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2005年10月20日
公務員やめました(拒食症、抜毛癖、爪かみ、冷房病、過食症)
相談者からの質問
私は、10年ほど公務員をしていました。まわりから見たら、気楽にやってるように見えるのですが、結構、変なふうに気負ってしまうところがあるらしく、ちょっとずつストレスをためていました。
まず、5年前、少人数の部署から大人数の部署に移ったとき、一気に体重が減ってしまいました。それまではドカ弁もって勤めに出てたのに、胃にものを入れること自体汚らわしいような気がしてしまって、全然食べられなくなりました。昼はだるくて、体が持たないのでよく医務室で寝ていました。すると夜は目がさえて、また昼だるい。こんなことを3年も続けてしまいました。
それから白髪になってしまって、脱色したり染めたりしていました。そうなると、髪の毛が気になりだして、ごわごわの髪の毛を探しては抜くようになっていました。
職場でストレスをためたのは、たぶん、こういうことだと思います。学校時代は、先生や親が、「これが正しい、人間はこうあるべきだ」ということを教えてくれます。それをならってまじめに守っても、社会に出てみると、全然違う不文律みたいなものが支配していて、公務員だというのに、上の人が、何につけ、自分の都合でいろんなこと動かしちゃったり、勝手に変えたり、そんなことを目にして、「大人って何なのだろう」って、もう私もいい年でしたが思いました。
そういうことにだんだん気付きながらもだましだましやっていたのが、とうとう破裂してしまったみたいなのです。
異動してから、よく、父親くらいの年の上司とケンカするようになりました。職場の他の人たちも、陰では「これ、おかしい」ってこと、よく口に出すんですよ。でも、決して表沙汰にしない。そのうち上司ににらまれて、何かあると私が呼び出されて怒られるようになってしまいました。ある時は、気を利かせたつもりでやったことで、「上司の机を勝手にさわるな、手癖が悪い」と60人くらいの人が見ている前で、つばをガンガン飛ばされて攻撃されちゃったりして、怒鳴られながら気が抜けてしまって、気がついたら、4階の部屋から飛び降りそうになっていたのでびっくりしました。
これをきっかけに病院にかかったのですが、「解決」の糸口は見つからず、「2週間、お休み」の診断をいただきました。こんなわけでどうにかこうにかやりすごし、再び異動がありました。
新しいところで今度こそがんばろうと思ったのですけど、やっぱり同じ問題に遭遇して、今度は冷房病と過食症になります。今度の天敵はパートのおばちゃんたちでした。例えば、「女子がお茶くみをする」という風習がありますが、私は別にいまどき「女性の権利を!」とかって声高に言うつもりはないのですが、でもそれってどうしてそうなのだろうと素朴に思って、ミーティングの場で「お茶を入れる意義について話し合いません?」って明るくいったら、「そんなにお茶入れるのがイヤなわけ」とぴしゃっと片づけられてしまって。ぶつかってばかりです。
当時の上司の方は、女性で、私の話を割合よく、ふんふんと聞いてくれました。でも、結局、自分でわかる範囲でしか受けとめてもらえない。何か私が言ったことで、そこから何か考えてくれるとか、そういうことはなくて、しまいに、この上司も、私のことを「怠けてる」と思って嫌うようになります。
拒食症の時に白髪をきっかけに始まった毛抜きぐせで、いまも、ちょっとうすらハゲがありますし、過食では一気に10キロも太ってしまいました。拒食の時には爪がぼろぼろになってしまって、今も甘皮みたいなのしか生えていません。それを、イライラしたときなんかに自分でかみちぎったりして、自虐的な行動をしてしまいます。
それで、とうとう公務員を辞めました。スッキリしました。やめて、新しい出会いもあったし、自分がやりたかった仕事にも気づけたし、こうなってしまったことも、結局は、「いい機会」だったのだと思えるようになりました。
でも、まだだめなのです。大きな壁の前にいます。いまだに髪の毛を抜くし、吐きます。人間ポンプみたいに。時には水を1リットルくらいがぶ飲みして、胃を洗うみたいにして全部はきます。どうしてなんでしょう。何が足りないんでしょう。この壁から出るにはどうしたらいいのでしょう。とりとめのない話ですみません。
斎藤学からの回答
いや、とりとめありますよ。あなたは要するに、「ポリアディクト」といって、過食もやってるし、拒食期もあったろうし、抜毛癖も、爪噛みもあるし、どれも中途半端ではあるし、「アディクションのデパート」とまでは行かないけど、「アディクションのコンビニ」くらいの品揃えの人です。そしてまた、これらのアディクションは、あなたを救うためにあなたが自分の中で考え出した治療法なのです。ただ、身体に優しくないのですね。
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中途半端といったのは、アディクションも極めるとすごいのがいますから。抜毛癖で言うなら、まず、抜毛の女王といえるのは、詩人の伊藤比呂美さんでしょう。彼女はただ生えている毛を抜くのでは満足出来ないそうで、皮膚のしたにうっすら沈んで身を隠しているような毛を引きむしってほじくって、毛根の油をなめるのだそうです。
その人に聞いたのですが、なんでも、「切腹」というアディクションもあって、そういう人が集まったパーティーまであるそうです。白装束を来て、作法に従って、刀を取り、腹をくつろげて、スーッと切るのだそうです。介錯人も後ろに立ちます。本当に介錯したら死んでしまいますから、立っているだけですけれど。ここまで来ると「病膏肓にいる」ってかんじですが、こういう同好の人たちで集まって、趣味を語り合い、競い合ったりする。そういう世界もあるわけで、人間なんて、どういうふうに自分の人生を定めるかってことは色々あっていいわけです。
あなたは、公務員を辞めてしまったわけですが、でもたぶん、このことは、あなたがステップアップするためには必要なプロセスなのでしょう。公務員をやっていると、伸びていけません。あれは巨大な卵みたいなものですから。私も長いこと公務員をやっていましたからわかります。開業医になって、はじめて世の中の人の道理というものがわかりました。恐ろしいことです。もっと早く、役所や大きな組織を抜け出て、自分の立っている船板の下に波音を聞く生活をするべきでした。あなたはこれからいろいろな苦労があると思いますが、そういう点では、私はあなたが公務員をお辞めになったことを喜びます。
あなたは親の話をしませんでしたが、あなたが今ある状況の、その背景にあるものは、7割方、親との関係にあります。
え? さっきの方には、「親の責任は3割だ」と言いましたか?
私の言うことは、相手を見てころころ変わるので気にしないでください。
あなたは父親くらいの年の上司と衝突したことを話されましたが、同じような関係が親との間にもあるのではないですか。ご両親は公務員になることを喜ばれましたか?
ふうん。なるほど、堅いおうちですね。公務員になることを重んじるおうちは「堅い」ですよ。いい子だなあ。そうやって親を喜ばせてきたわけですね。したに兄弟がいらして、長女だし、お父さんお母さんのご機嫌をとる、家族内の調整をとるってこと、あなた知らないうちにきっと頑張ってやってらっしゃった方だと思うのです。公務員としての職場での話よりも、長女としての家の中の役割が相当重い人なのではないかなと思います。細々したことにエネルギーを使って、ボーイフレンドだとかそういう方面には関心が閉じられてしまっている。
まあ、それはさておき、そういうわけであなたの場合、「冷房病に感謝」ですね。身体は正直ですよ。自分がいくら親の「いい子」やってたって、身体がいうこと聞かない。あなたは冷房病といったけれど、妙な重苦しさと、あなたの中の怒りとか、抑圧されることへの反抗だとか、そういったものがたまっていて、とてものことその雰囲気の中で「お茶くみ会議」なんかやっていられなかったわけです。たぶんそれは、あなたがもっとフィットする場所が、あなたのことを呼んだのです。それが何かはわからないけれど、これから発見するでしょう。
それから、ひとつ。今ほど女性が拘束されている時代はありませんよ!「いまどき、声高に女性の権利を、というつもりはない」なんていうのは、いまどき完全に時代遅れです。テレビコマーシャルひとつ見てご覧なさい。あなた方はフケ1つ落とせない。「デオドラントなんとか」を使わなきゃ臭い、っていわれてます。それにどうでしょう、子ども1つ、生みたいときに生めないじゃないですか。
それはさておき、抜毛癖、過食症といったあなたのお友達たちをむげに敵に回してはいけません。爪が「噛まれたい、噛まれたい」って呼んでいる。だけど爪を噛むと痛いから、これからは爪をなめるのにかえる。爪かじりを鼻ほじりにかえる。お肌の手入れにかえる。癒し系のものがいいですね。アディクションの種類は減らすのではなくて、増やす方がいい。1つに絞って「アルコール一筋」なんてことになると、病院が待ってます。体に悪いアディクションから、体にいいアディクションに変えていく。でも、爪を噛むのにはお金がいりませんが、フットマッサージやお肌の手入れに行けばお金がかかります。でもここは、「それでも気持ちいいことは私にとっていいことだ」という方針にした方がいい。
公務員をお辞めになったことを「ステップアップ」だと言いましたが、ステップアップというのは、いわゆる「ナントカ資格」をとるとか、そういうふうに考えてしまうとつまらない。いちばん肝心なのは、価値の転換みたいなものを、自分の中に起こしていくことだと思います。
※この原稿は「斎藤学オープンカウンセリング」(火曜日18時30分〜20時30分、東京麻布、予約不要)での相談者と斎藤学のやりとりをもとに作成されました。
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2005年10月20日 13:55:[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ][↑ページ上端へ]