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2006年01月23日

時の流れを止めたい息子(3/3)

(続き)
image060123_1.jpg 彼は今、24、25、26とつみかさなる時の流れが怖くて仕方がないんですね。新聞やビデオをとっておくことは、時が流れることの恐怖をおまじないで消すという効果があると思うんです。それと社会性の問題ですね。彼にしてみればお父さんが言ってるんだから間違いないと思ってやってるのかもしれません。でもそのために大金を投じてちっとも惜しくないような心境になってる点では、彼は狂ってます。しかし、彼の中のそういった焦りを減らす方法は、ないわけじゃないと思うんです。ちょっと大変かもしれないけれど。

 この彼が一貫してかわいそうなのは、自分が行くべきところが決められていて、それを強制されているのだけど、強制されても「やれない」という状態におかれてきたことです。柱にしがみついて、指を一本いっぽんはがされるようにして学校へ行くことを強制されたのに、とうとう登校できなかった。「本当は行かなくちゃいけなかったんだ」ということをずっとやってきた。親はひっぱたくのはすぐにやめたけれど、「学校にいってほしいなあ」という気持ちでいたでしょう。本人の「自分は登校できないなあ」と思う気持ちはずっと続いてるんです。彼の行動はすべて、そこから始まっている。

 だから、そこに始まるんだからそれをやめちゃえばいい。しかし大変です。つまり彼がやっていることを彼が無駄だ、必要がない、こんなことしなくてもいいと思うまでやらせる方向なんです。

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 すると、今お父さんの目がおびえてるけれど(会場笑い)部屋が新聞で埋まるという事態になりますね。そうなるとほかの家族がその家に住めなくなる。実際そういうふうになったご家族を私は何軒か知っていますが、結局、回復のきっかけになったのは、集めた荷物に追いやられて親がとうとう台所で寝て暮らす状況になったことです。
 その台所も半分くらいゴミで埋まった段階で、あるお父さんが私のところでこういいました。「私はもうすぐ定年だ。退職金で私は鉈を買う。それであいつの頭をかち割って警察に出頭する。それで私の問題は解決する」と。それはちょうど、浦和の高校教師が自分の長男を殺した事件の裁判で、加害者に懲役3年執行猶予1年が求刑されたときのことでした。その後浦和の事件は「執行猶予5年」で刑が確定したのですが、そのときのミーティングでそのお父さんはまた、「5年なら軽い。5年ですむならおれは鉈で頭をかち割る」といったんです。

 結局、そのうちは息子さんが集めたゴミで住めなくなりまして、その問題が解決したのはそれ以後なんです。いやいや、不安がらないでください。そうなさいといってるんじゃないですよ。その間、私が一貫して言ったのは「『時の流れと戦うな』ということをわからせるためには、徹底的にやらせるほかない」ということです。というのは、彼のやってることにはいつも止めてくれる人がいるから、彼はいつまでもやるわけです。誰にも止められず好きなように好きなだけ集めていますと、そのうちカラまわりしてくるんです。やってもしょうがないという気がしてきて、そのときに夢から覚めたような状態になる。ただ、これは、家族は何処に住むのだということにかかわってくるものですから、なかなかおすすめするのが難しい。これはヒントですので、これをおたくでできる範囲でやってみることでしょう。

  ──お金が持ちません。弟の部屋に入ってお金を盗むのも日常茶飯事なんです。

斎藤:お金が綱引きの綱になってますね、お金じゃなくて、親にとって大事な別のものを綱にする。学校があったときは「学校に行く・行かない」というのが綱の役割をしていたと思うんです。それに代わるようなものが必要になってきて、今はお金が綱引きの綱になっている。お金に代わるものはないでしょうか?

──不思議なんですが、みなさんのお話にあるような「死にたい」ということは、うちの息子は一度も言ったことはないんです。それからこういう話を息子にしますと、息子は必ず、「もう二度と、弟やお父さんお母さんから盗らない。来週から必ず働く」というんです。特に食事の時、母親と二人になると必ず「昨日はすまなかった、俺、来週から働くから」という前向きな姿勢を常に示すわけです。実際はできないんです。

image060123_2.jpg斎藤:学校の時も同じだったでしょう。「来週から」とか「新学期から」ということを繰り返してきたでしょう。時間を止めてるのが彼の問題なんです。
 どうでしょうか。綱引きの条件を一週間くらい考えてみて、考えつかなかった場合、このままお金をとられて部屋を新聞で埋めさせるのは我慢できない、ということになったら、これはご家族の中から、彼にどいてもらうほかありませんね。入院ですよ。これは薬である程度コントロールできますので、どういう薬の組み合わせでコントロールできるかということを、見てもらうための入院です。

 入院も積極的な意味を持つことがあって、彼にとっては家の中でやっていたゲームから降りることになる。病院の中ではたぶん、金の代わりにたばこかもしれません。精神病院はたばこの本数が制限されますので、貴重品ですので。たばこのコレクターになるかもしれません。時間を止めた中で生活するっていう意味ではふつうの生活よりずっと精神病院での方が楽だと思います。彼は決して精神病者ではないのだが、彼にとって楽だということを考え、またご家族の許容度ということを考えれば、それが一番良い解決策かもしれません。今までそういう話はなかったのですか?

  ──1回、強制入院させました。

斎藤:どうして出しちゃったの?

 ──当直の先生が「分裂病だから」と睡眠薬打って入院させてくれたのですが、あとから院長先生が「暴れているから引き取ってくれ」といって来まして。

斎藤:暴れますよ。そりゃ。暴れたあとに静かになるんですから。そうですか。「この人はこういう人でこういう環境が必要だ」と説明して、入院させてくれるところを探すことが必要ですね。といっていてもしょうがないので探してあげましょう。ケースワーカーの方にたのんで「強い強迫症状をお持ちの方を引き取ってくれる病院」ということで探すわけです。この人の場合閉鎖病棟が必要ですね。本人が外にでられないということじゃなくて、外から刺激が来ないということが必要でしょう。閉鎖のベッドの方がいいです。そこでかなり長期の入院というふうに考えて、時間を止めちゃいましょう。

 ──数年になりますか。

斎藤:もしかしたら一生です。そのくらいに考えた方が彼は安定を感じるでしょう。でも元来は健康な方ですから、そのうち「開放病棟で作業療法をやってみたら」みたいな話がでてきて、そこで彼は本来の彼が持っている力に気づきます。入院は一見まったく社会性とは逆の方向に進むようでいて、これが一番いい。一見回り道のようですが。いろいろな家族を見ていますと、むしろ、暴れ回る息子よりも、静かにだんだん家族を追いつめるタイプの息子といる方が、一家心中みたいなこと起こりやすいんです。その意味であなたが大変だというのはよくわかりますし、お手伝いできるところはさせていただいた方がいいと思います。

 ただ、精神病院が一番歓迎するのは統合失調症の患者です。ぴたっと治療がはまるし3ヶ月くらいでよくなるし、医者は人を助けたという充実感をもらいたくて生きてるわけですから。強迫神経症の人は歓迎されません。病院に受け入れてもらえるように説得する方がたいへんだな。

 ──デイケアなんかも1回しか行かないんです。自分はまともで、あそこにいる彼らはまともじゃないんだという認識なんです。

斎藤:彼には枠が大事ですね。通ってらっしゃるクリニックからも情報をいただくなりして対処方法を考えさせてください。

斎藤学の講座・ワークショップ

講座名日程時間料金対象会場
斎藤学ワークショップ2/18、1914:00〜20:00
10:00〜18:00
31,500円一般東京港区
斎藤学オープンカウンセリング18:30〜20:303,000円、5,000円一般東京麻布
親のための家族相談18:30〜20:303,000円、5,000円一般東京麻布
斎藤学による木曜ミーティング12:00〜3,000円、5,000円一般東京麻布
危機介入の技法18:00〜20:005,250円、7,350円専門東京麻布

※開催日については必ず各講座の詳細ページでご確認下さい

新規講座・ワークショップ

講座名日程時間料金対象会場
うつに効く ストレッチから呼吸法まで1/31、2/715:00〜17:003,000円一般東京港区
アサーティブ・トレーニング3/3〜6回金18:00〜20:0018,000円一般東京麻布

木附ブログ

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