2014年05月の一覧

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2014年05月19日

遺族を訴訟に追い込んだ大川小学校事故検証委員会(3)

 
 検証の方法も、とうてい理解できるものではありませんでした。

 わかりやすい例を挙げましょう。たとえば、検証内容の振り分け方です。
 検証委員会には六名の委員のほか、四人の調査委員がいます。その中には、弁護士や学者などさまざまな専門家が入っているのですが、当日の津波について検証したのは、津波工学の権威とされる委員ではなく、心理学者である調査委員でした。

 それだけでもびっくりですが、さらに続きがあります。

 この調査委員は、7月に出された中間とりまとめ(検証の中間報告)のとき、「学校への津波到達時刻は3時32分」と、それまでの通説だった「3時37分よりも早い」との見解を示し、みんなを驚かせました。
 そして、遺族やマスコミ関係者らから、科学的根拠を示すよう求められ、疑問を投げかけられると、あっさりと新見解を引っ込めたのです。

無駄な時間を費やした検証

 ちなみに、検証委員会の最終報告では、津波到達時刻は「37分頃」と明記されています。

 他方で、津波工学の専門家である委員がPTSDについて熱弁をふるい、子どもへの聞き取りに難色を示したこともありました。

 どうして心理学の専門家が津波について調査をし、津波工学の専門家が心の傷について語るのか・・・。まったく理解できません。

 あげくの果てに、まるで思いつきのような検証結果を示し、その真偽を確かめることに時間を費やすなど、絶対にやってはいけないことです。

生き証人の検証を軽んじた

 そもそも遺族は、当初から「津波の検証は不要」と言っていました。

 なぜなら遺族が知りたいのは、「裏山や運転手の乗ったバスなど、十分に逃げられるだけの客観的条件がそろっていて、教師が一緒にいながら、なぜ子どもを救えなかったのか」というただ一点だけだからです。

 それにもかかわらず、検証委は、その問題の核心からほど遠いことばかり、熱心に検証を続けました。
 津波の挙動や天候など、核心ではない、事件の周辺の検証に力を入れ、最も肝心な生き証人の検証を軽んじたのです。
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2014年05月26日

遺族を訴訟に追い込んだ大川小学校事故検証委員会(4)

 何しろ検証委員会は、せっかく集めた証言までも「プライバシー保護」を盾に、どんな立場の、どんな人物が証言したものかをぼやかしてしまいました。

 そして、相反する証言をただ並べ立て、羅列しました。
「山への避難を訴えたり、泣き出したり、嘔吐する子どもがいた」と書いたと思えば、その一方で「遊び始めたり、ゲームや漫画など日常的な会話をしていた」と記すなどして、検証という行為を放棄しました。

 こうして検証委員会は、何一つ新しい事実を提示できなかっただけでなく、遺族の方々が事故直後から集め続け、積み上げてきていた事実を曖昧にしてしまいました。

 そうして「津波予想浸水域に入っていなかったから危機意識が薄かった」「裏山は危険で登れないと思っていた」など、「子どもたちが命を落としたのは仕方なかった」と言わんばかりの最終報告をまとめたのです。

震災後の大川小学校校舎

 遺族の方々は、「学校にいるから、先生と一緒にいるんだから、絶対に大丈夫と信じていた」と口をそろえます。

 私がお会いした遺族の方々も、「大きな揺れの後、時計を見たら、まだ学校にいる時間だったから『ああ、うちの子は大丈夫』と、まるで心配しなかった」「先生がちゃんと避難させてくれているはずだから、明日になれば必ず会えると信じていた」と、語っておられました。

 そうした胸を打つ数々のご意見のなかでも、ひときわ私の心に響いた発言がありました。小学校6年生の長男を亡くし、検証委員会をずっと傍聴し続けてきたお母さんが語った言葉です。

「『たったひとつだけでも、先生が子どもたちを守るためにしてくれたことがあれば』と、検証の行方を見守って来ました。でも、検証を重ねて分かったのは、助けるどころか、逃げようとした子までその場に止めていたということでした」

保護者の切なる願い

 子どもを亡くし、市の教育委員会からは不誠実極まりない対応を受け、核心に迫ろうとしない検証委員会・・・。それらと対峙するだけでも、計り知れないほど辛い思いをされてきたことでしょう。

 でも、それでも、「どうにかして先生を信用したい」「『先生もあなたを守るためにがんばってくれたんだよ』と子どもに伝えたいと」という切なる願いが、このお母さんの言葉から、ほとばしるように感じられました。
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