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2007年01月12日

クレプトマニアと罪悪感(ブログ版)その8(2/2)

L男の引きこもり

 L男の生育家族は彼が小学校に入るまで関西にいて、居住地の東京近県に根付いていたわけではない。今も血縁の多くは関西に住んでいる。

 父親は物理学関係の研究者で勤め人であり、内閉的な人柄もあって地域の人々との交流はむしろ避けていた。母親も家事に専念する人で地域の人々との交流に心がけるということはなかった。

 元来、東京で働く人々のための造成住宅地に家屋建設会社の規格住宅を購入して建てられた家で、町内会とか地域の祭りということからは縁遠い一家であった。大都市近郊にこうした家族が希ではないとはいえ、このことはやはりL男のような「引きこもり成人」の発生に関しては押さえておくべきだと思う。

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 L男は学者の長男であり、それを誇りとする母親は彼の学歴を重要視していた。
 父親を畏敬(その程度は病的と言えるほどのものである)する彼は、その圧力をもっともなこととして、その期待に添えない自分を責め続けた。その点で姉とも、弟とも違った立場にいることを過剰に意識して悩む少年であったようだ。

 関東に引っ越してからは近所に年齢のあった子どもたちがいなかったこともあって遊び相手は3歳年下の弟に限られた。こうして彼は社会化の遅れた、そのくせプライドだけは高いので超然とした風情を示す少年として地元の公立中学に進んだらしい。

 ここの2年生のとき、いわゆる番長少年たちからのいじめの標的にされ、脅えながら卒業までの日々を過ごしたが、彼はこの屈辱や恐怖を親たちには一切漏らしていない。その代わりのように弟への支配欲、競争心、嫉妬は亢進した。ちなみに、登校しないという選択は意識に上らなかったという。それを考えるには父親が怖すぎたし、母親の願望への配慮も強すぎた。

 こうした状況に置かれたL男に残された選択は、日々を「フリをして過ごす」ということであったようだ。学校が楽しいフリ、熱心に勉強しているフリ、厳しいながらに弟にやさしい兄のフリ。しかしその代償として彼は感情という現実と向き合うことを放棄した。

 そうした現実回避のツケを払わされることになったのは大学進学ないし就職という「家離れ期」の課題に直面した時である。
 彼はどちらも選べないまま、さしたる意志もなくズルズルと3年間の浪人をし、いくつもの専門学校に学費だけ払い、最後にはなにもせずに家の中の日当たりの悪い一室に閉じこもって昼は寝て暮らすという生活に入った。

 この「引きこもり」は7年にわたって続いた。その後、あるきっかけで精神科クリニックのデイケアにつながったが、その後の8年間も通院以外の社会的活動はしていない。唯一の例外が3年前まで2年弱にわたって続いた強迫的反復的な窃盗であった。対談にもあるように盗んだものを蓄えることのみを目的とするような蒐集狂(collectomania)に近い盗みであった。
 この間、二人の女性と親密な関係を持ったが、これも彼の方から働きかけたものではない。

※この原稿はアディクションと家族23巻3号(特集:クレプトマニア)からの抜粋です

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木附ブログ

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2007年01月12日 15:26:[←ブログメインに戻る]←IFFトップページへ][↑ページ上端へ