2015年09月の一覧

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2015年09月08日

四角いスイカ(4)

「公平」という言葉の意味もなんだかよく分からなくなりそうですが、少なくとも当時、こうした藤原氏を国やマスコミがこぞって応援しました。

 国は、和田中学校運営協議会に文部科学省の役人を送り込んだり、藤原氏創始の「よのなか科」などを広める民間企業を新教育愛初プログラムに指定するなどしました。

 天下の『朝日新聞』は、「公教育の建前を並べるだけでは、学力をめぐる保護者の焦りは消えない。お金のかかる私立校や塾が現にあるのだから、ここは塾に行けない子への福音と考えたい」(2008年1月9日付け「天声人語」)とまで書いています。

驚くほどの“集客ぶり”

 こうした宣伝が功を奏したのか、私が取材した翌年(2009年)の和田中への入学希望者は100人を超え、隣接する中学校の約30人を引き離すほどの“集客ぶり”でした。

 その頃、話をうかがった杉並区で子育てをしている保護者の方たちのこんな意見が印象に残っています。

「『夜スペ』は反対だけど、大学に行けないと正社員になれず、結婚もできない。そんな思いを子どもにさせたくないから『とりあえず和田中へ』と思ってしまう」

競争・格差教育をさらに定着させる

 非正規社員が増え、低所得から抜け出せず、結婚をあきらめる若者の存在が話題になるなか、この将来を憂う親の不安は深刻です。
 
 そんな親心を利用して経済界や国は競争教育を後押してきました。藤原氏のような人物が説く似非の「公平な教育」を広め、「お金が無くてもきちんと勉強が身につく」と喧伝し、公教育に民間企業が入っていく道を広げました。

 そもそもお金がなければ質のよい教育が受けられないという「公教育だけで勉強が身につかない教育システム」や「塾に行かねば競争に勝てないような受験体制」にこそ問題があるはずなのに、藤原氏や彼の主張を後押しする人たちには、そういった視点はありません。

 こうした企業の論理に乗っかった教育を是とすることは「競争によって生じた格差は正当」と認めることになり、結果として競争・格差教育をさらに定着させるだけなのに、その問題点を指摘する声もほとんど上がりませんでした。

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2015年09月15日

四角いスイカ(5)

 藤原さんが校長を辞した後も、やはりリクルート出身で、当時トップアスリート社代表取締役だった代田昭久氏が就任しました。

 その後は民間人校長の採用は行われていないようですが、今も学習塾の講師を招いての有料の補習授業は続いているようです。

子どもを見捨てた?

 縷々書いてまいりましたが、話をうんと元に戻しましょう。
 四角いスイカ(2)で気になるコメントをされていると書いた長谷川さんは、そんな市場価値を学校内に取り入れた和田中のある杉並区で適応指導教室に勤めていた方です。

 その方が、次のようなコメントしていたのです。

「和田中から不登校や知的な障害がある子らが、適応指導教室に送り込まれた。他の中学より多い印象だった。学校の価値を高めないとみなされた子を見捨てたのか」(『東京新聞』 2015年2月28日付)

枠にはまらないものははじかれる

 まさに「四角いスイカ」の話とそっくりではないでしょうか。

 窮屈な枠をつくればつくるほど、その枠にうまくはまれないものも増えます。エネルギーがあったり、自分らしさを色濃くもったものほど、はめられた枠を壊そうとして、うとましがられます。

 枠に適応できないものは「不適応」の烙印を押され、市場では価値のないものとしてはじかれていきます。

“発達障害ブーム”も一役買っている

 たとえ適応させようとする枠のほうに問題があっても、そのことが顧みられることはありません。どんなにへんてこな枠であっても、それに適応できないものは「不良品」とされてしまいます。

 そんな仕組みが今の日本ではあちこちに見られます。そうしてはじき出された「不良品」を、「どうにか加工してして格好をつけ、枠に当てはめてあげることが正義」だと本気で信じている方々も多くいます。

 昨今の“発達障害ブーム”も、こんな社会の風潮に一役買っていることでしょう。

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2015年09月24日

四角いスイカ(6)

 市場で価値のあるものとされために自然の発達に逆らった枠をはめ、その枠に当てはまらないものを「不適応(不良品)」と考えるような学校を応援する社会。

 そんな社会で育っていけば、だれだって自分らしさや自分自身に価値を見いだせず、自尊心は低くなり、自己肯定感も奪われがちになります。

 それを端的に表した調査結果があります。
 2014年9月から11月にアメリカ、中国、韓国と共同で実施された「生活と意識」をテーマにした国立青少年教育振興機構の調査結果です。各国の高校生約7千700人から回答を得ています。

ネガティブな日本の高校生

 注目したいのは同調査のアンケート「自分について(PDFファイル)」の項目です。ここで日本の高校生が他国と比べ、とてもネガティブな回答をしているのです。

 たとえば「自分の希望はいつか叶うと思う」の回答は、肯定的な回答はアメリカ・中国韓国すべてが80%を超えているのに、日本は67.8%。また、「私は人並みの能力がある」という質問では、アメリカでは88.5%、中国は90.6%、韓国は76.8%だったのに、日本は55.7%です。「私は勉強が得意な方だ」の質問では、肯定的な回答をした日本の高校生はわずか23.4%しかいません。

 逆に、自分への否定的なイメージを問う「私は将来に不安を感じている」や「自分はダメな人間だと思うことがある」では、日本がトップ。たとえば後者の質問への回答では日本は72.5%で、アメリカ45.1%、中国、56.4%。韓国35.2%とダントツに高いのです。

日本人の謙虚さ?

 これらの結果を「日本人の謙虚さ」と考える向きもあるかもしれませんが、カウンセリングなどで子どもや若者と接している立場からすれば、「その考えは楽観的過ぎる」と言わずにはいられません。

 私が知っている限り、子どもや若者たちの多くが、実際以上に自分を低く評価し、周囲の目を恐れ、評価におののき、自身を失っています。
 おとな(社会)が提示した枠にうまく当てはまることができない自分を「ダメなやつ」と考えています。

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