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2006年03月07日

出逢いが足りない私たち(2/2)

(続き)
image060307.jpg姉妹葛藤・兄弟葛藤

斎藤 あとこの本の面白いところは比較的早い段階で姉妹葛藤の深刻さが描いてあることだね。これね、我々から見るとすごく面白いテーマで。お母さんが長女飛び越して次女とくっついちゃっててね。
内田 あ、うちがそうだったので。
斎藤 ああ、実体験か。
内田 多少ね。母は妹がすごく可愛かったみたいです。私はこの作品のお姉さんと違って稼ぎ手になったので、実際はちょっと違うんですけどね。母は私にお金はくれって。
斎藤 葛藤する者ってよく似ている同士だとライバルになる。で同じ共通の目標があると3角形になるんだよね。あと兄弟といえば今の若貴騒動なんだけど、まず私が思ったのは『カラマーゾフの兄弟』。あれって父を殺すんだよ。父イコール神で、ようするに神殺しの話。若貴の場合、神様っていうのは相撲道のことで、弟はその道の狂信者。そしてお兄さんは神を捨てちゃった背教者。すごくカラマーゾフ的なんだよ。
内田 先生はなぜカラマーゾフを?
斎藤 息子と父の関係っていうのに興味があって。男はヘンじゃないかって思ってね。で今読み直してるんですよ。ああいう兄弟葛藤っていうのは実はずっと昔から繰り返されてるのね。でも若貴については「モデル家族の崩壊」とか「時代が変わった」とか、そういう社会心理学的な分析が多いでしょう。時代のせいにしちゃうと話は面白くなくなるんだよ。私は生物学的にとか、人でいることの宿命というか、時代や民族や国家や文化に関係なく通用する論理が好きでね。
内田 私のお友だちの演出家の木野花さんもカラマーゾフに入れ込んでて、お芝居にしてるんですよ。先生もしよろしければ今度ぜひ木野さんと対談いかがでしょう?
斎藤 ええ、ぜひ今度!

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目を逸らすお義父さん

斎藤 女性は道義とかはあんまり気にしないよね。でも男はそういうものがないと駄目。一番の道義は「女房子供を食わせる」っていうもので、男は「妻子は自分に頼ってる」っていう幻想の中にいないと不安定で不安定で、「自分なんて生きてなくていい」になっちゃう。
内田 まさしく、お義父さん…。私、今一番夫のお父さんのことで大変なんです。
斎藤 老後の問題で?
内田 いやピンピンしてます。非常に支配的で…(以下、お義父さんの具体的な言動の話が続く。詳しくは小社刊『ほんとに建つのかな』をご参考のこと!)。
斎藤 お舅さん、おいくつくらい?
内田 60半ばくらいです。
斎藤 僕と同じだ。まだ男が男をやっていた時代の影響が強いんですよ。下の世代になるとキャパシティが上がるんだけどね。
内田 私と話するときに、私のほう見ないんですよ。目線をくれて話さない。見たら負けって思ってる。
斎藤 お舅さん、本当に追い込まれているんだね。
内田 お義父さんは「オレがえらい」って物語に何度も何度も書き換えようとするんですよ…。
斎藤 それは偉いよ、その執念が。負けてない。おめでたい話ですよ、一言で言えば。
内田 ところが私そのせいで、ここんとこ妊娠にしくいんですよ。そのせいでって私は思ってるんです。
斎藤 アグレッシブになると妊娠しにくくなるね。攻撃性が出てきちゃうとね。
内田 ……!! やっぱりそうなんだ…。私もっと安らかな気持ちで暮らしたいんですよ! できるならもう1人産みたいと思ってる。でもお父さんのこと考えると夜中に心臓がバクバクしたり、銀行にいても冷や汗が出たり…。
斎藤 簡単に言えば、いい人の振りやめればいいんですよ。
内田 いやもうとっくにやめてますよ!? 散々描いてますから!夫が気にしてるのはわかってますけど、私は「あんな図々しいハゲおやじがついてくるってわかってたら、私あなたとは結婚しなかったわ」ってことまで秋に出る単行本に84ページも描いてるんですよ!
斎藤 はははは! それで打ち止めだな(笑)。
内田 私が何度お願いしてもまた同じことをする。言っても聞こえてないんだなって消耗してきました…。
斎藤 聞こえてないっていうか、それで行動を修正すると自分が全部駄目になっちゃうんですよ。「修正したら負け」という意識があるから。
内田 じゃあ細かい修正はできないってことですか?
斎藤 出来ない。私はこれでやるんだから、こらえろって。小さい世界でパワーを保持するって、男は無限にやってるんですよ。オス犬の小便みたいに。やだねー、男って。こうやって話聞くと困ったもんだなって(笑)。
内田 私の生い立ちも関係あるんですけど、子供が大きい家を建てたら、どうして喜ぶって方向に行かないのかな…。「そっちには絶対行かないの? そんなにもオレの支配下じゃないとだめなの?」って、私はそれを知りたいんですよ。それで自分の親とも駄目になったから。
斎藤 うーん。それはお舅さんにとってはキャパシティを一段階拡張することでしょう。それってすごい大変なことでね。不可能とは思わないけど、人間観が変わるのって、それこそ死に直面したり、足1本なくしたりしないとね。

縦の関係・横の関係

斎藤 そういう話聞くと、自分はそういうふうなことしちゃわないようにしなきゃって思うね。私はたまたま男の子いないから、力のある嫁とぶつかるなんて経験ないけど。
内田 「力のある嫁」って言わないでください〜(笑)! 別に力があるとか思ってないんです〜! 「子供が一番気持ちいいかたちを」って考えてたらこうなったわけで。
斎藤 どうしてそんなに力ってイヤがるの? いいじゃない。
内田 私、誰とも仲良くしたいんですよ。勝った負けたとかイヤなんです。
斎藤 勝ち負けにしないっていうのは、それこそ力の究極の段階。そういう水平関係が維持できてるっていうのは能力ですよ。たいがいの人は縦関係のほうが楽だから。「力のある女性」なんていうと力コブのある女性のようなイメージがわくらしくて女性はイヤがるんだけどね。
内田 イヤですよ。
斎藤 ははははは(笑)。内田さんは人と関係する能力があるっていうことだよ、それも力。こういう作品描く時だって、結局読者の視点に共感できなきゃ面白いもの描けないもの。読者と横関係ってことですよ。
内田 お義父さんは縦関係の人です。
斎藤 「でも私は横関係でいくの」って思っていれば、どこかでズレが起こっても衝突はしない。どちらかが上とかって関係になると敵対しちゃうけど。大丈夫ですよ、あなたは横でいける人だから。
内田 人をみるときに腕時計だの車だの見る人いますよね。例えば、こういうお店(対談場所の和食店)のご飯って美味しいけど、塩むすびだって美味しい。そういう喜びって貧乏でもあるじゃないですか。私が育った家は無茶苦茶な親だったけど、でもそういう喜びはあったと思うんですよ。
だからお金のあるなしとか、上下って…。
斎藤 そういうところに喜びを見つけだせる能力っていうのも、関係する能力と関係あると思うんですよ。ものはいらないですよね、関係さえあれば。でもあまりにも純粋にやると、ローマ・カトリックから列聖されちゃったりするけど(笑)。マリア・テレサになっちゃうから、そっちに行きすぎないように。
内田 気をつけよう(笑)。今日は長くなっちゃってすみません!
斎藤 いえ、こちらこそ大変楽しい時間をありがとう。

 「出逢いが足りない私たち」(祥伝社コミック文庫)より

 

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