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子どもが、真に自分を大切にし、自分らしく生きながら、他人のためにもエネルギーを注ぐことができるような人間へと成長・発達するためには、身近なおとなに無条件で愛される必要があります。

たとえ市場価値に合わない“ダメな子”でも、「そのままでいいんだ」と抱えられ、受け入れてもらう必要があります。

なぜなら、そうしたおとなとの関わりを持てなければ、「自分はそのままで価値がある」という自己肯定感や「世の中は自分を受け入れてくれている」という基本的信頼感、「自分の痛みに共感してもらった」という共感能力は決して発達しないからです。

これらの感覚や能力は、道徳教育や法律をつくることで、外から埋め込めるものでは決してありません。

本当にいじめを無くしたいなら

本当にいじめを無くしたいなら、「驚くべき数の子どもが、情緒的・心理的充足感(well-being)を持てずにおり、その決定的要因が子どもと親および教師(おとな)との関係の貧困さにある」と述べ、さらには「知的な人材教育偏重を改め、人間として成長発達出来るような教育制度とのバランスを取れ」と言う国連の勧告(2010年)を重く受け止めるべきです。

そして、身近なおとなが、目の前にいる子ども一人ひとりと真摯に向きあうことができるようによう、あらゆる仕組みを変えていくべきです。

こうした視点を持たない、いじめ防止対策推進法。そんな法律が、いじめの延長線上にあるスクールカーストが状態化した子どもたちの現状を救うことなどできないことは明らかです。

「子どもの搾取」と言うと、ふつうは発展途上国に多い子どもに労働や売春を強いたり、子どもを人身売買の対象にするなどの行為を思い浮かべます。

しかし、最近の日本国内での統計や調査結果、新聞記事などを見ていると、「この国は、子どもの人生を搾取して、グローバル競争時代を生き残ろうとしている」と思いたくなってしまうことが多々あります。


増える就活自殺

たとえば2013年5月13日付の『毎日新聞』には、就職活動がうまくいかないことを苦にした就活自殺や「進路に関する悩み」が原因の自殺が増えているという記事がありました。

同記事によると、遺書などから就活の失敗が原因とみられる大学生の自殺者数は、警察庁が詳しい自殺原因の公表を始めた2007年の13人から、2010年が46人、2011年が41人と約3倍。「進路に関する悩み」の自殺も2010年は73人、2011年には83人にもなるそうです。

連日、エントリーシートを書いては面接を受けまくる就活が学生に与える精神的負担は図り知れません。自殺にまでは至らなくても、何十、何百という会社から突きつけられた「不採用」によって自己否定感が強くなったり、引きこもってしまうこともあります。

厳しい就職事情

背景には、依然、厳しい大学卒業者の就職事情があります。

2007年のリーマンショック以降、企業は解雇しにくい正社員の厳選採用を続け、非正規雇用者が増加しています。

新卒で大学を卒業した者も、例外ではありません。

今春の大学卒業者のうち、「安定的な雇用に就いていない者」は約11万6000人(文部科学省学校基本調査速報値)です。昨年より約1万3000人減少したとはいえ、5人にひとりが不安定雇用という計算になります。(続く…

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せっかく就職できても、賃金未払いや過度のノルマ、長時間のサービス残業を課しておいて社員を使い捨てにするブラック企業の餌食にされることもあります。

いまやこのブラック企業の問題が、昨今はアルバイトにまで広がっています。

前回も書いたように、解雇しにくい正社員の採用を控える企業では、アルバイトなどの非正規労働者が大幅に増え、店長や現場責任者など職場で中核的な役割を担う役職まで、アルバイトが担うようになったためです。

ブラックバイトの実態

『東京新聞』(2013年9月5日)には、サービス残業があたりまえの学習塾や、就職活動のために休んだら理由も無く時給を下げられた飲食店などの事例が載っていました。

学習塾講師は、時給が高いイメージがありますが、親子面談や会議への出席も強要しながら給料は授業をした分の時間給のみで、拘束時間で計算すると最低賃金を下回るケースもあったそうです(同記事)。

私も、ある女子大生から「バイトしている飲食店は“おさわり”し放題。平気で胸をもんだりお尻を触ったりしてくる客がいるが、店長は見て見ぬ振り」とか、男子大学生から「バイト中の事故で全治数ヶ月のケガを負ったが、もらったのは店長のポケットマネーから出た3000円のみ」との話を聞いたこともあります。

学生の厳しい生活環境

「たかがバイトなんだから、嫌なら辞めればいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、そうもいきません。

最近の学生のふところ事情はとても厳しいのです。親の収入が減り、仕送りが下がる中で、学費や生活費を自分で捻出している学生も少なくありません。

私も、いくつものバイトをかけ持ちしている学生や、2万円弱のアパートで暮らしている学生、ルームシェアでどうにかやっている学生などを知っています。必死で働かなければ学生生活を続けられない現実が、そこにはあります。

そのうえ最近は、非正規労働者の椅子も奪い合いです。辞めてしまったら、次の仕事を見つけるのはとても困難です。(続く…

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『東京新聞』(2013年9月5日)には、こうしたブラック企業を増長させてしまう要因ともなっている、学生側のマインドについても次のような指摘がありました。

「簡単に辞めるようでは社会人として成功できないと考える学生も目立つ。激化する就職戦線に備え、バイトの職場をインターン先や修行の場と考えている」(甲南大学の阿部真大准教授・労働社会学)。
「企業の人事担当者の目を引く内容にするには他の人と違う経験がある方がいい。理不尽な苦労も面接用の応募資料に書き込める物語になると考え、我慢をする学生もいる」(日本大学の安藤至大准教授・労働経済学)。

確かに最近の高校生や大学生と話していると、「困難から逃げるのは良くないこと」「いったん何かをはじめたら途中で止めるのは負け犬」などの考えが極端に強いように感じます。

成果主義社会の影響?

よく言えばポジティブ。悪く言えば自分自身に無頓着というのでしょうか。

周囲の視線にはとても敏感なのに、自分が思っていること、感じていることをキャッチすることが下手です。だから自分の気持ちまでをどこかに押しやって、「まだ大丈夫」「逃げてはいけない」と自分を縛り、心や体を壊してしまうまで、頑張ってしまうのです。

「競争の中で自己決定をして、その責任は自分で引き受けなければいけない」と言う、成果主義の社会の影響を受けすぎていて、「自分を大切にすることは正当なこと」とは思えないのでしょう。

染みついた自己責任

幼い頃から競争の中で生き残ることを強いられてきたのですから、無理もありません。
日々、ひしひしと周囲から伝わってくる「成果を上げた者だけが価値ある者」という考えが骨の髄まで身についてしまい、「成果を上げられなければ不遇な目に遭っても仕方が無い」と自分で責任を引き受けてしまいます。

「ダメなヤツ」という烙印を押されたとしても、「そこから這い上がるか、そのままでいるのかは自分の能力次第」と考える癖が付きすぎてしまって、烙印を押した相手に「失礼なヤツだ!」と、怒ることさえできなくなっているように感じます。(続く…

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