2006年05月の一覧

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2006年05月01日

買い物依存で満たされていたもの(1/3)

ブログ「新Q&A」

 新しい文体(スタイル)で皆さんの悩みとその解決への道をお伝えしてみます。スタイルはこれからも変化すると思います。なるべく私にとって楽で、だから継続しやすいというところを探ることになるでしょう。書かれていることは「モデルはあるが創作(フィクション)」です。以後[S]とあるのは、私、「さいとうさとる」のこと。SクリニックやSミーティングのSも同じ意味です。

===
■х年12月13日(オープンカウンセリングで)

クライアント
image060501.jpg
 今30代後半のシングルマザーで公務員です。6年前に子連れで離婚しました。
 離婚した相手は元同僚ですが、どうしようもないマザコンで、おまけにパチンコ依存のバカ男でした。15年も妻をやってたなんて今考えると私もバカでした。幸い大学を出てからずっと公務員として働いて来ましたので、離婚しても経済的には問題がありませんでした。

 ところがバカ夫との関係が切れて落ち着いてくると私は猛烈に買い物をするようになてしまつたのです。バックです。あるブランドの一定の型番のヤツ、数種類、毎年出るでしょ。それすぐ買うの。百万はふつう。数十万は安いほう。人が今年のヤツ持ってると許せないと思っちゃう。
 バカですよね。まるで駆り立てられるようでした。狂ってしまった、とは当初から気づいていましたが、結局6年間走り続けました。とうとう限界がきちゃって。カードが使えなくなって。私もともと小心者なんで、「どうしようっ!」って。でも、滅多な人に相談できなくて。ここ(オープンカウンセリング)に行ったらという友人がいて、それで来たんです。

 こんな相談受けてもらえるんでしょうか?
(後半に続く…)
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斎藤学の講座・ワークショップ

講座名日程時間料金対象会場
斎藤学ワークショップ6/17
18
14:00〜20:00
10:00〜18:00
31,500円一般東京麻布
斎藤学オープンカウンセリング18:30〜20:303,000円
5,000円
一般東京麻布
親のための家族相談18:30〜20:303,000円
5,000円
一般東京麻布

※開催日については必ず各講座の詳細ページでご確認下さい

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2006年05月02日

買い物依存で満たされていたもの(2/3)

[S]
image060502.jpg このところ毎週数件は借金がらみの相談を受けてますよ。ただ、当人がやって来るというのは珍しいですね。普通は親とか妻とか家族がやってきて「危機介入」とか「家族介入」とかのお節介をするんです。おかげで利息制限法やら出資法やらグレイゾーン金利とかにに詳しくなってしまった。
 「そんな利率の借金なんてない。払いすぎだから返してもらえ」、なんて弁護士がするような助言をすることもあります。もちろん本格的なところでは私に協力してくれている弁護士さんたちにお任せすることになるんですがね。

===
 あなたみたいにご本人が登場するというのは珍しい。でも殆どは、治療を薦める家族や弁護士への義理立てとしてやってくるので真の治療動機づけからは遠いんです。だから散治療契約に従ってもらえない。ドロップアウトしてしまうことが多い。

 でも中には本当に困って来院して短期間で改善して行く場合もあります。そうした人々の場合、抑うつ気分が見られることが多いのです。
 ギャンブル依存者(男性が多い)の約半数が抗うつ剤に反応するという国外研究者の報告([参考文献]斎藤学:強迫的(病的)賭博とその治療.アルコール依存とアディクション,13(2):102-109,1996)がありますが、このことは買い物依存者(女性に多い)にもあてはまる。
 私の印象ではそれほどの高率でヒットするわけではないが、確かに抗うつ剤が有効な場合はあります。しかし、より有効なのはやはり適切な精神療法、特に集団療法が併用されている場合です。あなたもクリニック(さいとうクリニック)の治療プログラムを試した方がいいですね。
自分の居場所のみつけかた斎藤学の新刊「自分の居場所のみつけかた」

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2006年05月09日

買い物依存で満たされていたもの(3/3)

(続き)
■х+1年2月3日(Sクリニックの「Sミーティング」で)

[クライアント]

image060509_1.jpg 先生のミーティング(集団療法)でシェア(体験を分かち合うこと、つまり話すこと)させて頂いてから、朝夕の抑うつ感がほぼなくなりました。『それでも親を愛している』と言い切れたことが効いているんだよ、という先生の指摘は、そのとうりなのかも知れません。

 買い物そのものはSクリニツクに来てはピタリと止まりました。でも、それから2ヶ月になるんですが、だんだん元気がなくなってきちゃったんです。あのブランドものバックの山は何だったのだろうと日々呆然と考えてるだけで、職場に行くのもやっとです。
 25年前の父の浮気と母の病的な嫉妬、耳に耐え難い口論を聞く日々。父に夢中な母は私のことが目に入らなかったんです。私は寂しかった。でも、そんなことをタネに未だに非行オバサンをしている自分が悲しいです。
 ホントは私、父も母も大好きなんです。

===
[S]

 アディクションが止まって憂うつになるというのはあたり前のことなんです。そこでもとの嗜癖行動に戻らないようにするというところが難しいのです。抑うつの壁を乗り越えならないことが多くて、もとの依存行動に戻ってしまいます。
 でも、あなたは何とかうまく行くかも知れない。「父さん母さんが好き」と言えてますからね。

■その後

image060509_2.jpg 抑うつの壁が依存症からの脱却を難しくする。普通はこの段階でリラプス(依存行動の再燃)ということになるのだが、この女性は回復を目指して果敢に突っ込んだ。

 行きつけの呉服屋から頻々と誘いのeメイルが来るのを無視しているうちに封書が来た。「注文したバッグが届いているから取りに来て欲しい」と言うものである。
 次のミーティングでそれを聞いたSは、「店にはすぐに連絡すること。ただし品物を送って欲しいということ」と指示した。まず店に行かせないことが当面の課題になるからだ。
 依存行動は一連の連鎖で成り立っており、その基盤には「その行動によってしか得られない人間関係」がある。この女性の場合、彼女を優しく包みこみ慰撫する店の雰囲気や店員の丁寧かつ親切な応対が彼女を酔わせていたのだから、店に足を運ばせないことが優先課題になるのだ。

 この助言が効いて彼女は新しい買い物をせずにすんだ。勢いづいた彼女は他の二店で「お取り置き」していた鞄も断った。

 今は山ほどに溜まったバッグや靴などを売りさばくことに精出している。品物は使っていなくとも買ったときの半値以下、使ったものなら一割しか戻らない。辛いのは店の人々の反応だという。買い物していたとき、店員たちは自分のすべてを受け入れてくれる親友のようだったのに、こちらが売り手にまわると冷たい。この6年、店員たちの笑顔が生き甲斐だった。そして新品のバッグを競い合う友人たちとの付き合いだけが彼女に安心感を与えていた。今は寂しい。

 結局、すべての依存症の根源には、この寂しさがある。それに耐えなければならないからこそミーティングが必要なのだ。(S)

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2006年05月22日

試行錯誤(1/2)

男らしさの病シリーズ

image060522.jpg 2002年1月から開始されたバタラーズ・ミーティング(当初2年間は隔週、現在は毎週)は、当然のことながら迷走のうちに始まった。

 その原因のひとつはグループの名前にあった。当初、このグループは「男性問題特別講座−攻撃性をめぐって」と名付けられ、この広報に魅力を感じた参加者を集めてスタートした。これは「男性問題」を取り扱う「講座」ではもちろんない。JUSTの幹部たちが講演会と名付けたのは、私が毎回参加することを強調したかったためだろう。
 私はJUST運営の資金集めのために年に何回か彼らの主催する講演会でしゃべっていて、時には連続講演をすることもあったから、参加者を集めやすいと思ったのかも知れない。確かに「配偶者を虐待する男性加害者」のミーティングをすると言っても人が来なかったかも知れない。おかげで定員15名を突破する参加者でスタートできたのだが、初日に会場(クリニックの図書室)へ行ってみると、狭い会場を埋めた人々の中央に楚々とした美女が深紅のドレスを着て座っているので仰天した。

===
 男性クローズド(限定)と言っておいたはずなのに、と内心ムカッ腹を立てながら、平静を装って自己紹介を始めてみると、その美女は性転換した30歳代の元男性であった。

 彼は男性であった時代に結婚歴があり、その際に妻への暴力があった。短期間で妻に去られ、やがて自分の中の女性性の隠蔽に苦しむようになって性転換を志し、数年に及ぶ診療査定と女性としての試験生活(その間に女性ホルモン注射を受ける)を経てついに性転換手術を許可され、外科的処置を受けた。今は戸籍上でも男性から女性への変更を求め続けているところだと言った。今はある男性(年下)と同棲しているが、彼の心ない振る舞い(浮気)や暴言に悩む身である。男性とは一体何だろうと考える日々なので、この会に出てみようと思ったのだそうだ。

 確かに「男性問題特別講座」の参加者には相応しい人だ。
(続く…)
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2006年05月23日

試行錯誤(2/2)

(続き)
image060523.jpg 性別問題を抱えた参加者は彼女の他にも2名いて、彼らは男装していた。
 うち一名は自分のジェンダー・ディスフォリア(性別不快)を表現しようと思いはじめたばかりの学生(21歳)だったが、もうひとりは30歳代前半の会社員で同棲相手との間に深刻な愛情問題を抱えていた。相手の男性は50歳代半ばで元の職場の上司だった人だという。参加者の男性はこの同棲相手の前では「子ども返り」してしまってワガママ放題になり、ときには暴力をふるってしまう。相手の男性も妻子を捨てて元部下との生活を選んだほどだから、誠心誠意彼に尽くそうとするのだが、そのやることなすことが気に入らない。暴力は次第にエスカレートしてきていて、最近は相方がアパートから逃げてしまい、一人で過ごす夜も多くなってきたと打ち明けた。

===
 この人の場合、「暴力衝動の抑制」というテーマには合致しているわけだが、「男性問題」というタイトルが無ければ、この会に参加したかどうかわからない。

 参加した16名の中には他にも所謂「家庭内暴力」で父親を自殺に追い込んでしまった男性とか、逆に息子からの暴力と暴言に困惑している父親などがいた。引きこもりがちな独身男性たちは主として母親への暴力衝動に悩んでいた。当惑したのは、既婚者で妻と同居していたり別居していたりという、私が本来の治療対象と考えていた人々が4名(25パーセント)しかいなかったことで、同棲や準同棲(相手が同棲を含む)を加えても7名(43.7パーセント)と半数にも達しなかったことである。

 この年(2002年)には6回を1コースとした、この種のグループを2回開いた。後半でも同じタイトルで参加者を募集してしまったのは何故だか覚えていない。第1回目の経過中に第2期募集が始まっていたので、タイトルを工夫するようなゆとりがなかったのだと思う。第2期には前回より多い19名の参加者あったのだが、この2回に参加した27名(重複参加者もいた)の男性(ないし元男性)のうち、何らかの配偶関係を体験していたのは16名(59.3パーセント)だけだった。

 翌年(2003年)1月からの第3期に至ってようやく、「配偶者を虐待する男性加害者=バタラーズ」に限定したミーティングであることを明記して参加者を募集した。参加者は第3期9名、第4期10名と激減したが、ここからようやく当初意図したバタラーズのためのグループへと変化し、2004年からは毎週金曜日の午後6時半から一定の場所(東麻布のビルの地下室)で開かれる常設グループとなった。現在(2004年8月31日)までのグループ利用者の実数は83名である。
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2006年05月24日

06年5月19日(雨)(1/2)

 ご無沙汰しています。「新Q&A」を書き始めてから、自分がこういうことを書きたかったのだということがわかってきました。しばらく続けようと思っています。それで「男らしさの病」は暫く「JUSTメルマガ」のみに収載します。こちらの方も締め切りが体感できるためか、何とか書き進められそうです。

image060524.jpg
 予告した5月5〜6日の「家族と子どもセラピスト学会」や、5月13〜14日の広島市でのワークショップは無事終了しました。5月6日のシンポジウムではパネリストのミュリエル・ジョリベさん(上智大学教授)と野口裕二氏(東京学芸大学教授)の話題提供がスリリングで久しぶりに「話す愉悦」を感じましたが、議論が盛り上がったところで時間切れになりました。
 ジョリベさん、野口氏とはその後も昼食をともにできたので、その間の議論も含めて学会誌(発行未定ですが、多分「年報」形式になるでしょう)に収載する予定です。

===
 広島市でのワークショップの前に福岡市へ行きました。こちらは日本精神神経学会です。
 演題は出しておらず、シンポジストや司会を依頼されていたわけでもなかったので、普段なら行かない学会ですが、今年から学会認定の専門医制度というのが始まり、5年間で600ポイントを稼がないと更新されない、学会のしかるべき講演なりシンポなりに出ると点数をくれるというので行ってきたのです。
 私はここ2年間自分に休暇を出しているつもりなので今のうちにポイントを稼ごうというわけです。3日間のすべてに出ると330点(?)取れると書いてありましたが、私は土曜日には朝から広島に居なければならなかったので3日目、金曜日には参加せず、270点頂いてきました。

 ほぼ10年ぶりの精神神経学会でした。この学会だけでなく家族療法学会、精神分析学会、社会精神医学会などみな辞めてしまったのです。「井の中の蛙」に徹するというか、自分の主宰する学会の運営だけで手一杯という10年でした。去年9月に自分の創設した医療法人から手を引いて、気持ちに多少のゆとりが出たのかも知れません。

 学会の方は行けばいったで面白く、久しぶりの人々に会えたのも良かった。
 福岡国際会議場の喫茶店に入ると向こうでは髪が真っ白になった北山修君が手をふっている。九州大学で何やらの教授をしているらしいです。こちらでは台湾のフー教授(こちらも髪が真っ白)が握手を求めてくる。テラスに出ようとコーヒーを運んでいると、パリの留学中に知り合った新福尚隆君に肩を叩かれるといった具合です。
 新福教授(どこの先生かは忘れました)とはパリで半年ほどのおつき合いでしたが、私が着いたとき既に二年ほどパリにいたので彼の地の様子を教えてもらいました。彼が居なくなった後、パリには日本語を話せる精神科医が私一人になり、領事館から精神障害をかかえた旅行者や学生や商社マンのことでいろいろ依頼されるようになったものです。
 その後彼はマニラにあるWHOアジア支局の所長となり、私をWHOの薬物依存問題専門委員会に推薦してくれました。1980年代後半から90年代にかけて私はジュネーヴ、コスタリカ、アンゴラなど世界のあちこちで開かれた会議に日本代表として参加させてもらっていましたが、その発端は彼の推薦でした。(続く)
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2006年05月25日

06年5月19日(雨)(2/2)

(続き)
 もちろん福岡はじめ九州各地の精神科医たちにも会いましたが、今回は忙しい彼らの足手まといにならないように気をつけることにして、3泊4日の間なるべく一人でいることにしました。夕刻に終わる学術集会の後、一人で街をぶらついていると、久しぶりに「ロスト・イン・トランスレーション」(というタイトルのアメリカ映画)の世界に入ります。

===
 グランド・ハイアットに泊まっていたのですが、隣接するカナルシティは女性用の店ばかりですぐ飽きてしまい、結局本屋に入ってDVD(『市民ケーン』『カサブランカ』『オクラホマ魂』など)6本と桐野夏生の『ダーク』、角田光代の『東京ゲストハウス』他数冊を買い、文庫版だけ広島前後の車中で読むことにしてかさばるものはホテルから郵送しました。高い買物です。もっとも『カサブランカ』は深夜、ホテルの自室で見ました。この映画を最初に見たのは10代だったから、ボギーとは半世紀ぶりの再会ということになります。

 

 水曜の夜遅く福岡に着いたので博多での昼食は3回、夕食は2回でしたが、二日の夕食と3日目の昼食はホテル5階の「なだ万」内にしつらえられた『清水』という寿司屋。一人だとやはり寿司屋のカウンターが落ち着きます。いつもは大勢で長浜の魚河岸にある『たつみ』という店に行くのですが、今回はさすがにそこまで出かける元気がなかった。しかし良い寿司屋さんでした。また行こうと思っています。

 2回目の夕食はホテル前の川端の屋台のラーメン屋。チャーシューをつまみにビール中瓶2本の後、ラーメン。まずかった。チューブのニンニクをたっぷり入れたら更にすさまじい味になり、半分以上残して退散。口なおしも考えたがまったく食欲がわかず、おまけに胸焼けで酒も飲めなくなったのは年のせいでしょう。
 結局、ホテルのバーでペリエとコーヒーを飲みながら『東京ゲストハウス』を半分読み、部屋に帰ってイングリット・バーグマンとハンフリー・ボガードのDVDを観終えたのが午前1時ころ。サイレース1mg服用してから、『ダーク』を読み始めたところで布団に入りたちまち意識混濁。セットしたモーニングコールが鳴る朝7時まで快眠できました。『ダーク』はそのままベッドに置き忘れて、帰京してからアマゾンに発注しました。まだ届いていません。

 元来時間にはケチな方なので今書きかけの本のための資料やパソコンを持参していたのですが、そちらの仕事には翌朝になってもまったく気が向かない。それでも折角だからと『家族療法入門−システムズアプローチの理論と実際』(遊佐安一郎、星和書店)という古めかしい本を学会場に持ち込み、講演に飽きると喫茶店で読んでいました。
 「今更なぜシステムズアプローチ?」と訊かれそうですが、今書いている本の中で「コミュニケーションとしての嗜癖」という問題をわかりやすく説明してみたくなり、勉強し直していたのです。参考にはなりましたがまだその原稿は書いていません。あれから広島での2泊を含めて数晩経っているわけですが、新聞のコラムやらこのブログやらの雑文ばかり書いていてその原稿から離れています。ウィルコムからW−ZERO3というモバイルが届いて、説明書を読みながらのパソコン接続にくたびれ果てているのも原因のひとつです。今晩あたり書く気になれるといいのですが。

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2006年05月26日

娘のうつ病に悩む父(1/4)

image060526.jpg[Q]64歳になる元会社員です。妻と娘からはギャンブル依存症と言われています。

 愛する一人娘が37歳でうつ病による3回目の入院を先日しました。確かに一時自己破壊的に場外馬券を買ったりして25O万円ほどの借金を作ったりしましたが、私は株取引についての一定の法則を見つけてこれについてはそれなりの自信も誇りもあるのです。しかし妻は私のこの誇りを一顧だにせず病人扱いしていますので、とてもこの妻と一緒にやっていく気になりません。

===
 来年、離婚した妻の年金支給が夫と折半されるという法律が施行されるので、これを機会に離婚するつもりです。妻も娘も離婚はしたくないと言っています。妻は58歳です。

 確かにバブル崩壊後私の資産形成が破綻し、今は自宅の土地と家しかなくなりました。場外馬券で借金を作ったのも焦ったからです。28歳で結婚し、30歳で東京近県に家を買い、その後転勤した土地で貸しビルを買って、こちらではいくらかの資産を作りました。それもこれも愛する家族に安定した生活をさせたかったからです。

 それが50代に入る前、48〜49歳の頃でした。1992年頃バブル崩壊による影響が出始めた頃でした。約15年前です。資金力不足のため株では充分な資産ができませんでしたが、土地と建物ではかなり成功したと思っています。
 バブルの波を被ってしまったので資産はゼロになり、そのことで妻は私を病気扱いし、顔を会わせると責めます。そういう妻とは一緒にやって行く気がしませんが、私たちの不和が昂じて離婚という話が決まると娘は「死ぬ」と言い出して入院になるのです。
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2006年05月29日

娘のうつ病に悩む父(2/4)

(続き)
image060529.jpg[S]娘さんはあなたを好きだし、あなたも娘さんを愛してらつしゃるのですね?それで娘さんの「うつ病」による入院が夫婦関係の決定的破綻を防いでいる。
 
[Q]そう思います。

[S]娘さんの所謂「うつ病」はお幾つからですか?

[Q]最初の入院は22歳です。

[S]つまり15年前、あなたの土地と建物による資産形成に影がさし始めた頃だ。

[Q]そうです。その頃私は2000万円の負債を負って妻にそのことを告白せざるを得なくなったのです。当時娘は大学生で、明るい子でした。

===
[S]15年前、娘さんはそれまでの力強い父親を喪失したわけだ。そういうのも「喪失」というのですよ。
 フロイトは『悲哀とメランコリー』の中で喪失した対象の取り入れをメランコリー(うつ)の原因という仮説を述べていますが、そのとき、取り入れの対象になる対象喪失とは「部分対象」なのです。つまり「死んだ父」そのものが取り入れられるのではなく、死んだ父の無言や不動という死に不随した部分が取り入れられるのです。

 あなたの場合、本当に死んだわけではありませんが、あなたの中の輝かしい部分や力に満ちた部分が「死んだ」のです。15年前のあなたと娘さんとは、それぞれそれ以後のあなたがたとは違うはずです。そしてそれは単にお父さんの資産形成が破綻して経済的に不安定になった結果ではないと思います。娘さんの「うつ」をこのような方向から考えてみることは問題の解決に新しい展開をもたらすと思います。

[Q]おっしゃっていることの意味がわかりません。

[S]そうでしょうね。なじむのに難しい考え方だと思います。
 要するに15年前、あなたに変化が生じた。娘さんの「うつ」はそのことに関連していると言っているのです。これを理解するには「あなたのある部分が死んだのだ」ということの意味をつかむ必要があります。そしてそれには、あなたがなぜそれほど必死に資産形成にはげみ、株の必勝法の研究に生涯をかけようとしているかを理解しなければなりません。
 それは多分、あなた自身が「対象喪失」を経験し、そのことを克服なさろうとしていることをしっかり把握しなければならない。

 どうですか、あなたは人生の初期に重大な喪失を体験しておられるのではありませんか?(続く…)
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斎藤学の講座・ワークショップ

講座名日程時間料金対象会場
斎藤学ワークショップ6/17
18
14:00〜20:00
10:00〜18:00
31,500円一般東京麻布
斎藤学オープンカウンセリング18:30〜20:303,000円
5,000円
一般東京麻布
親のための家族相談18:30〜20:303,000円
5,000円
一般東京麻布

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2006年05月30日

娘のうつ病に悩む父(3/4)

(続き)
image060530.jpg[Q]15歳のときに父が突然死しています。ハッパ事故でした。

 父は幼い頃両親を亡くして苦労して育ったそうです。農業のかたわらいろいろな仕事をしていて工事現場の仕事もそのひとつでした。
 子どもの教育には何でもしようという父で、だから兄たち二人は大卒です。三人兄弟のうち自分で言うのもヘンですが、末弟の私が最も優秀と言われていて、父は私を東京の大学どころかアメリカの大学院でも何でも行かせる、お前は学者になつてくれと言っていました。それが突然の事故死。私は母の苦境をみてすぐ大学進学をあきらめ工業高校に入りました。

 卒業後すぐに大手石油会社に勤めてその後の生活はその会社に捧げたようなものです。千葉湾岸の石油コンビナート、それから岡山、また千葉に戻ってそれから神戸へという具合に。最初は社宅暮らしで、そこで上司の勧めるままに結婚したのが今の妻です。

===
[S]お仕事ではそれなりに充実してらつしゃったようですね。

[Q]はい。全力をつくしたと思います。それなりに楽しくもあった。でも、いつも何か満たされていませんでした。こんなハズじゃなかったと思ってしまうのです。学者になりたかった。
 若い頃から資産形成に熱心だったのは、どこかで自分の運命を逆転させたかったからだと思います。私は会社の仕事のかたわら株価の動きを熱心に追い、売り買いの時期について一定の法則があることを見つけました。それを証券会社に持っていって使えないものかと相談したこともあります。
 最初のうちハナにもかけなかったふうだった担当の男がそのうち熱心に資料を検討するようになり、それからちょっとお借りしていいですか? と奥へ引っ込んでしまいました。たぶんコピーを取ったのでしょう。しかし、お礼を言われてそれきりでした。
 そういうわけで株での資産形成はわずかなものでした。むしろ儲かったのは土地です。ただバブルの崩壊後ひどいことになってしまって、それからは打つ手打つ手がすべて裏目。今では妻にも娘にもギャンブル依存症と言われています。

[S]今は技術用語が幅をきかせている時代ですからね。あなたの人生もギャンブル依存という一言で要約されてしまうのでしょう。確かにやりきれませんね。あなたがGA(ギャンブラーズ・アノニマス)に出てみてもしようがない。
 あなたの人生は事故で死んだ父親が、その後も生きたはずの余生を生きることであった。そのことにお気づきになることがまず大切なのです。人はときに親の人生を引き継ぐのです。特に事故などで急死しというようなときにそうなります。
 15年前まであなたは「父の思い残したことをする」ことに半ば成功していた。それから今日までの15年間はお父さまのもうひとつの側面、「動かなくなり、物言わなくなった」部分を生きているのです。

[Q]そうだとしても、それと娘のうつ病との間にどういう関連があるのですか?(続く…)
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2006年05月31日

娘のうつ病に悩む父(4/4)

(続き)
image051226_2.jpg[S]「親の喪失を体験した人」(つまりあなた)の子(あなたの娘)が、親の喪失体験のある側面を受け継ぎ、それをより鮮明に表現することも頻繁に見られることです。今回は娘さんの母親、つまりあなたの妻の側の問題を削ぎ落として考えていますので、実態はもっと複雑になりますが、骨組みの部分は変わりません。15年前に始まった娘さんの「うつ病」はあなたの一定の部分を娘さんが取り入れたことから生じたものだと思います。ですから抗うつ剤などには良く反応しないでしょう。

[Q]確かにクスリの効かないタイプのうつ病と地元の病院の医師に言われました。でも、そうなると私はどうすればいいのでしょう? 

===
[S]15年前に喪ったものを取り戻されればいいのです。お金は戻りませんよ。しかし、あなたの信念や自信なら取り戻せる。奥さまとの関係もね。

[Q]でも、私をギャンブル依存症という妻とは別れたいのです。娘の病気さえなければ、
すぐにでも別れたい。そうしないと私は妻に縛られて何も出来ない。残り少ない私の人生は終わってしまいます。

[S]順序というものが大事なのですよ。もう借金は返されたんでしょ?

[Q]ビルも売ってすべてなくしましたが、借金はありません。最初から出直しです。

[S]それならあなたは元気になれる。あなたが心血を注いだ株の必勝法を説いてまわりなさい。あなたに資金を託そうとする人を見つけるには元気と自信が必要です。その件で忙しくなれば奥さまの一言一言に苛立たれなくなります。自信と活気の漲るあなたのことを奥さまは責めなくなるでしょう。そういうあなた方を見て娘さんの「うつ病」なるものは軽快に向かう。私のこの言葉を信じて頂けるならあなたの家の「依存症」と「うつ病」の問題は消えます。
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