2016年10月の一覧

« 2016年09月 | メイン | 2016年11月 »

2016年10月03日

水族館のマグロが死んだ(5)

でも、そこでまた疑問もわきます。
 フロイトの理論によれば、生物(人間)には、「いきいきと生きたい」という「生の本能」もあります。通常、私たちはそのふたつの本能のバランスをとって生きているわけです。

 ・・・だとすると、前回までのブログで書いたさまざまな事件の容疑者とされる人々は、そのバランスが崩れてしまったのだと考えられます。「人と一緒にするな!」と怒られそうですが、水族館のマグロもそうかもしれません。

 ではなぜバランスが崩れてしまったのでしょうか? 何がそのバランスに影響を与え、「生の本能」よりも「死の本能」を優勢にしてしまったのでしょうか?

状況や環境が関わっている?

 やはり私はそこに、その生物(人間)がおかれた状況や環境が大きく関わっていると考えずにはいられません。

 フロイトは「すべての本能は緊張を解消し、過去の安定状態を再現することである」として、「死の本能」へと向かうしました。もしそうだとしたら、自らを滅ぼしたり、他者を滅ぼそうとする生物(人間)は、「おそろしく緊張し、安定できない状態にあった」とも言えるのではないでしょうか。

 もちろん、どんな状況下にあっても、人を殺したり、自殺することは認められません。しかし、命を破壊せねばならないほどの緊張下で生きなければならないとしたら、どれほどまでに辛いことでしょうか。安定を求めて自ら「無」になることを選択する人生とは、どれほど悲しいものだったのでしょうか。

相模原の障害者施設殺傷事件では

 人間が破壊的な選択をする根底には、必ず不安と恐怖、そして孤独があります。そんな「不安と恐怖に彩られた孤独な人生がどのようなものであったのか」を明らかにすることは、逆に言えば、「どのようなものがあれば人間を破壊的な方向へ向かうことを止められるのか」を教えてくれるものでもあります。

 7月末、神奈川県相模原市の障害者施設で、元職員が入居者19人を殺害し、26人に重軽傷を負わせるという痛ましい事件が起こりました。元職員を断罪することはかんたんです。しかし、二度とこのような事件が起きないよう、その生い立ちを明らかにし、元職員には「なぜ、このような犯行に至ったのか」を話せるような環境が与えられることを願ってやみません。

[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ]↑ページ上端へ

2016年10月21日

『生き心地の良い町』(1)

 前回は、「命を破壊するほどまでに過酷な環境」について書きました。
 そのような緊張にみちた環境にいると、生物はだれかの命を奪ったり、自らの生命を絶つというリスクを負いやすくなるのではないか? という疑問があったからです。

 今回はまったく逆の環境。つまり、「生き心地のよい環境」について書いてみたいと思います。

全国でも自殺が少ない旧海部町

『東京新聞』(2016年9月25日)の「こちら特報部」に興味深い記事が載っていました。「自殺少ない 徳島県旧海部町を歩く」という記事です。

 旧海部町は2006年に海南町、宍喰町と合併して海陽町の一部となった地域です。人口は約2000人で、かつては漁業や林業で賑わったけれど、現在は高齢化が進む、いわゆる「何の変哲もない田舎町」(同紙)。

 その旧海部町が、全国でも自殺が少ない地域として知られているというのです。

 ちなみに、現在の日本の自殺者数は約2万4000人。いちばん多かった2003年に比べると約1万人減っています。
 しかしそれでも、自殺率は先進国の中でも依然として高いままです。

『生き心地の良い町』

 和歌山県立医大で講師を務める岡檀(まゆみ)さんが全国3318市区町村の過去30年間(2002年まで)の自殺率を調査したところ、旧海部町は全国で8番目に自殺が少ない地域だった都のこと。

 同地域をのぞく、トップ10はすべて離島だったということで、岡さんはより一般的なコミュニティを有する同地域を研究対象に選んだそうです(同紙)。

 そして『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』(講談社)を著しました。

[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ]↑ページ上端へ