トップページ西尾和美メッセージ>2003年2月-2

西尾和美メッセージ

西尾和美のメッセージ西尾先生
10月の清里でのレクチャー&スーパービジョンで、お世話になったものです。あの時、先生に頂いたアドバイス、(ワークショップ全体から頂いた)メッセージは本当に私には大きな励ましになりました。

あのあと、あのワークのおかげで、職場でも随分いろいろな試みが出来ましたし日々の仕事を進める場合でも、以前より、自分に自信をもって取り組むことが出来た気がします(私は知的障害者の通所の作業所=就労援助施設の指導員をしています)。

11月からは、知的な障害は軽いものの、心の問題を多く抱えている利用者を対象に(最近とても目だってそういうケースが増えていて、私たち職員は対応に苦慮しています)、先生のアファメーションの本を一人、または二人くらいで組にして、一緒に読むということを始めました。

日常業務の合間にちょっとした時間を設けたり、帰り際に少し残ってもらったりして行います。初め、内容的に、ちょっと彼らには無理かと心配していたのですが実際に始めてみたら、(もちろん、ゆっくり噛んで含めるように説明をするのですが)みな、ものすごく興味を持って、目を輝かせて聞いてくれるということが分かり、始めた私たちがびっくりしてしまいました。

今、一緒に読んでいるのは、5人ですが(色々な人間関係もあり、また悩みの内容、レベルなどもあるので、大抵、その時々で、1〜2人くらいの単位で行ってます)、みなその時間をものすごく楽しみにしています。
 たとえば、母親との色々な葛藤があり(本人自覚あり)、精神のバランスを崩して、作業中に泣いたり喚いたりが始まってしまうある利用者Aさんは、自分でそれが始まりそうだと思うと、今までは安定剤にすがっていました。

ところが、今日は、まず「あの本、読みたいんですけど・・。」と訴えてきて、「今は時間取れないけれど、帰りに時間が取れると思う。どうする?帰りの時間まで仕事頑張ってみる?それとも、辛かったら帰る?」と問いかけると、今までだったら調子を崩すと薬をたくさん飲んですぐに家に帰ってしまっていたところですが、「帰りの時間まで頑張る。」ということになりました。

また、ある利用者Bさんは、中学から父親と二人暮しが続いているのですが最近父親が彼女に愛想を尽かして、・・・というよりほとんど憎しみを持ってしまって(きっかけは彼女が仕事をサボりがちになり、父親の言うことをきかなくなったことかと思われるのですが、詳しい話をすると長くなります)、彼女に食事を満足に与えなくなってしまうという事態があったのですが(現在彼女の自立または施設入所を目指して調整中)、彼女の場合もしばらく長欠が続いて、このまま来なくなるんじゃないかと心配されながらも、今ではアファメーションの本を読む時間を心待ちにしていて、休み休みではありますが、何とか通ってきています。

そんな彼女に対して、私たち施設職員は、今までだったら、うっかりすると「彼女が怠け者だからいけないのだ。お父さんが怒るのも当然だ。」というような見方をして、ただ彼女を叱責するという対応になりがちだったと思います。しかし、今回は西尾先生や、斎藤先生の本のおかげで、彼女にまずパワーを与えるということしか、解決方法はないと考え、実際そういう取り組みをすると彼女の目の輝き、やる気が全然違ってくることを実感するのです。

そして、今回、27歳の女性利用者Cさん(彼女の家はいわゆるDV家庭)と先週の金曜日に一緒にアファメーションの本を読んでいたところ(彼女とはまだそれが三回目でした。施設行事の歌の練習が同じ時間にあったので、「後にしようか?」と問いかけたところ、楽しみにしていた練習の筈だったのに、「本を読みたい」と真剣な顔で言われたので読むことにした時でした)、「イヤな時には、はっきり、ノーと。」というページを読みながら、「Cさんは、イヤなのにイヤって言えない時はない?」との私からの問いかけに、「イヤって言っているのに、やられる時がある。」と言い出し、詳しく聞いてみると、思いがけず、父親にずっと近親姦され続けているということが判明しました。

驚いた私たち施設職員は、とりあえず今週の週明けから、母親との面談と、本人からの詳細な事実関係や本人の気持ちなどの確認(母親に会った日に、家に帰すと口止めされることを危惧して、家に帰す前に行いました。証拠として必要かとも思われたので本人の了解を得てからカセットテープに録らせてもらいました)などをしました。

そして、それらをもとに、彼女の保護を彼女の意思だけで(保護者の了解を必要としないで)して欲しいということで、地元の障害福祉課との折衝・・・そして、そことの折衝がまるで進まないので、別の女性相談の窓口に相談、地元への働きかけを得る、などして、今週はまるまる一週間、施設長を中心に、人手の足りない中、全体の三分の一近くの人員を割いて動いてきました。

そして、今日は、いよいよ、彼女を緊急一時保護の施設に入所させる算段になっていたのですが、今朝になって、本人が昨夜のうちに母親に説得されたらしく、昨日までと態度を一変させてしまい入所の希望を取り下げてしまったのです。今回は私たちも断念せざるを得ませんでした。

一週間やってみて、実感したのは、障害者福祉に関わる行政や、関連団体の職員、関係者の意識(特に人権意識)の低さ、やる気の無さ。

また、もちろん、いわゆるDV家庭の実態(母親の現実の否認には驚きました。彼女はすべて知っている筈なのに・・。娘に「口外するな」「忘れなさい。」「考えるな。」とほとんど脅迫しているのです、母が・・。)。先生方の本では何度も読んでいることですが、身近で直に接するのは初めてなので、本当にショックでした。

そして、そんなむちゃくちゃな環境の中、頭がごちゃごちゃになってしまって苦労している本人の状況・・・でも、その中でも、曲がりなりにも自分の意思というものをちゃんと持っていて、何とか保とうとしている本人の様子は、本当に見ていて辛いのは当然として、ある意味私たちが思っていたよりもずっとずっとしっかりしている彼女に心から驚かされました・・・と言うより、敬意を感じました。私たちはどうも今まで彼女たちをかなり見くびっていたようです。

今回の件は、結局自分たちの無力さを見せ付けられる形でひとまず終わってしまいましたが、もちろん、これからも彼女を見守り続けて次の機会を、今度こそは活かしてあげたいと、職員同士で話し合いました。少なくとも関係機関との連携の基本は出来ているので、次はもう少し動きやすいはずですし・・・。

しかし、知的障害のある場合、特に、本人の意思の確認という作業はとても難しいものがあります。・・・いや、これは、健常者でも同じかもしれませんね。あのような家庭で育つと母親や父親からの呪縛は相当なものでしょうから。

また、逆に、本人が今回のように親に説得されて申請を取り下げしまった場合、「本人の堅い意思が認められない」ということで見過ごされてしまっていい問題なのか、ということも、とても疑問です。彼女の意思がどうであれ、彼女の家の中で犯罪行為が行われていると言う事実には変わりがないのですから。

アメリカではこういったケースはどう扱われているのでしょうか。彼女は父親に近親姦を強要されているのです。母親は彼女を見殺しにしているのです。私たちには何も出来ないのでしょうか。

話がかなり逸れてしまいましたが、以上のように、先生から教わったことから、とんでもない、思ってもいなかった事実が表ざたになったり、みんながアファメーションを心の支えにしてくれて、今やうちの施設の静かなブームになっていたり・・・始めた私たちが本当に戸惑っています。正直、ここのところ、まるでパンドラの箱を開けてしまったように、いろいろな問題も噴出して来て、無視することも出来ず、職員はその対応に追われる毎日ですから・・(それらは、彼らのいわゆる問題行動に対してお説教してお茶を濁す仕事ではなく、彼らを取り巻く様々な人間関係やら行政やらに働きかける仕事なので、正直、仕事としては、私たちにはずっと大変な事柄が多いのです)。

それで初めて気がついたのです。みんな知的障害と言われ、「難しいこと言ってもムダ。」と無意識のレッテルを貼られ、今まで、こういったことを真面目にまっすぐに話してもらったことが無かったんだな、と。

私たち施設職員は、もちろん、意識としてはみんなの人格を尊重して日々接しているつもりなのですが、実際にはどこかで昔からの施設のやり方を無意識に踏襲して(多分、それは、「精神薄弱者の愛護」なんていう言葉が使われていた時代の遺物です)、本当の彼女たちの気持ちを見つめずに、ただ子供騙しの行事の押し付けなどでお茶を濁してきていたのではないかと。

そんな中、彼らは、自信を奪われて、自尊心を踏みつけにされ、そんなものだと諦めてきていたけれど、でも、本当は誰かにちゃんと人として認めてもらいたいと、それを何より願っていたんだな、と。私は、そんなことが今まで分からなかったのです。

一昨日は、怒りの処理に戸惑っていたAさんに、読みたいページを選んでもらったら、「怒りは複雑な感情」というページを選んでくれました。読んで説明していて、「あなたの人権が侵害され、命が危険におかされた時には、怒りの表現は、絶対に必要です。」というくだりを読んで、「人権」って言葉、知ってる?というところから、ゆっくり説明すると、一緒に読んでいたBさんも、真剣な表情で涙ぐんで頷いて聞いていてそして、自信を得た様子で微笑んで私の顔を見つめ返してくれました。
本当にありがとうございます。私たちに力を与えてくださって・・・。

私たち職員も、アファメーションの本を繰り返し読むことで、本当に普段のみんなに対する声掛けの仕方が随分変わってきている気がしています。少なくとも私は、以前よりはずっと、その場その場で、より適当な言葉がうまく出てきて、一番その場で相手が欲している対応をしてあげられるようになってきているような気がします(まだまだ未熟ですが・・・。)。また、これは、他の多数の、本を一緒に読むことはちょっと難しい利用者に対しても同じだと思います。

一度お礼のメールがしたいとずっと思いつつ、先延ばしになってました。本当に返す返すありがとうございました。
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今日1日のアファメーション 今日1日のアファメーション〜
 自分を愛する365日
 著者名:西尾和美
 出版社名:ヘルスワーク協会
 定価(本体):2000円
 出版年:1996年
 [詳細/ご購入はこちら
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