カテゴリー「オープンカウンセリング4」の一覧
2006年01月19日
時の流れを止めたい息子(1/3)
相談者からの質問
24歳の長男の件でまいりました父親です。
長男は幼児の頃から不器用で内気なところがあったのですが、中学2年生になって登校拒否が始まりまして、それから引きこもり、昼夜逆転生活が始まり、現在24歳に至るまでまともな社会生活は一度も経験しておりません。
この登校拒否の直接の原因は、体育の時間に先生にしかられたということだったのですが、そのとき、力づくで玄関にしがみついているのをひき離して学校にいかせようとしたり、びんたを張ったりしたこともありまして、今思い返して反省しています。途中からいろんな人に相談し、いろんな本を読んで、これは長期勝負だと考えて、いろんな病院に行き、先生にも相談して今までやってきたのですが、もう24歳になりますし、中学2年の頃からもう10年たちました。これからどうなるものかと非常に心配です。
===
今日とくに相談したいことは、息子が買い物依存症にかかっていることです。とくに、去年の9月から12月までの3ヶ月間で、勝手に親のキャッシュカードを使って、30万、40万というピッチで250万円引き出してきれいに使ってしまいました。これは私どもの定期預金の全額でしたので、非常にショックでした。
追求すると息子は「ごめんなさい」としおらしくいうのですが、また2週間後には、「1万円くれ、5千円くれ」といってくるわけです。お金をあげなければ、騒ぎ立てます。むちゃくちゃ騒ぎます。危ないものは投げないのですが、枕だとか座布団だとか、パンフレットだとかそういうものを母親に投げたり、時には私にも投げたりして、なんとしてでもお金をもってゆきます。日中は私がいないので母親が対応するのですが、母親は根負けをして、千円、2千円、多いときには5千円とお金をわたします。そうすると出かけて4時間5時間帰ってきません。コンビニにいっていると本人は言うのですが。帰ってくると、リュックにたくさん新聞・雑誌を買ってきます。4畳半の彼の部屋が、だいたい2ヶ月で満杯になってしまいます。そうしますと、いやがる本人を説得して、家内と私で買ってきた雑誌、新聞を処分する。
こんなことの繰り返しで、今精神科に連れて行っておりますが、息子は「自分はまともだ」と言って2、3ヶ月に1回くらいしか行かない。病院に行くときも結局は「おこずかいをあげるから」とか交換条件をつけて行く状態です。
かわいそうなことに、長男には友達は一人もおりません。中学3年の時に小学校の時の友達が2回くらい訪ねてきましたけれど、それ以来誰も訪ねてこない。そういうかわいそうな面もありますけれど、とりあえずは今の買い物依存症を何とかして脱却してもらって前向きな方向に行ってもらいたいなと願っています。多少は改善はしているのですが、毎日の「おかねくれ、お金くれ」攻撃に家内もかなり参っているようなので、今日はこの点について、私どもはどういう対応をすれば息子を脱却させられるのか、アドバイスをいただきたいと思います。(続く…)
新規講座・ワークショップ
| 講座名 | 日程 | 時間 | 料金 | 対象 | 会場 |
| うつに効く ストレッチから呼吸法まで | 1/31、2/7 | 15:00〜17:00 | 3,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| アサーティブ・トレーニング | 3/3〜6回金 | 18:00〜20:00 | 18,000円 | 一般 | 東京麻布 |
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2006年01月20日
時の流れを止めたい息子(2/3)
(続き)
斎藤学からの回答
斎藤:はいわかりました。お父さまのお話しの中で一番大事なことは「改善はしているのですが」というところですね。それから息子さんには手洗い強迫があって、その症状がひどくなって、やがて風呂に入らない、身の回りを構わないという症状もおありになるのですね。それからお話にあったように収集狂みたいなところがある。彼の場合、集めるものを買ってくるところが違うだけで、拾って集めてくる収集狂と大して違わない。部屋をいっぱいにしちゃうところは全く同じです。でも、ここ3年ほどこの症状は改善方向ということですが、これがとても大事なんですよね。どこがどうよくなっていますか。
──たとえば、先ほどお話しした昨年12月の事件(借金の露顕)があってから多少違ってきましたが、それまでは半年に一回くらいしか散髪に行かない、その散髪も相当苦労して私が車で連れ出して連れて行くという感じだったのですが、それが2ヶ月か3ヶ月に1回くらい行くようになりました。それから、非常にいらだって真夜中に部屋の中で床や壁をたたいて「どうして俺はこんなことになったんだ」と騒いだりしたのですが、今もそれはありますが、その度合いが以前とはややちがってきたと。
斎藤:騒ぐのが少し減ったんですね。
===
──ところが例の250万事件の後にも、実は借金をしてたんです。2ヶ月ほど前に気がついたのですが、それまでは彼が毎日リュックいっぱい買ってくる、そのお金がどこから出てきたかわからなかったのです。息子に聞きますと、「電話ボックスで20万くらい拾ったんだ」とかそんなことを言うんです。これも非常に信憑性があるように、「握った瞬間手がふるえた」とか(会場大うけ)言うわけです。で、そんなことはないだろうと思いながら、ほかに思い当たる節がなくていたのです。銀行の預金から何からすべてをチェックしてみたところ、全くおろされている形跡もありませんでした。ところが、定期預金から借り出せるという制度があるんですが、あれは通帳に記帳されないことに母親が気がつきました。その制度だと満額の90%くらいまで借りられるわけです。
斎藤:これは健康な人だね。頭は壊れていないです。それから、よくなったことに目を付けるのは、あらゆる問題解決のこつなんですよね。よくなったのは、抗精神薬が効果を持ってきたのでしょうか。それともこの借金露顕事件の影響でしょうか。このころにお薬の処方の変更などがあったのでしょうか。
──いえ、処方の変更は特にないです。それでここ2ヶ月ほどは、また悪くなったんです。
斎藤:どの点が悪くなりました?
──散髪に行くと言って母親から5千円せしめて、散髪には行かない。それをこの4ヶ月間に7回ほどやってます。
斎藤:なるほど、わかりました。問題はですね、「処方は代わりましたか」という私の質問からもおわかりの通り、精神医学的病気の問題です。ですからそれに沿った処方がどうしても必要です。お薬でかなりの部分、コントロール可能だと思います。
でもそれだけじゃすまないのです。と言うのは、強迫性障害の場合、ご自分のやっている行動を自分でも「非合理的だな」と思いながらやらざるを得ない。それでとってもつらいんです。そのつらさに目を向けてそこに共感してあげる必要があるのです。どうしても私たちは強迫行動を止めようと考えて、ご本人に「何でそんな馬鹿なことをするの?」と言ってしまうでしょう。でも本人にとっては必死のことなんです。
そこで、これはどうすれば収まるかってことを、よく見て、改善点を探して、うまく改善したことを繰り返すという方法をとるわけです。今度の場合、金がおろされたことを知ってご両親が色めき立ったのを見て彼が変わったのでしたら、同じくらい色めき立つことをご両親が繰り返せばいいのですが、しかしそんなこと繰り返されたらいくら何でもお父さん、お母さんくたびれちゃいますよね。
でも、だからといってわざと色めき立つのではやっぱり迫力が違いますから、彼にはうまく利かないと思う。となると、もう少し細かいところで、少しはよくなるのはどういう時かということを探していかなくちゃいけない。それができるようになるには、この強迫症状の意味は何かというところに一度入らないと、どこにポイントを置いていいかわからないでしょう。
彼は、あらゆる新聞や雑誌を買い込むことでなにを考えているんだろうか?
──封を切らないんです。読まないでおいておくだけが目的なんです。
斎藤:そうそう。「おまじない」なんですよね。強迫症状というのはおまじないです。新聞や雑誌、新品を買ってくるというのは、意味は何だろう。新聞とは何をするものだろうか。ニュースを伝えること、世間の情勢を伝えることですよね、どうもその辺に意味がありそうですね。本人はというと、生活は社会とほとんど接触していない、友人もいない、人々との接触とか社会性ということと、新聞のためこみとは関係ありそうですね。サラリーマンやってるのだったら、朝出がけに新聞持っていったり、キオスクで買ったりするんだが、彼の場合はそれに見合う行動がとれないですから、情報ということの飢え、自分のなかに「世間と没交渉になっておいていかれる」という恐怖や飢えがあって、新聞や雑誌をおいておくとそこらへんがすこし安全みたいに感じる。そういうおまじないだと思うと、よくわかるんです。
──そのきっかけは私、よく覚えているんです。
斎藤:あれ、そうですか。それを先にいってくださいよ。
──息子は16歳ころから昼夜逆転の生活に入りましたが、その間何をしているかというと、ビデオを3台くらいセットするんです。その間自分はテレビを見る。ビデオが同時に3台くらい回っている。よその部屋の兄弟と夫婦の寝室のビデオを我がもの顔にセットするんです。とにかく24時間ビデオがフルに回っている。こうなるとビデオテープが大変なんです。そのテープは一回きりしか使わないのです。ビデオテープで部屋の中いっぱいになりました。録画だけして再生はしないのです。これを捨てるのは大変で、これを長いこと何年も続けていました。そこで今年のはじめに私が、「もうそろそろいい大人なんだから、もっと社会に興味もって、どうせ買うんだったらビデオなんかより新聞の方がましだろう」と(会場笑)という話をしたんです。そうしたら、新聞とビデオがだぶっちゃって、両方ともため込むようになっちゃったのですが。
斎藤:なるほど。時間を止めたいんですね。みなさんはこんな経験ありませんか。たとえばNHK の語学講座なんかを忙しいから後できこうと思ってテープに録音しておくんです。だけどそんなの聞きやしない。テープだけどんどんたまっていく。みなさんもあるでしょう。これは何をやってるかというと、時間を止めてるんですね。時間はたってしまうんですが、それを止めてとっておくというのがビデオやDVDですね。息子さんの行動もたぶんそこから始まってると思うんです。
新規講座・ワークショップ
| 講座名 | 日程 | 時間 | 料金 | 対象 | 会場 |
| うつに効く ストレッチから呼吸法まで | 1/31、2/7 | 15:00〜17:00 | 3,000円 | 一般 | 東京港区 |
| アサーティブ・トレーニング | 3/3〜6回金 | 18:00〜20:00 | 18,000円 | 一般 | 東京麻布 |
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2006年01月23日
時の流れを止めたい息子(3/3)
(続き)
彼は今、24、25、26とつみかさなる時の流れが怖くて仕方がないんですね。新聞やビデオをとっておくことは、時が流れることの恐怖をおまじないで消すという効果があると思うんです。それと社会性の問題ですね。彼にしてみればお父さんが言ってるんだから間違いないと思ってやってるのかもしれません。でもそのために大金を投じてちっとも惜しくないような心境になってる点では、彼は狂ってます。しかし、彼の中のそういった焦りを減らす方法は、ないわけじゃないと思うんです。ちょっと大変かもしれないけれど。
この彼が一貫してかわいそうなのは、自分が行くべきところが決められていて、それを強制されているのだけど、強制されても「やれない」という状態におかれてきたことです。柱にしがみついて、指を一本いっぽんはがされるようにして学校へ行くことを強制されたのに、とうとう登校できなかった。「本当は行かなくちゃいけなかったんだ」ということをずっとやってきた。親はひっぱたくのはすぐにやめたけれど、「学校にいってほしいなあ」という気持ちでいたでしょう。本人の「自分は登校できないなあ」と思う気持ちはずっと続いてるんです。彼の行動はすべて、そこから始まっている。
だから、そこに始まるんだからそれをやめちゃえばいい。しかし大変です。つまり彼がやっていることを彼が無駄だ、必要がない、こんなことしなくてもいいと思うまでやらせる方向なんです。
===
すると、今お父さんの目がおびえてるけれど(会場笑い)部屋が新聞で埋まるという事態になりますね。そうなるとほかの家族がその家に住めなくなる。実際そういうふうになったご家族を私は何軒か知っていますが、結局、回復のきっかけになったのは、集めた荷物に追いやられて親がとうとう台所で寝て暮らす状況になったことです。
その台所も半分くらいゴミで埋まった段階で、あるお父さんが私のところでこういいました。「私はもうすぐ定年だ。退職金で私は鉈を買う。それであいつの頭をかち割って警察に出頭する。それで私の問題は解決する」と。それはちょうど、浦和の高校教師が自分の長男を殺した事件の裁判で、加害者に懲役3年執行猶予1年が求刑されたときのことでした。その後浦和の事件は「執行猶予5年」で刑が確定したのですが、そのときのミーティングでそのお父さんはまた、「5年なら軽い。5年ですむならおれは鉈で頭をかち割る」といったんです。
結局、そのうちは息子さんが集めたゴミで住めなくなりまして、その問題が解決したのはそれ以後なんです。いやいや、不安がらないでください。そうなさいといってるんじゃないですよ。その間、私が一貫して言ったのは「『時の流れと戦うな』ということをわからせるためには、徹底的にやらせるほかない」ということです。というのは、彼のやってることにはいつも止めてくれる人がいるから、彼はいつまでもやるわけです。誰にも止められず好きなように好きなだけ集めていますと、そのうちカラまわりしてくるんです。やってもしょうがないという気がしてきて、そのときに夢から覚めたような状態になる。ただ、これは、家族は何処に住むのだということにかかわってくるものですから、なかなかおすすめするのが難しい。これはヒントですので、これをおたくでできる範囲でやってみることでしょう。
──お金が持ちません。弟の部屋に入ってお金を盗むのも日常茶飯事なんです。
斎藤:お金が綱引きの綱になってますね、お金じゃなくて、親にとって大事な別のものを綱にする。学校があったときは「学校に行く・行かない」というのが綱の役割をしていたと思うんです。それに代わるようなものが必要になってきて、今はお金が綱引きの綱になっている。お金に代わるものはないでしょうか?
──不思議なんですが、みなさんのお話にあるような「死にたい」ということは、うちの息子は一度も言ったことはないんです。それからこういう話を息子にしますと、息子は必ず、「もう二度と、弟やお父さんお母さんから盗らない。来週から必ず働く」というんです。特に食事の時、母親と二人になると必ず「昨日はすまなかった、俺、来週から働くから」という前向きな姿勢を常に示すわけです。実際はできないんです。
斎藤:学校の時も同じだったでしょう。「来週から」とか「新学期から」ということを繰り返してきたでしょう。時間を止めてるのが彼の問題なんです。
どうでしょうか。綱引きの条件を一週間くらい考えてみて、考えつかなかった場合、このままお金をとられて部屋を新聞で埋めさせるのは我慢できない、ということになったら、これはご家族の中から、彼にどいてもらうほかありませんね。入院ですよ。これは薬である程度コントロールできますので、どういう薬の組み合わせでコントロールできるかということを、見てもらうための入院です。
入院も積極的な意味を持つことがあって、彼にとっては家の中でやっていたゲームから降りることになる。病院の中ではたぶん、金の代わりにたばこかもしれません。精神病院はたばこの本数が制限されますので、貴重品ですので。たばこのコレクターになるかもしれません。時間を止めた中で生活するっていう意味ではふつうの生活よりずっと精神病院での方が楽だと思います。彼は決して精神病者ではないのだが、彼にとって楽だということを考え、またご家族の許容度ということを考えれば、それが一番良い解決策かもしれません。今までそういう話はなかったのですか?
──1回、強制入院させました。
斎藤:どうして出しちゃったの?
──当直の先生が「分裂病だから」と睡眠薬打って入院させてくれたのですが、あとから院長先生が「暴れているから引き取ってくれ」といって来まして。
斎藤:暴れますよ。そりゃ。暴れたあとに静かになるんですから。そうですか。「この人はこういう人でこういう環境が必要だ」と説明して、入院させてくれるところを探すことが必要ですね。といっていてもしょうがないので探してあげましょう。ケースワーカーの方にたのんで「強い強迫症状をお持ちの方を引き取ってくれる病院」ということで探すわけです。この人の場合閉鎖病棟が必要ですね。本人が外にでられないということじゃなくて、外から刺激が来ないということが必要でしょう。閉鎖のベッドの方がいいです。そこでかなり長期の入院というふうに考えて、時間を止めちゃいましょう。
──数年になりますか。
斎藤:もしかしたら一生です。そのくらいに考えた方が彼は安定を感じるでしょう。でも元来は健康な方ですから、そのうち「開放病棟で作業療法をやってみたら」みたいな話がでてきて、そこで彼は本来の彼が持っている力に気づきます。入院は一見まったく社会性とは逆の方向に進むようでいて、これが一番いい。一見回り道のようですが。いろいろな家族を見ていますと、むしろ、暴れ回る息子よりも、静かにだんだん家族を追いつめるタイプの息子といる方が、一家心中みたいなこと起こりやすいんです。その意味であなたが大変だというのはよくわかりますし、お手伝いできるところはさせていただいた方がいいと思います。
ただ、精神病院が一番歓迎するのは統合失調症の患者です。ぴたっと治療がはまるし3ヶ月くらいでよくなるし、医者は人を助けたという充実感をもらいたくて生きてるわけですから。強迫神経症の人は歓迎されません。病院に受け入れてもらえるように説得する方がたいへんだな。
──デイケアなんかも1回しか行かないんです。自分はまともで、あそこにいる彼らはまともじゃないんだという認識なんです。
斎藤:彼には枠が大事ですね。通ってらっしゃるクリニックからも情報をいただくなりして対処方法を考えさせてください。
斎藤学の講座・ワークショップ
| 講座名 | 日程 | 時間 | 料金 | 対象 | 会場 |
| 斎藤学ワークショップ | 2/18、19 | 14:00〜20:00 10:00〜18:00 | 31,500円 | 一般 | 東京港区 |
| 斎藤学オープンカウンセリング | 火 | 18:30〜20:30 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 親のための家族相談 | 火 | 18:30〜20:30 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 斎藤学による木曜ミーティング | 木 | 12:00〜 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 危機介入の技法 | 土 | 18:00〜20:00 | 5,250円、7,350円 | 専門 | 東京麻布 |
※開催日については必ず各講座の詳細ページでご確認下さい
新規講座・ワークショップ
| 講座名 | 日程 | 時間 | 料金 | 対象 | 会場 |
| うつに効く ストレッチから呼吸法まで | 1/31、2/7 | 15:00〜17:00 | 3,000円 | 一般 | 東京港区 |
| アサーティブ・トレーニング | 3/3〜6回金 | 18:00〜20:00 | 18,000円 | 一般 | 東京麻布 |
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2006年01月25日
だめ息子をどうすればいい?(1/2)
相談者からの質問
もうすぐ30になる息子のことです。
息子は怠け者のくせに完璧主義者です。私も夫もわりとまじめでよく働く方なんですが、息子は1日中家にいてごろごろしてるくせに、一番病気をするし、しゅっちゅうあっちが痛いこっちが痛い、疲れた疲れたっていいます。「疲れるのはこっちだ」といいたくなるんですけど。ちょっとアルバイトをしようということになると、腰が痛いとか何とか言い始めるんです。
先生は「親が死んだら生活できなくなって自分で考えるだろう」と、おっしゃいましたが、まず一つ、お聞きしたいのは、お金のことです。私なんかが見ていると、結局息子は何かあるたびにいろんな理由をつけてお金を無心したいというところがあるんじゃないかなと思うんです。
今回も去年の暮れから「学歴もないし手に職もないし、なんにもできないからもう死んじゃいたい」と言い出しました。私も「そうよね、それじゃあ死にたいわよね」と思ってしまいます。でも死にゃしません。かわりにイライラし始めて暴力沙汰を起こしたんです。父親を階段から突き飛ばしまして。
その、「死にたい」と言ったときに、「何かやりたいことはないの?」と水を向けてみました。音楽とか絵が小さいときから好きだったので、「音楽とか絵とかやってみたら」といったら、今度は「音楽やるから楽器を買ってほしい」と言い出しました。私は「もうそろそろ30になるんだからしっかり稼いでもらいたい、経済的に自立してもらいたい」というのがずっと昔からの願いで、「若いんだから仕事なんて何でもできるじゃない、肉体勝負でやればいいじゃない」という気持ちが強いんです。だからお金がないわけじゃないんですけど、何かとかこつけてはお金を出させたがる息子の態度が、私には許せないんです。
===
そうはいっても、出してほしいというものですから、お金について出し方を話し合っているところです。もうすぐお誕生日がくるものですから、その前祝いに少し出してあげて、あとは月賦で「あんたも月々のお小遣いから少しずつだしなさい」という形でやろうかなと思ったりしています。
結局、暴力が出るのは、「いろいろやりたいこともやれない」とむしゃくしゃしたり、お金を無心した時親がどうにかして出さないですむ方法を考えたりするときに出るような気がします。
もう一つは、息子は「僕は結局、外でも学歴がないから差別されるし、家の中でもひとりぼっちだ」といいました。私と娘が非常に仲良くて、いろんなことを一緒にやりますし、娘は仕事をしているのでお金もありますから、旅行も気軽に行けるし、私も働いてますから好きに使います。働いてるんだからお金使うのはいいと思うんです。でも息子は働いていないんだからしょうがないじゃない、って私は思うんです。悔しかったらちゃんと働けばいいのにって。ご飯は食べさせてあげてるんだし、住むところもあるんだから、「自分のお小遣いくらいちゃんと稼ぎなよ」と思うんですよ。
結局、「親が生きていて稼げる間は面倒見てあげられるけど、あんた、それで30すぎてどうするの?」っていう気が、私にはありますよね。「そのときになって梯子はずされちゃったら、のたれ死にだよ」っていう気がするんですけどねえ。そこのところどうなんでしょう。
斎藤学からの回答
斎藤:その息子さんはたいへん親孝行なんですよね。
──どういうことですか。
斎藤:息子が元気なときは親はくたばっている。それが世の道理。世代交代。
──よくわかりませんが。
斎藤:逆にあなたが元気なときは息子はくたばってなきゃいけない。上の者が元気すぎるときには下の者は元気になれない。今すぐ息子を元気にしたいなら、あなたは惚けるか寝込むかしなければなりません。明朝にでも息子さんに「とてもじゃないけど起きられない」と言ってごらんになったら? でもこれはできないでしょう。
──仕事がありますからね。
斎藤:仕事があなたを操るなら、あなたは操り人形じゃないですか。仕事を第一にしていると考えが先に進みませんよ。
憂ウツになるかめまいがするか、あるいは惚けてしまったと考えてみてください。そうすると、家族内の人間関係が大幅に変わりますよね。
お宅ではかつてこの息子さんによる暴力があったのでしたね。そのころなら、本当に寝込んでください、あるいは逃げてくださいと言ったかも知れません。今の段階では暴力問題がだいぶおさまっているようだから、そこまでしなくてもいいでしょう。しかし、頭の中でシミュレーションすることならいくらでもできる。「あたしが惚けたら、居なくなったら、つくづく息子と同居するのがいやで息子を置いて出て行ったらどうなるか」ということを考えるんです。(続く…)
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2006年01月26日
だめ息子をどうすればいい?(2/2)
(続き)
家の中のパワーの配分が、息子の暴力や娘の過食症の原因になっていることはよく見られます。
あなたのお話を聞いていると、歯切れがいいし、論理が整っている。今、私の手元にある相談の主旨についてのメモも明確です。これは社会的にやっていける人の文章です。つまりお母さまには社会的な能力がおありになる。すると、息子はちょっとつらいところだ。これからがんばってみたって、お母さまの助手までいけるかどうか。そのことを彼は訴えているわけですよ。「学歴もないし」という言葉に託して。で、お母さんは「学歴が気になるなら中退しなきゃいいじゃないか、男らしくない」と思ってる。そんなお母さんの評価も彼はわかってるんです。彼はこの家で生きにくいです。
それなのになおかつ、この家にとどまっているのは、やっぱり、お母さんを元気にするためとしか言いようがない。しかしこの家の中で彼は孤独で、居場所がない。お母さんと長女は同じ部屋に寝ている。そうですよね?
──はい。
斎藤:夫は?
──別です。最初は夫婦一緒で、子どもたちはバラバラで寝てました。私と夫が仲悪くなって一人で寝るようになったら、娘がやってきた! というだけです。
斎藤:おとうさんも孤立してるということですか?
──そう。でも、息子問題が起こると、3人で共同戦線を張るっていうところですね。
===
斎藤:じゃあ、息子さんが一暴れすると、夫婦仲が良くなるわけですね?
──まあ、そういう意味では息子がカスガイかなあとはおもうけれど。でもそれも困るんですよ。
斎藤:彼としてはどういう役割とっていいかわからない。なんだか妹とお母さん一緒に寝てて、父さん一人で寝てる。このままだとお父さんもお母さんも不幸そうだ。それで一暴れしようかとお父さんを蹴ったら、階段の上でカウンターパンチが決まって救急車ものになってしまった。危ないですよね。お父さんとお母さんの仲がいいと、こういうことはないでしょうね。
──うーん。じゃあ、どちらの方なんですか? いまおっしゃったのは夫婦仲のかすがいの役割を彼が担っていると。その前に、彼がああなのは私が元気すぎるからだとおっしゃったでしょ?
斎藤:同じことだと思いますよ。
──そうですか?
斎藤:あなたが一人で生きられる有能な女性を元気に演じようとすればするほど、夫との間は離れていきます。で、そういう親たち2人に子どもが介入しようとすれば、彼は今のようなダメ息子をやって家族の崩壊を防ぐしかないですね。彼がダメ息子でいる間は、夫婦別れどころではありませんからね。本当は親たちの作った家族なんて崩れてもいいんですが、彼はそう考えるには優しすぎるのでしょうね。
あなたが寝込む。それで父さんが母さんの世話をする。すると夫婦の仲が良くなる。そうなると、息子さんは役割がなくなるから家を離れる。あるいは倒れてしまった母親に代わって働きに出る。お父さんに代わって彼があなたの看護にまわるということだって考えられますよね。
──うーん。それかなあとも思うこともあるんですけどねえ。
斎藤:そうすると次ぎに娘さんが問題になってきますね。
──今、私とくっついていると言うことがですか。でも、できるだけ離すようにはしてるんですよ。
斎藤:でもね、あなたの中に「娘は大丈夫で息子はだめ」と思ってるところが。その基準はただ一つ、働いているか、いないかなんです。世間の人の見方もそうですね。仕事に就いているか、ついてないかだけで、2種類に人間を分けている。「だめ者」と「まとも者」に分ける。お父さんとお母さんのことが気になってしょうがない気が弱い子どもたちは「だめ者」をやることによって、家族全体のバランスをとろうとする。そのことを自分で気づいてるようだったら、そんなことやらないんですけどね、気づかないでやってるんです。娘さんは両親二人の関係を考えるというより、お母さんをしっかり保護するという役割についているんでしょう。
──私としては、娘がいい子をしすぎてるなと思って、ちょっと怖いんですよね。
斎藤:うーん。このままだとこの人の問題の方が大きくなるかもしれませんね。
──という可能性もあるなと思って。
斎藤:母娘カプセルがいつまでも続くということがあるかも。これから30年も経つと60近くなった娘が90近くなったお母さん担いで、親子で外来へくる。「このごろ母さん惚けちゃって」と言いながら。娘は結婚もしないで一人で惚けたお母さんを抱えてる。その前に父さんを見送ったりして。こうならないように、この娘さんも自由に羽ばたかせたいですね。
──要するに、家の中の人間関係がうまくいくことによって、本人が独立していくだろうということですね?
斎藤:いや、確かにそういう面もあるんですが、私が言いたいのは、独立だ自立だ仕事だ、ということだけで息子さんを評価しないでくださいということです。
−−いま現在の私たちの関心事というのは、金を出そうか出すまいかとか、それから、暴力のことです。この間父親を、階段から落とした件では本人は非常に悪かったと思ってるわけで、「今度ぼくがこんなことしたら警察よんでもいいよ」と言ってるんですね。本当によんじゃうよといってるんだけど、いいのでしょうか。
斎藤:いいんじゃないですか。というより、家の中の問題はなるべく外の人にも知ってもらって得られる援助はもらったほうがいいですよ。
──お金の方はどうなんでしょう。私は「30になったらもうこれ以上は応援してあげられないよ」といってるんですよね。もうすぐ30になるので。この調子だとこのままでズルズル行くような気がするんですよ。
斎藤:出したくなければ、今日から出さなければいいじゃないですか。「30になったら」なんて「たら」話は無駄ですよ。まぁ、今まで出していた金を30になったら出さないなんて言っても無理でしょうね。ズルズル行くでしょう。行ってもいいじゃないですか。それが出来るということは、あなたが元気で働いているということなんだから。さっき申し上げたように、息子が元気になるということが、あなたが倒れるということなら、「息子はこのままでもいいや」ということになりませんか?
元気で働いて、ご主人との関係が幾分改善して、娘さんが自分の人生を歩み出すというのが当面の課題でしょうね。息子さんがイライラするのは、そのままの自分を受け入れてくれるところがないからですよ。居場所がないのは、自分で自分を定義できないからです。彼がもう少し柔軟になって自分を「病人」と思えるようになると楽になれるんですがね。だって「病人」の居場所は病院でしょ。このまま不安とイライラの中で暮すか、暫くの間、病人をやってイライラにケリをつけるかということですよね。
斎藤学の講座・ワークショップ
| 講座名 | 日程 | 時間 | 料金 | 対象 | 会場 |
| 斎藤学ワークショップ | 2/18、19 | 14:00〜20:00 10:00〜18:00 | 31,500円 | 一般 | 東京港区 |
| 斎藤学オープンカウンセリング | 火 | 18:30〜20:30 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 親のための家族相談 | 火 | 18:30〜20:30 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 斎藤学による木曜ミーティング | 木 | 12:00〜 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 危機介入の技法 | 土 | 18:00〜20:00 | 5,250円、7,350円 | 専門 | 東京麻布 |
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2006年01月30日
横暴な両親に怒りの衝動が止まらない(1/3)
相談者からの質問

私は5歳の娘を抱えて、実家から20分ほどのアパートに、娘と2人で暮らしています。
今日お話ししたいのは、自分の問題です。私はうつや摂食障害の症状もかかえているのですが、今日ご相談したいのは、激しい怒りがわいてきて、路上で器物を破損したい、ものに当たりたいという衝動が止まらなくなることです。この怒りは、私なりに考えたところ、両親にその源があるように思います。
私は摂食障害に苦しみ、さいとうクリニックにかかっておりまして、先頃、理解のある内科の先生のもとに、3カ月ほど入院しておりました。その際、両親にも私が摂食障害に悩んでいることをうち明けたのですが、肝心のことは言えませんでした。肝心のことというのは、私が子どものころから、両親からの虐待に苦しんできたということです。
===
入院中、両親はさいとうクリニックの主治医の先生のもとに押し掛けて「うちの娘はいったいどうなっているんだ」と聞いたそうです。先生は両親に「お父さんお母さんも是非、オープンカウンセリングに参加してください」とすすめてくださったのですが、両親は自分たちのしたことに全く自覚がないものですから「なんでわしらがいかなくちゃならんのだ」といって動きませんでした。それどころか、退院した私のところに母が押し掛けてきて「さいとうクリニックの先生の話は全然分からなかった。おまえはいったいどういうつもりなのだ」といって来ました。
そこで私はとうとう、両親の虐待に子どもの頃からいかに苦しんできたかうち明けました。そうしましたら、母は話を聞いて考えてくれるどころか激怒してしまいました。「情けない、情けない」と繰り返して寝込んでしまい、寝ていないときは宗教にはまって神様におすがりしているそうで全く家事をしなくなったとかで、今度は父が怒って「おまえがかわいそうな母さんを傷つけたからだ」と言ってアパートに乗り込んできました。父は数年前に怪我をして杖をついて歩いているのですが、その杖で私を殴りに来ました。
私はそんな両親を見て、本当に憤りが止まらないのですが、未だに怖くて何も言えないのです。
母は毎日のように電話をかけてきて、「おまえのせいで苦しんでいる」「おまえに傷つけられた」「世間体が悪い、どうしておまえのせいでこんな恥ずかしい思いをしなくてはいけないのか」とののしるのですが、あんまりだと思いながらも私は、なぜか「ごめんね」なんて謝らされているのです。
私自身、幼い娘を抱えているものですから、親の立場や気持ちが分かってしまって、きついことを両親に一方的に言うことができないのです。電話を切ってから、消耗しきって吐き気に襲われます。
結局怒りが胸にたまって、これだけ私を苦しめて自覚が全くないばかりか、さらに攻撃してくる両親を思うと、ときどき怒りがどっとわいてきて、おさまらなくなります。道を歩いていても何かを壊したくなったり。その怒りが摂食障害になって出ているのだと思うのですが、これはぶつけどころがありません。私は、4、5歳ぐらいのころ夜驚症という症状を発症していて、夜になると騒ぐ、泣き出す。それが収まるまでの間の記憶が飛んでいるというものなのですが、これに似たことがいまでもあります。解離症状、トランス症状のようになります。
子どもに対して虐待、手を挙げるということは、私はやっていないんですが、両親に責められて反感を感じるのに怖くて何も言い返せず、ぶたれてもただ泣くだけの自分にしじゅういらいらしていますし、夜中にうなされたり、電話を切った後に吐きまくる母親の姿は、子どもにもいい影響を与えないだろうと思います。最近は表せない怒りが過食になって現れています。本当にダメな人間で、ダメな母親だと思うとつらくてたまりません。
生活のこともありますし、何かしないとおかしくなってしまうので、また仕事に復帰しようとも思ったのですが、私はワーカホリックで、今度は仕事漬けになって逃げようとするのでそれも違うかなと思っています。さいとうクリニックの保育所で働きたいと申し込んだのですが、「ご自分の症状が良くなってからでないと無理です」と断られました。
今日ここに来たのも、両親に「オープンカウンセリング」を進めたら、「何を言うか、おまえはそこへ行ったことがあるのか」といわれたので、確かにそれはそうだと思って、貧血とだるいのとを我慢して、やって参りました。(続く…)
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2006年01月31日
横暴な両親に怒りの衝動が止まらない(2/3)
(続き)
斎藤学からの回答
斎藤 5歳のお子さんについてはあなたが養育なさってるの?
──はい。日中は両親のところにいて保育園に通わせてもらって、週末は私のところ、という感じです。拒食症の私はご飯を作ってやれませんので、そんな中で子育てすると、またいらいらするだろうからと主治医の先生が決めて下さいました。
斎藤 「生んだんだから自分が責任もって母をやろう」なんて考えると、かえって子どもが迷惑することがありますよ。生んだから母だ、なんて考えはなくていいです。いま、あなたが全面的に母をやるのは難しいんじゃないかな。
===
子どもを叩いてないとすれば、内攻してあなた自身に自傷行為してしまうか、もっと歪曲して精神障害になるかしてしまうかもしれませんものね。なんとか子どもに迷惑をかけないようにしようとしているだけでも、あなた偉いですよ。児童虐待になってもおかしくない人なのに、良く工夫して、社会資源をうまく使っていらっしゃる。親も社会資源のひとつだから。でもそのことがあなたの悩みを増やしているとなると、御両親への負担なしに子どもを預けられるのはどこかを考える必要がありますね。地域の児童福祉士やクリニックのソシアルワーカーと相談して、あなたの親とは別の社会資源を探してみましょう。そうしたことを進めていると、御両親のあなたへの対応も変わってくるかも知れない。娘と良く話し合わないと、孫が手元から離れていってしまうということで。
私が松沢病院で、東京都ではじめてのアルコール専門外来やり始めたとき、最初に来た患者さんは画家でした。すごい大酒のみでしたが、この人の母さんの記憶っていうと、自傷をはかったお母さんが自分の乳房を切り落とした場面の、その真っ赤な血だらけの胸のなんです。これ、あなたの娘さんと同じ4,5歳の時の記憶だそうですよ。あったかい白い乳房というのは彼の記憶には無いんです。血だらけの乳房しかない。
この人は凄惨で自己破壊的なアル中になりました。子どもが一番望む母親のイメージとは、安全の感覚ですよね。安全の感覚の基礎になるものは、母の笑い顔だな。無理に笑わなくてもいいんだけど、母が発する安全感、丈夫さみたいなものが子どもには必要です。ですから泣いてわめかなきゃいけない状態のお母さんだったら、子供と一緒にいない方がいいと思うんです。で、自分の機嫌がいいときに一緒にいられるような状況を工夫してお作りになった方がいいと思う。
あなたのお子さんが必要としているのは、安心して子どもでいられるような環境なんじゃないでしょうか。筋肉の力を含めた「力の感覚」を必要とする時期というのが、人間にはありましてね。学童期になると規律を問われるようになるので、その前、3歳から6歳くらいの時期の子どもは、猛々しくても罰せられないほうがいい。そういう時期を過ごせた人の方が思春期以降に暴力を振るうことが少ないと思います。そういう経験をもてないで幼児期なしに過ごした人の方が、大人になってから子ども返りしやすい。
だけど、あなたが今悩んでらっしゃるのは、そのことじゃんいですね。「親が自分が思うような親でない」ということに対する怒りですね。これはやはり基本的に幼児のものです。つまりあなたは、親のことをあきらめてない。親はもっと強い、いい親になれるはずだと、まだ期待を持っていらっしゃる。それにしても杖をついてやってきてその杖で殴ってくるってのはすごいお父さんだね。(続く…)
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2006年02月01日
横暴な両親に怒りの衝動が止まらない(3/3)
(続き)
── 話にならないんですね。人の話を聞かない人なもんですから。主治医の先生に言ったら、「お父さんもお母さんも凶悪だね」といってくださいました。
斎藤 たしかに凶悪だ。でも、そうだとすれば、あなたはそういうお父さんを取り込まないようにしなければ。あなたが路上で爆発しそうになってるのは、凶暴なお父さんが取り込まれているからかも知れない。「虐待をされてたな」という記憶のある人は自分の中に取り込んだ親に気づく必要がある。そうした親を表現しないですむように工夫する。親にされたことを自分が加害者になって再演しないためには、まず親から離れること。でもあなたは、子供さんのせいもあって実家のそばに住んでますね。
──私も避けたかったんですけれど、「そばにこないと世間体がわるい」とどうしてもと両親がいうんで、私も両親にたてつけないというか、怖くて、私が世間体を悪くして申し訳ないっていう気持ちが大きくて、言いなりになってしまいました。
===
斎藤 いろいろ事情がおありでしょうが、もしあなたが子どもと2人の生活を静かに楽しめるようになりたいんだったら、そのような状況を作らなくっちゃいけないんじゃないですか。あなたという馬の鼻面にニンジンがぶら下かっている。父や母がそこに見えてるのに、それに誘惑されずに生きるなんてことは出来ませんよね。どうしても、優しいお父さんになってもらいたい、偽善的でないお母さんになってもらいたいと希望してしまう。私が皆さんにお勧めする「母の断念」からほど遠い環境で暮してますよね。
やっぱり親のことはあきらめるほかないと思うんですよ。あなたは一所懸命お父さんをカウンセリングに導こうとして、そんなに身体が苦しいのにここまでいらした。そんな風に無理して御両親をここに導いても、お父さんにもお母さんにも、ここで何が話されているのかわからないでしょう。自分たちが必要を感じてからいらっしゃった方がいいです。
多分、御両親がここへいらっしゃるのは、あなたが親たちからの援助と支配を捨てる決意を固めたときですね。親を捨てても何とかなると思うとき、親たちの側にも変化が起きます。
あなたが保育所の助手をしたいといったときに私がお断りしたのは、まだ、あなたが「娘」の状態を保ってるからなんで、保育室には「親」の状態の人に来てもらいたいのです。「もう少し良くなったらね」という意味は、親をきちっと断念することなんです。
親を捨ててみると、寂しい。こんな状態になったのも親のせいという怒りもわいてきます。しかし親と離れてからようやく、精神療法的な会話が始まると思うんですよ。親をあきらめた寂しさ、寄る辺なさ、怒り、そういったものをちゃんと感じて言葉にするということが精神療法なんですよ。親を説得したり、親を連れてこようとしたりしているときは、それに夢中で精神療法が効果を持たないんです。だって、そういう問題の捉え方をしたら「悪いのはみんな親」になってしまいますから。そういうときには、言葉が空回りしてしまうのです。
あなたは表現力もあるし、エネルギーは大変なものだ。社員に採用すればそこの社長さんは喜ぶと思うけれど、そうすると結局あなたは、仕事と突然の病気の繰り返しで一生を終えると思います。「いい社員が来た」って喜ばせて、1年後に病気になって入院、とか。そんな一生になってしまうでしょう。「突然退職型」社員ですね。自然が必要としていること、腹減ったら食う、たまったら排泄する、眠りたくなったら寝るというリズムのなかで人間は生きるものなのに、あなたはそういう自然なリズムを無視している。なんだかそれ以外の必要に駆られて、意地で生きてらっしゃる気がします。親のことが頭にあってなかなかそうも行かないんだろうけど、親をどうにかしようという考えかたから速く離れて、私と精神療法的な会話が出来る条件を作りましょう。
親がここへ来たってこなくたっていいじゃないですか。いちおう「私は行ってみたよ」とだけは言って、後は御両親の意志にお任せになることです。私の関心が向かうのはあなたとあなたのお子さんだけ。あなたの御両親ではありません。
斎藤学の講座・ワークショップ
| 講座名 | 日程 | 時間 | 料金 | 対象 | 会場 |
| 斎藤学ワークショップ | 2/18、19 | 14:00〜20:00 10:00〜18:00 | 31,500円 | 一般 | 東京港区 |
| 斎藤学オープンカウンセリング | 火 | 18:30〜20:30 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 親のための家族相談 | 火 | 18:30〜20:30 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 斎藤学による木曜ミーティング | 木 | 12:00〜 | 3,000円、5,000円 | 一般 | 東京麻布 |
| 危機介入の技法 | 土 | 18:00〜20:00 | 5,250円、7,350円 | 専門 | 東京麻布 |
※開催日については必ず各講座の詳細ページでご確認下さい
新規講座・ワークショップ
| 講座名 | 日程 | 時間 | 料金 | 対象 | 会場 |
| うつに効く ストレッチから呼吸法まで | 1/31、2/7 | 15:00〜17:00 | 3,000円 | 一般 | 東京港区 |
| アサーティブ・トレーニング | 3/3〜6回金 | 18:00〜20:00 | 18,000円 | 一般 | 東京麻布 |
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2006年02月02日
魅力的な女性ほど、子どもにはスフィンクス(1/2)
相談者からの質問
私はみなさんのように斎藤先生の本も読んでおりませんで、友人に一度こういうところで相談してみれば、と勧められて初めて参りました。
今日相談したいのは、娘と私との関係についてです。
娘は昨年大学を出ましたが、就職せずに半年間すぎ、この秋、家出同然に家を出てゆきました。何かの雑誌で働き口をみつけて、とある地方都市で水商売らしき仕事をしているようです。昨年の暮れまでは電話連絡もあったのですが、正月にも帰ってきませんでしたし、住所は教えてくれません。私としては、もう20過ぎている娘のことですから、何か自分にふさわしい生き方を自分で見つけるまでの過程なのだろうな、とおもっているのですが、もしかすると、娘は何か乗り越えたいのに手助けがないために乗り越えられない問題を抱えて苦しんでいるのかも知れず、その場合、私は何か手助けをしてあげた方がいいのか、またそれはどういうことか、それとも何もしないで見ていればいいのか、そこのあたりが判断が付かないので、ご相談にあがりました。
===
私は10数年前、娘が中学生の頃に夫と離婚いたしました。それまで数年間、いろいろな価値観の違いやすれ違いなどで口も聞かない険悪な夫婦だったのですが、お互いに娘を手放したくないと譲らずになかなか離婚が決まらなかったのです。そうしているうちに私は別の男性とつきあい始め、それが理由で一人で家を出ました。そして1年間一人で働き、家も借りて支度を整えてから娘を引き取りました。夫とは車で10分くらいのところに住んで、娘は行き来を自由にしてもらいました。
小さい頃から絵の好きな娘だったので、将来美大に行きたいと言い出しても困らないように、私は必死でお金をためました。フリーの雑誌編集者をしていたのですが、朝早く起きて、ご飯を食べさせ、娘の昼と夜のお弁当を作って、いくつもの者の仕事を掛け持ちして夜遅くまで働く毎日でした。
その間、その私の家に、私がつきあっていた男性が入ってくるようになっていまして、そのことを娘が非常にいやがりました。私も「困る」と相手に伝えたのですが、相手の男性が他の女性に心を移し始めていたこともあって、つなぎ止めたい気持ちがあったせいか、あまり強くは言えなかったのです。その一方で娘にもいい顔をしたがったのでひどく曖昧な態度をとりました。そのことを数年後、娘にひどく責められました。
そのときの男性との関係で、私はすっかり人間不信になって、自分をコントロールできなくなり、体調が悪く、2,3時間ねてまた仕事に行くという「寝たり起きたり」みたいな状態でした。今、そのとき娘がどんな気持ちでいたのかと考えると、たまらなくなります。
娘は美大進学を希望したのですが、私が無理してがんばっているのを知っていたので、専門の予備校にいきたいというときも、浪人させてほしいと言うときも、思いを手紙に書きつづって遠慮がちに申し出てきました。結局、希望の大学に進めたのですが、それが大学3年になってから「大学やめたい」といい出しました。どうも男性とつきあい始めたようで、そこに入りびたっているのか家にも帰ってこなくなりました。結局、親戚の説得で学校は続け、無事卒業できたのですが、彼女の学校での立場は相当つらいものだったようです。
私は、離婚について夫に対してはいろいろな気持ちがありますが、娘に対しては強い負い目を持っておりまして、いつも胸の中でとげが刺さる思いでおりました。
今娘がそういう職業選んでるということに対して、私の奥の方の気持ちをみれば、やっぱりいやだなというのがあると思います。娘が帰ってきたときには、そういう思いは顔に出さずにいようとおもってはいますが。友人は「経済的に親には負担はかけていないんだし自立してるんだからいいんじゃない?」というんですけれど、本当に私は納得できていなくて、もう少し別の道を選んでほしいという焦りもあります。
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2006年02月03日
魅力的な女性ほど、子どもにはスフィンクス(2/2)
(続き)
斎藤学からの回答
斎藤:さてと、あなたは何を期待なさっていますか?
──娘をほっといていいのかどうか。ほうっておく以外にないのが現実とわかってるんですが。
斎藤:そうでしょう。何があなたにとって必要なのかな。あなたの罪悪感を消すことですか?
──罪悪感をどうにかしたいとはあまり強く思っていないのです。
斎藤:どうして罪悪感を消したくないんでしょうか?
──消したくないと言うよりも、こういう風になる前は、子どもたちともうまくいっていたので、そういう状態に戻りたいというだけです。地方に住んでいてもいいんですが、私の言うことは娘は軽視しますのでそこのところがもう少し、風穴があいてほしいなと思います。
===
斎藤:なるほど。それは非常に妥当な、合理的な希望ですね。それは、娘は自分を頼りにしてほしいし、できる援助があるんだったらさせてほしいし、それからときどき私の前に顔を出して元気な顔を見せてほしい。そう思いますよね。それはいいと思いますね。
ではあなたは、娘さんとの間で以前持てていたような母と娘との関係を取り戻したいと思うわけですね。そのために努力してみたことはどんなことですか?
──電話したり、住所教えてくれないので郵便局留めで手紙を書いたりしました。それから、話をしたいと思うのですが、私の方で、ついつい深く探るような話になって、話し合いがダメになっちゃう。で、最後はなんとなく気まずい思いで分かれるという展開になってしまいます。
斎藤:彼女があなたに攻撃的になった時期がありますね。そのころあなたはどういうふうに振る舞って、彼女に応じましたか?
──そのときの私がこういう気持ちだった、ということは話したんですが、やっぱり私が娘に対して曖昧にしていたところがあって、それが娘には許せなかったのです。「もっと私に正直に言えばよかったじゃないか」といわれて、私も「そうだったね」とは言いましたが。
斎藤:それについてはあなた今どう思っていらっしゃるの?
──娘に十分に言い切っていないとは思います。でもそういうことを話すのを娘もいやがりますので、お互いにとことんまで突き詰めて言い切っていないと思っています。曖昧なままにしているなと思います。
斎藤:で、それは話し尽くせば娘さんに伝わると思いますか?
──今は無理だと思います。
斎藤:今だけじゃなくて、将来にわたって?
──うんと将来わかってもらいたいと思っているだけです。
斎藤:将来わかってくれればいいやと思っているわけね。
そうですか。私は、彼女が離れていくときに、あなたがするべきことがあったのかなと思って聞いたんです。娘さんが、あなたのことを「自分に不都合な人だった」と感じてそれを表現した時期がありましたよね、そのときにあなたが娘さんにどう対応したかを聞きたかったのです。娘さんが「あのときお母さんはこうだったじゃない?」といってきたときに、あなたは「だってこうだったんだよ」と説明したというわけですね。
結論を言うと、あなたの希望はよくわかるし、そうした希望を持つのはいいと思いますけれど、それはあなたがお考えになって胸にしまっておくことだね。それから、彼女があえて今水商売を選んでるにはそれなりのわけがあるともいます。
──それが聞きたいのです。
斎藤:それを聞いてどうしますか?
──娘がどう考えてるか知りたいです。
斎藤:彼女には理由があると思います。でもそれを私が説明してもしょうがない。強いて言えば、彼女の中には、世の中の安寧秩序の中で収まっている普通の夫婦関係や男女関係などの裏をみたい、正体を見たいという気持ちがあると思います。どうして私はこういう夫婦の娘をやっていたかということは、彼女が自分を説明することですよね。
人は、自分を説明したいという気持ちのなかでいろんな行動を起こすわけです。あなたは娘に「スフィンクスの謎」のようなものかけたんです。「人間というのは性の問題とか結婚とかでいろいろたいへんなんだよ、それはどういう問題なのかねえ」って、娘に問いかけた母ですよね。それは別にあなたが良いの悪いのという話じゃなくて、そのようなお母さんの娘をやれば、その疑問に回答しなくちゃいけなくなります。彼女は今、謎を解いて回答を出そうとしているわけです。
私たちは、今までの生活の中で、親たちを始めとする人々からいろいろな質問を投げかけられてきているんじゃなでしょうか。
どうして私は私のような生き方してきたんだろう。人っていったいなんだろうか。
スフィンクスの謎っていうのは、「4つ足で生まれて2本足になって最後は3つ足になるものなあに?」って聞かれたって言うんですよね。訊かれたのはオイディプスで、彼は「にんげん」と答えたら上半身が美女で、下半身ライオンのスフィンクスは谷底に身を投げたとか、石になっちゃったとか言うものです。たぶん、テーバイの町で、スフィンクスが人々に投げかけたのは「あなたはいったい何者ですか?」という質問だったのでしょう。
あなたは娘さんにとってのスフィンクスなんですよ。そこに居るだけで謎を発して居る存在なんです。「なぜあたし、この人の娘なの?」って。私が彼女だったら、やっぱり水商売という選択、いいと思うね。そこでいろんな男性たちや彼ら家族を見るという点で。それをしながら娘さんは、一生懸命あなたと自分との生活を考えてるんじゃない? そのなかであるいは、「お母さんのこと、私は許せるかな」と思ってるかもしれませんね。そのとき私たち親は何をすべきか。まあ、娘を信頼して任せる事でしょうね。

わたし今の話聞いてて、あなたはすごいなと思うのはね、夫のもとから出て、ちゃんと自分で貯金をためて子どもが来てもいいような場所を作るわけでしょ。巣作り能力というか、この生活力、すごいね。
お仕事のせいか自分なりの世界を持ってらっしゃる。そういう人はやはり、当然、自分とのパートナーとの関係についても発想が自由です。「力がある」ということは自分が生きたいように生きるという選択肢を持つということだから、選択肢を持てば人は悩むのが当然です。
むずかしいですね。みなさん。そうおもいません? 生活の質が高まって、高まるってのは選択肢が増えることでしょう。選択肢が狭いと一度選んだ男とずっと一緒にいなくちゃいけない。ところが選択肢が増えると、いろんな意味で迷う。迷うし、いろんな悲しみや涙や別離と出会うこともあるわけで、どっちを選ぶか難しい。昔の人は「欲望を捨てよ」と言った。慎ましく謙虚に芋食ってねてろと言った。そういうのがいいことだって言われてたんですけれど、私たちはそういう時代に戻るわけには行かなくなってて、女性たちもだんだん、あなたみたいに、自分の人生設計を作っていくようになった。そうなるとそれだけ、スフィンクスの謎を与えられたような娘さんもいっぱい増えるわけです。あなたはエッジカッティングな女性なんだ。時代の先端を行く。そのお母さんを持つと娘もたいへんなんだ。それに引きずられていろいろ考えなくちゃいけない。
あなたは気持ちがすごく豊かです。いろいろ深いものをお持ちの魅力的な人です。でも、そういう魅力的な母親の娘は大変です。でも親の喜びの中の1つには、自分とは全く違う生き方を選択した子どもを信頼して見守ることではないでしょうか。
私はみなさんにはよく言っているのですが、親が子供に責任を負える年齢は、せいぜい15歳だろうと思います。そのころまでは親は多少経済的にも心の面でも、こどもの安全なり成長なりに責任を負わなくちゃいけないと思いますが、そこを過ぎたらば、僕ら親にやれることはないと思います。経済面だけでしょうね。誇りを持った子供に育てれば育てるほど、お金さえ要らないと言いますから、それなら「ああそうかい」といって喜べばいいんです。あなたの娘さんもそうでしょう。しょうがないじゃない。もう遠くへ遠くへ行っちゃうんです。それくらいがいいんじゃないでしょうか。遠くにいるからよく見えたりもするかもしれない。
※この原稿は「斎藤学オープンカウンセリング」(火曜日18時30分〜20時30分、東京麻布、予約不要)での相談者と斎藤学のやりとりをもとに作成されました。
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