このシリーズの最初の記事へ

今から数年前に、社会的養護の現実を取材したことがあります。
そのとき分かったのは、ひとりの児童相談所職員(児相)が抱えるケースの多さです。100件を超えていることもざらで、多いと130ものケースを担当していました。

そのほとんどは、危険な虐待が疑われるケースです。法律上は、18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に応じるのが児相の役目ですが、実際には、「生きるか、死ぬか」のようなケースが優先され、それ以外のケースは後回し、もしくは手つかずの状態になってしまいます。

「だからしょうがない」とは言いませんが、その大変さは察してあまりあるものがあります。

職員の専門性や力量の問題

ひとり一人の児相職員の専門性や力量の問題もあります。

自治体によっては、大学等で社会福祉や心理などを学んだ専門知識を持った者を職員として採用しているところもありますが、まったくはたけ違いの部署から児相へと、平気で異動させる自治体もあります。

たとえば、つい先日まで水道だの土木だの戸籍だのを扱っていた職員が、急に児相へと配置され、まったく知らない子どもの福祉に携わるのです。うまく対応できるはずがありません。

通り一遍の研修をわずかにやっただけで、いったいどれだけの専門性が身につくというのでしょうか。

頭で理解するだけではダメ

でも、大学等で福祉や心理を学んでいれば「力量のある専門家」というわけではありません。

おとなから見れば問題行動としか取れないある子どもの言動でも、実際には子どもがうまく言語化できないニーズの訴えであることがよくあります。
こうしたニーズをうまくくみ取るためには、職員の側に「この子はいったい、この問題行動を通して何を伝えたいのだろう」と考え、寄り添おうとする姿勢が必要です。

ところが「問題行動は押さえ込むべき」とか「子どもはおとなの指導に従うべき」などと考えてしまう職員も少なくはないようです。(続く…

このシリーズの最初の記事へ

だから子どもの気持ちは無視し、事実関係もろくに確かめず、親から引き離すなんていう悲劇も生まれます。

次のパラグラフ以下でご紹介するのは子どもの権利条約に基づく国連NGO・DCI日本発行の『子どもの権利モニター』(120号)に寄せられた、ある高校生の女の子のお話です。

女の子は、とある理由から「虐待を受けた」と友達に嘘をつきました。年ごとの女の子なら、親に反抗したかったり、友達をびっくりさせるような冗談を言ってみたりするものです。

ところがその嘘が一人歩きし、児相によって一時保護され、いくら「嘘だった」と言っても認めてもらえず、大事な高校受験期を母親から引き離されて過ごし、中学校の卒業式にも出られなくなってしまいました。

刑務所のような一時保護所

一時保護の説明も一切ありませんでした。
「お母さんは?」と尋ねても児相の人は、何も答えず、服のサイズを聞かれました。「家に帰りたい」と言うと、「ここに来たらしばらくは帰れない」との言葉が返っきました。

私は、泣き叫びました。心の中は、怒りや悲しみでぐちゃぐちゃでした。「虐待されたと言ったのは嘘です!」とも言いましたが、流されてしまいました。
児相の人は「そんなに泣きたいなら、ここで泣いてろ!」と、だれもいない部屋に私を押し込みました。その日から、6ヶ月におよぶ一時保護所での強制生活が始まりました。

子どもたちはみんな、刑務所にいる囚人のような扱いでした。
日誌を書き終わると、一切の私語は禁止。食事中や歯みがき中などの私語も禁じられていました。
いちばん怖かったのは「お一人様」という罰です。ルールを破ると、話したり遊んだりすることを禁止され、自由時間を一人で過ごす「お一人様」を命じられました。その罰を受けている子に話しかけると、その子も「お一人様」の罰を受けることになるため、「お一人様」の子が、周囲に話しかけると「話しかけないで!」と冷たくされます。
「お一人様」は、短くて3日、長いときには一月も続きます。私はいつも「お一人様」におびえていました。

初日から寝る前に飲まされていた薬も嫌でした。翌日、必ず気持ち悪くなるからです。でも、「飲みたくない」と言っも、「決まりだから飲んで。止めるには、保健師さんに聞かないといけないけど、今はいないから」と、強制的に飲まされました。(続く…

カウンセリングルーム カウンセリングルーム カウンセリングルーム