2013年10月の一覧

« 2013年09月 | メイン | 2013年11月 »

2013年10月02日

搾取される子どもたち(4)

 だから、「ブラックバイトと思っていない学生が少なくない。まず、認識をさせないと、相談に乗れないし、抗議もできない」と大内裕和中京大学教授(『東京新聞』2013年9月5日)が指摘するような問題も起こります。

『搾取される子どもたち(2)』でご紹介した「バイト中の事故で店長がポケットマネーから3000円をくれた」と話してくれた学生も、「自分がかってに事故に遭ったのに、3000円くれた店長はいい人だと思う」と語り、私をビックリさせました。

 本来であれば、バイト中の事故の保障がまったくされないことはもちろん、店長がポケットマネーから口止め料とも言える見舞金を払うことも大問題のはずです。

 それでも本人が「おかしい」と思わなければ、問題視されることはありません。

まるで階級社会

 まるで昔の身分制度による階級社会のようです。

 かつて世界中に、王侯貴族などの身分の高い者たちが自分たちの都合や気分で、自分よりも身分の低い者の身体生命を脅かし、傷つけ、侮辱した時代がありましたが、身分の低い者は「しょうがないこと」と甘んじて受け入れていました。

 このように書くと「オーバーだ」と思う人もいるかもしれません。「なんだかんだ言っても、日本の若者たちは自分で仕事を選んでいる」「本当に嫌だったら辞めるという選択肢だって残されている」と、おっしゃる方もいるかもしれません。

「労働の搾取」

 確かに、日本の若者たちの働き方は、人身売買でどこかから子どもを連れて来て働かせる強制労働や、昭和の時代に一大ブームを巻き起こし、最近も映画化された『おしん』に描かれた世界とは違うかもしれません。

 しかし、理不尽な働き方も受け入れざるを得ない環境に置かれ、自らをすり減らしてまで、その身や能力を力在るものに捧げて生きていく道を強いられていることは共通しています。

 強制労働を強いられる子どものように「逃げたら殺されるかもしれない」環境におかれてはいなくても、日本の若者たちは「逃げたら生き延びるのは難しい」環境におかれています。

 これを「労働の搾取」と呼ばずしてなんと呼んだらいいのでしょうか。

[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ]↑ページ上端へ

2013年10月15日

搾取される子どもたち(5)

 今後も「労働の搾取」は、さらに進んでいくでしょう。

 何しろ先日、安倍首相率いる現政府は、企業が従業員を解雇しやすい「特区」をつくる検討に入ったとの報道がありました(『朝日新聞』2013年9月20日)。
 
 特区では、労働時間を規制せず、どれだけ休日に働いても、深夜まで残業しても賃金を派割らないことも認め、契約社員などが5年を超えて同じ職場で働いても無期契約で働くこともできなくし、ベンチャー企業や海外企業を呼び込むのだそうです。

ますますブラック企業がのさばる?

 同記事には、特区が実現した際に起こるであろう、こんな例が載っていました。

「例えば、『遅刻をすれば解雇』といった条件で契約し、実際に遅刻をすると解雇できる。立場の弱い働き手が、不利な条件を受け入れ、解雇されやすくなりかねない」

 さらに、ほんの少しだけ過去を振り返ってみれば、今年3月には、政府の産業競争力会議が正社員の解雇をしやすくなる規制緩和について話合っていることが話題になりました。
 
 それらが現実のものとなれば、ますます、ブラック企業はのさばります。若者たちは自分を売り渡し、企業の言うなりになって働くしかなくなってしまいます。

虐待の危険性も跳ね上げる

 仕事を失わないために無理な働き方を強いられる、普通に働いていても安定して暮らすだけの収入が得られない社会は、子育て世代・親世代にとっても有害です。

 不安やストレスの高まりは、子どもを虐待してしまう危険性を跳ね上げるからです。

 以前もこのブログで紹介した研究結果を思い出してください。
 
 イギリスとアメリカで編集された60以上の研究報告書をもとにした虐待の世代間連鎖の発生率研究では、普段は問題のない親も精神的ストレスが高まるとその三分の一が虐待者になるという結果を出しているのです(『いやされない傷 児童虐待と傷ついていく脳』/Martin H Teicher監修・友田明美著/診断と治療社)。

[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ]↑ページ上端へ

2013年10月24日

搾取される子どもたち(6)

 事実、虐待の相談数も、摘発数も増えています。

 全国の警察が昨年1年間に摘発した児童虐待事件は前年比22.9%増の472件、被害にあった子どもは前年比19.6%増の476人で、いずれも統計のある1999年以降、最多でした(『日経新聞』2013年7月14日)。

 摘発された加害者353人の64%は「実の親」(実父143人、実母83人)で、死亡したケースに限ると加害者28人のうち実母が21人にも上っています。

「子どもの命の搾取」

 また、今年4月、横浜市磯子区の雑木林で実母とそのパートナーの男性に虐待死させられた女の子の遺体が見つかった事件が世間を騒がせましたが、こうした虐待死は年間100人ほど起きています。

 2013年9月4日付『朝日新聞』に「虐待死防止 課題は連携」という記事がありましたが、2011年度の虐待死(心中含む)は99人にもなるそうです。雑木林で見つかった女の子もそうでしたが、児童相談所や市町村が関わっていながらも救えなかった事例も多かったとのこと。

 親が安定的な仕事について、生活を楽しみ、しっかりと子どもに目を向け、安心して子育てをすることができない大ストレス社会になっている日本では、こうして「子どもの命の搾取」も増えています。

体罰も増加?

 子どもの身体・生命が脅かされているのは、家庭だけではありません。

 昨年12月、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部主将の男子生徒が、顧問の男性教諭(元教諭)から体罰を受けた翌日に自殺した事件がありました。

 その後、文部科学省は体罰の実態調査を行い、今年8月に発表しました。それによると、全国の小中高などで体罰を行ったとされる教師は6721人で、前年度調査404人の17倍にも上りました。

 もちろん、この数字を受けて「体罰が増えている」と言うつもりはありません。
 大きく報道された事件の後ですから、従来ならばカウントされなかったり、見過ごされたり、隠されたりしていたものまでが「体罰」と認定された可能性はあります。

逆に言えば、今回の数字の方が、今まで伏せられてきた実態に近いと考えることもできるかもしれません。

[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ]↑ページ上端へ