということ。これが前提です。これが見切りです。(続く…)

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2006年03月30日

息子の借金をどうしたらいいか(2/3)

(続き)
image060330.jpg こうなると、必要なことは、あなた方ご夫婦が家をとられない工夫をすることです。借金の保証人にならない工夫です。そのことについていつも警戒してなくちゃいけない。これは大丈夫ですか。家は抵当に入ったりしないようになってますか。たとえば、印鑑の所在はちゃんとしているかどうかとか。

 それから、土地を抵当にして借入したりできないようにすることは、いくらでもできるわけですから、これはちゃんとやっておいてくださいね。これは見切りの大事な問題です。

 こうした手続きもう一段階前にする仕事があります。「カードによる借金について、お父さんお母さんは支払い義務がない」ということを証明する書類を作っておくことなんです。
 それをしないでおくと、息子さんは勝手にカードを使って親が保証人にされた形で消費が行われて、強引な取り立てをされる。こうなると、親は払わなくちゃいけないと思って払ってしまうんですが、ここでこれを絶対しちゃいけないんです。尻拭いはしちゃいけない。尻拭いした分だけ、彼はこの問題から抜け出せなくなるんです。

===
 いちいち問題が起こってきたときに「支払い義務はありません」とやってもいいんだけど、一括してやる方法があるはずです。弁護士さんに相談して「子供がカードで使ったお金を親が支払わなくてもいい」方法がとれるはずですのでとったほうがいい。できなければ、問題が起こるたたびに、「支払い義務はない」ということを言っていっさい支払わない。

 次に、今までにわかった借金について。これはうまくできてらっしゃいます。すべて証書のはっきりした返済計画のはっきりした返し方に変えていきます。これは額が今のところ数百万レベルだが、これが数千万になっても億になっても同じです。
 で、その場合のコツは、自分が使いたいものを切りつめ過ぎないことです。無理してゆとりのない返済計画を実行すると破綻・反動が来やすいからです。借金先が10箇所あるんだったら、少額でも10分の1ずつ返す。取り立てる方としても焦げつかなければいいんですから。長い時間かかっても回収できると思えば待ってくれます。
 ただし、最近グレイゾーン金利(利息制限法に定めた15〜20%の金利制限と出資法の上限29.2%の間の金利)の「過払い訴訟」などが起きていますから、その辺は弁護士さんとしっかり相談してください。

 浪費嗜癖者の浪費を押さえるコツは、ある程度の浪費を許すことなんです。ここが難しい。たとえばレストランの回数なら週5日いってるところを1日にする。店もワンランク落とす。生活の潤いを全部取り上げない。自由業というのは音楽家ですか。そうなると浪費はしょうがないかも知れませんね。派手でしょうし。最終的に親の力をあてに出来なくなれば、仕事そのものを変えなければならないかも知れませんね。そういう形に変えていく。ただ、これはわかっている借金に対してとれる対策であって、こういう人の場合、必ず裏に数本の借金がほかに隠れてますから。

 しかし、この借金計画については、実はあなた方の仕事ではないのです。これは本人が、弁護士さんに相談するなり、破産申し立てなどにいくことですることです。だから今私が言ったことは、お母さんに言うことじゃないんです。お母さんのするのは、要するに土地や家屋の抵当には気をつけろと言うことと、カードで使ったお金の返済はいっさいしないこと。それだけです。彼の借金は彼の頭や心を痛ませればいいので、けっして親が息子の借金に悩むことはしてはいけない。(続く…)

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2006年03月31日

息子の借金をどうしたらいいか(3/3)

(続き)

image060331.jpg こうして息子さんは、この結果どうなるか。よくて破産でしょうね。悪いと生き埋めだ。暴力団金融にかかると、見せしめなんてことがありますからね、いつの間にか行方不明になって、それにからんで土地の抵当の問題が起こってくる。こういうのを「底をつく」といいます。

 アルコール依存症がそうであるように、依存症の治療には、このような「底つき」、人生の転回点が必要なのです。これも父性原理の一つです。
 これがいつやってくるのかは、私には読めない。この人にガールフレンドがいて結婚を約束しているのか、あるいは一家の主人ですでに何人か子供がいるのか、そういうことで底を打つ時期が変わってきます。全くのシングルですか。それなら、きっとかなり年とってからになりますね。

 ──はあー

===
斎藤:自分の愛するものを見切るのはすごく難しいですよ。しかし「突き放す」と「見切る」のは違うのです。「おまえの借金の問題については私はいっさいなにもしてあげられないんだよ」ということをよく言う。その方が底を打つ時期は早くなります。

 それから、こういうものはオール・オア・ナッシングの直り方をします。つまりたらたらとちょっとでもやっているうちは直りません。借金の問題がなくなるときは一切なくなるんです。新たな借金をいっさいしなくなるときが回復にはいるときです。
 私たちのところに来ることが必要になってくるのは、そうなってからでしょう。こうして借金について周囲が心配をしてくれているうちは、絶対にクリニックには来ません。たぶん、彼が私と会うのは、彼が50歳を過ぎてからでしょう。ただ、一度お会いしたことがあるようなので、「今日は斎藤にあった」といっておいてください。何かの時に思い出すかもしれない。もう本当に首が回らなくなったとき。

 ──もう回ってないと思うんです。

斎藤;回ってるんですよ、なんとか。回ってるから治療に来ない。本当に回らなかったときには、「案外違うところに道がある」なんて思ってこちらへたどり着きます。

 ──私も、おっしゃるように、見切りたいとは思っているんですけれど。

斎藤:是非そうなさってください。その方が息子さんのためにもなります。こういうのを強い愛、タフ・ラブといいます。ぐじゃぐじゃの柔らかいソフトクリームみたいなのばかりが愛じゃないんです。「なにもしてあげない愛」「強い愛」っていうのがあるんです。「切り離す愛」です。

斎藤学の講座・ワークショップ

講座名日程時間料金対象会場
斎藤学ワークショップ6/17
18
14:00〜20:00
10:00〜18:00
31,500円一般東京港区
斎藤学オープンカウンセリング18:30〜20:303,000円、5,000円一般東京麻布
親のための家族相談18:30〜20:303,000円、5,000円一般東京麻布

※開催日については必ず各講座の詳細ページでご確認下さい

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2006年04月03日

癇癪夫から逃げています(1/4)

相談者からの質問

 結婚15年で、夫との間に2人の子どもがいます。今日はこの夫のことについて相談します。

image060403.jpg 主人は癇癪持ちで、1年に1ぺんくらいですがたまに暴力を振るいます。自分のことに自分で責任をとらないタイプで、何でも人のせいにします。家族で出かけて渋滞に巻き込まれたり、電車に乗り遅れてしまったりしてもぜんぶ私や、おとなしい長男のせいにしてきました。紅葉を見にドライブに出かけたものの目的地に着くと紅葉がすっかり終わっていたということがあったのですが、そのときは、展望台ですっかりふてくされてしまって怒り出し、私をそこに置き去りにして一人で車に乗って帰ってしまったこともありました。家族で映画を見に出かけて、それがつまらない映画だったりすると、怒って先に帰って鍵を閉めてしまい、私たちを閉め出したりします。

===
 3年ほど前に、転勤になって家族も一緒に引っ越したのですが、そちらの職場で主人はいじめに遭ったようで、ストレスがたまって、いっそう私たちにあたるようになってしまいました。つまらないことで1カ月も2カ月も毎日ののしられることもあり、私もだんだん元気がなくなってきて、消耗してきました。いまでも、些細なことで爆発します。

 引っ越しだとか、中間管理職になった責任のストレスで、またさらに子どもや私のあらを探して、責めるようになりました。
 あまり長男にあたるものですから、長男がウツ状態になって、勉強ができなくなってしまいました。これでは危険だと思って、姑の家に預けたんですけれど、今度は姑が長男を囲い込んでしまって、私の元に返してくれなくなり、かえって事態がぐちゃぐちゃになってしまいました。

 姑は、主人がこうなったのはすべて私のせいだと長男に言っているようで、長男はすっかり混乱してしまい、私のことを悪く見るようになってしまいました。
 以前は長男は主人に「何で僕はこんなに殴られなくちゃいけないんだろう、サンドバッグみたいだ」って言ってたのが、「僕はお父さんにいじめられるから、弟をいじめてもいいんだ」というようになって、すごく反抗的になりました。「勉強しなさい」というと、反抗して暴れるようになって、主人はそういうことも「全部おまえのせいだ」といってまた私を責めます。

 わたしももうすっかり疲れてしまい、今、別居中です。この先どうしたものかと思いまして。(続く…)

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2006年04月04日

癇癪夫から逃げています(2/4)

(続き)
斎藤学からの回答

image051014_3.jpg斎藤:夫の転勤による転校でだいぶ環境がかわったんでしょうか、ご長男のストレスは高かったでしょうね。弟の方は6,7歳くらいで小学校の初めからだったら問題ないかもしれないけれど、ご長男は大変だったでしょう。

 ──でも引っ越した先の学校ではわりと親切に迎えられ、フレンドリーな感じで過ごしました。姑に引き取られてからは転校生イジメみたいなものは少しあったようで、やっぱりそういうことも影響しているのでしょうか。それと私たち夫婦の関係が悪いのと・・・

斎藤:最初の転校先での不適応はあまり目立たなかったのね。むしろ次の転校先でいじめられた。
 そのときはあなた(母親)から離されていたわけだから、大事なときにいないあなたを恨んでいるのかも知れませんね。だからこそ、姑(お祖母ちゃん)の刷り込みが効いてたんでしょう。
 もちろん全ての前提としてあなたたち夫婦の問題があります。あなたは別居なさってから住み込みで働いていらっしゃるんでしたっけ。ご主人からお金はこないんですか?

 ──たまに。2万円とか3万円とかそんな額です。今調停中なのですが、私の実家の親には「旦那さんがそうなるのは、おまえの辛抱が足りないからだ」といわれていますし、現実的に離婚となると、この不況下で将来どうなるかなと心配で心配で。

===
斎藤:苦境ですね。まぁ、何とかやっていけると思う他ないですね。絶望しててもしようがない。それよりも、長男があなたのこと嫌ってるっていうのは、いやだね。

  ──はい。

斎藤:せっかく一生懸命育てた子が「お母さんがいけないんだ」という態度示すと、悲しくなっちゃうね。

  ──やりきれないです。

斎藤:長男は姑さんに取り込まれたんですね。姑は息子に「お母さん、変ね」かなんか吹き込んでるのかも(参考:『毒になる姑』S・フオワード、白根訳、毎日新聞社)。「お弁当の空き箱の片づけを息子にさせるなんて、そんな怠けたお母さんはいないよ」なぁんて。

  ──はい。

斎藤:ふうん。でも、あなたの亭主みたいな男は、たくさんますね。日本の男の半分くらいはそういう未熟男じゃない? 女房の前で子ども返りして、いやなことがあると「紅葉が散るのもおまえのせいだ」なんて言う。こういうのに付き合っていても救いがない。やっぱり、あなたがいやだと思ったのは無理もないと思いましょう。お迷いにならないことです。

 いま、一番の問題は、あなたが家族から切り捨てられたように感じてらっしゃることですね。「私が捨ててやるんだ」という自分中心の考え方に切り替えた方がいいですね。
 で、あなたとしてはどういう作戦を立ててるの? これは戦争ですからね。「ローズ家の戦争」じゃないけれど、勝たなければ。

 和戦併用でいったら負けちゃいますよ。もし、家族が再統合されるにしても、あなたが白旗掲げながら「悪うございました」という雰囲気を発散しながら戻ったら、徹底的にやられてしまう。ご長男への影響もひどいことになりますよ。

  ──はい。そうなったらもう奴隷になるしかないと。(続く…)

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2006年04月05日

癇癪夫から逃げています(3/4)

(続き)
image060405.jpg斎藤:「私はあなたとの生活に見切りをつけた。ついてはちゃんとした別れ方をしたいから出すものを出せ」という形にしないと。彼は甘ったれ男ですから、あなたを失うということに直面して態度を変える可能性があります。
 ただ日本の離婚裁判は、あなたもお聞きになっていると思いますが、女性側に悲惨な思いをさせる場合が殆どです。不安でいっぱいというのは良くわかります。

 しかしこれでも10年前にくらべればずいぶん良くなっているんです。私はずっとこういう、ひどい目に遭ってる奥さんたちの離婚裁判を見てきましたから言えるのですが。私は法律には素人だけど、少しずつ変わってきてるのを感じますよ。
 だから、一方的に別居して夫から経済封鎖を受けているみたいな形から抜けることが当面の作業ですね。例えば法的に「婚費請求」をするとか。誰か、間に入ってる人がいるんですか?

===
  ──はい。しかし調停委員の人は主人の味方なんです。婚費の請求についても「これは法的な強制力はないからね」なんて私に釘を刺すようにいうんですね。「私が10万円ください」っていっても。だから弁護士などを頼まないとだめなんでしょうか?

斎藤:本当は調停委員は弱いものの側に立つべきで、それでようやく「調停」といえると思うんだけれど、夫の味方について虐待されている妻を更に苛めることの方が多いんです。身体的暴力がない場合はね。つまり「調停委員」は「間に入る人」ではありません。だから、あなたの代理人(弁護士)がどうしても必要になります。あなたの主張を強く擁護してくれる人が。

 ──はい。それと、息子は、だんだん乱暴するようになってきたんですけれど、どうしたら治るでしょうか。

斎藤:あれ? 息子さんとは一緒にいないんでしょ?

  ──今はいませんが、預けている姑の家が、あんまりいい環境じゃないので心配で。

斎藤:でも、あなたとご長男は一緒に住めるかどうかわからないでしょ。だから心配しなくていいんじゃない?
 まずあなたがプライドを失わずに生活できるためにどうすべきかを考えたほうがいいんじゃないですか。とりあえず、住み込みの仕事を見つけて住むところと給料を確保したってことは、あなたが生活する能力を持っているということですよね。これはよくやりましたね。今の生活をとりあえず続けることです。
 今、長男はあなたにとって人質のようなものになっています。これにとらわれて、すぐにでも戻らなければと考えないことです。あなたがこれから闘い続ける場合、子どもは2人より1人の方が身軽でいい。その状態で、あなたは、あなた側に立ってくれる弁護士をまず探すことです。

 今のあなたの状態だと、混乱したまま放り出されて、子どもからも背かれて、というわけですからあなた自身のメンタルな問題を保護してくれるような人を確保して置かなければならない。つらい闘いになりますから。まあ、お役に立てるかどうかわからないけれど、もし必要なら私の方から弁護士さんを紹介します。

 ただ、あなたはあなたで、ちゃんと「自分を守る」という気持ちをもってもらわないと困ります。「息子のことなんかどうでもいい」と、ひとまず思うことにしましょう。まずあなた自身が元気に生きられるようにならなければ。

  ──わかりました。(続く…)

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2006年04月06日

癇癪夫から逃げています(4/4)

(続き)
斎藤:ものごとの解決のコツは、その人ごと、その場面ごとに「なにが一番大事か」をしっかりつかむことです。優先順位決定ですね。そしていちどきには一つのことだけに没頭する。
 この場合だったら、「これから先も夫と一緒にやっていけるのかどうか」についてあなたの態度をしっかり固める。その際に他人の変化を勘案してはいけない。この場合であれば、夫や息子の振るまいが変わるかも知れないと思うことが、それにあたります。
 人は弱いもので、愛する者が自分に良くしてくれるようになると信じたい。しかし「他人は決して自分の都合のいいように変わらない」という原則があります。このことを忘れないこと。夫や長男と一緒に暮すことを優先すると、いずれ何もかも失うことになるでしょう。だって夫は今まで以上に居丈高になって癇癪を起し続けるから、いずれ再びあなたは家を飛び出すことになる。長男は、奴隷のようなあなたを見るのが苦しくて、あなたを憎むようになるから、あなたはもっとひどい暴力を息子から受けることになるでしょう。
 つまりあなたは「優しかった長男」も失ってしまう。それでも良ければ、家に戻ってもいいけれど、別の道があるのではないかとよく考えましょう。こういうとき大事なのは、まずあなたが落ち着くことですね。

===
image060406.jpg 自分を落ち着かせるために確保すべきものは、あなたの側に立って話しを聞いてもらえる相談相手です。この場合だとまず弁護士、それから精神的苦悩に対応してくれるカウンセラーか、精神科医。つまり最低2人の人物が必要だと思います。
 そのカウンセラーなり精神科医なりが熟練した人であるなら、必ずピア(仲間)との出会いを勧めるはずです。あなたと良く似た経験をしている、あるいはしたことのある主婦か元主婦で、今、同種の問題の渦中にある人か、そこから抜け出した人。抜け出した人のことを「先を行く仲間」といいます。そういう女性たちと語る場を持つ。例えばJUSTはそういう場を提供してくれているはずです。
 仲間と出会うと、弁護士さんの評判から裁判の先行きまで、いろいろな情報が得られます。いろいろな人が私と同じような苦労をしてるんだなあ、と思えるようになるだけで落ち着けるものです。そういうわけで、これからのあなたは今まで知らなかった大勢の人々に出会うことになる。それがあなたを変え、あなたは今よりずっと強く賢くなる。

 そういうことが済んで、あなたの夫への態度が充分に固まってから子どもの問題に入っていく。場合によっては、このご長男とは縁がなくなってしまうかも知れません。いや、暫くの間ですよ。そんな絶望した顔なさるから、私はビクっとしちゃった。

 実はご長男は「強くて柔軟な母」を何よりも必要としているのです。家出前の彼の暴力は夫婦の亀裂を予感して自分の問題に夫婦の目線を移そうとしての試みだったと思います。もちろんそんなこと意識してやってるわけじゃありませんがね。子ども、特に第一子はこういうことを良くするんですよ。実際は今回のように逆効果になってしまうことが多いのですが。そういうわけで、時期がいつかは別として、ご長男は必ずあなたを求めてきます。そうしたとき、どれだけ「強い母」、「毅然とした母」を演じられるかが、あなたにとっても、ご長男の将来にとっても大切なことなのです。

 もし、ご長男が現在のように「癇癪夫」で「子ども返り男」の父を学習し、それで済むと思ったら、彼は世の中から手痛い処罰を受けることになる。自己愛だけが発達した、世間知らずで頭でっかちで、他人をバカにすることしか知らない潜在的暴力男になる。しかしこの種の男は実際には他人からの処罰が怖くて世間に出られないから暴力事件も起こせない。要するに世間にありふれた「引きこもり男」になるでしょうね。
 仮にそこをくぐり抜けて世に出たら、彼は次世代の「女性の敵」になります。そうなることは本人自身に一番良くわかるから、彼にそこそこの智恵さえあれば絶望します。こうして彼が「底をついたとき」(絶望したとき)、彼はあなたに会いに来る。こうしたとき、家の外に出た母が健在であることが彼を救うのです。そうした「強い母」こそ、男に「男の何たるか」を教えますから。私の定義する「男」とは「利他主義に徹することのできる者」のことです。身を滅ぼしても自分に頼る者を守る。妻と子を身をもって保護する。それが男だということを、それが出来なかった男を捨てることで息子に教えるのがあなたの仕事です。
 妻子のために生きられない男が、「世のため、人のため」なんて言うのは悪い冗談です。要するに「強い母」こそ、息子にとっての「父」なのです。

 そうは言っても、あなたのご長男には智恵がなく、だから絶望もしないかも知れない。「男」になんかなりたくない男になるかも知れません。そのときは諦めるんですね。諦められますよ。あなたが自分のために残りの人生を送ろうと思い定めれば。そもそも子どもなんて、当てにできないものだと、この仕事をしているとつくづく思い知らされます。どんなに母親が「この子のために」なんて生きていたって、妻なんて金なしで追い出されちゃうケースが多いでしょ。そうすると金のある方につくんですよ、子どもたちは。冷たいものです。「この子のため」という生きかたそのものが間違えてるんでしょうね。そんなふうに思われている子どもが「母のため」に生きたら、いつまでも「家庭という子宮」から出られなくなってしまう。どこかで母は捨てられるものでしょ。それが今なんだということもあり得ると言ってるんですよ。

斎藤学の講座・ワークショップ

講座名日程時間料金対象会場
斎藤学ワークショップ6/17
18
14:00〜20:00
10:00〜18:00
31,500円一般東京麻布
斎藤学オープンカウンセリング18:30〜20:303,000円
5,000円
一般東京麻布
親のための家族相談18:30〜20:303,000円
5,000円
一般東京麻布

※開催日については必ず各講座の詳細ページでご確認下さい

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