2009年11月の一覧

« 2009年10月 | メイン | 2009年12月 »

2009年11月06日

感情はもううざいいし要らない(8)

 こうした親に「母性がない」「母親失格」というレッテルを貼り、自己責任として切り捨てているのが今の社会です。

 自己責任することで私たちは、「自分の親が、けして無条件に愛してくれたわけではない」という辛い事実から目を反らし、自らの親と同じように子どもを支配しながら、家族幻想の中で生きていくことができます。

 また、社会全体で考えればどうでしょう。
 
 子育てという大変な仕事を「母親の仕事」にし、社会が望む人材育成の担い手という役割を女性に押しつけることができます。
 さらに言えば、「子育て優先」という、反論しにくい理由をつけて、安い労働力としての女性を確保し続けるというメリットがあるのではないでしょうか。

===
問題解決に向けて

 でも、それでは悲惨な子どもたちの状況は絶対に解決しません。

 なぜ現実的な判断ができないほどにまで親が追い込まれているのか。他の子と同じように成長しない我が子にいらだちを覚えるのか。困っていても外に助けを求められないのか。・・・そうした原因をきちんと取り除いていくという姿勢がなければ事態は改善しないでしょう。

 親たちの周りには、リストラ、無理な働き方、孤立、“よい子”育てのプレッシャーや子どもの将来への不安など、多くの不安定要素が渦巻いています。社会が競争的になればなるほど、子育ても、教育も「自己責任」という声が強まります。
 
 何でも自分の力でやっていかなければならない社会で、子育てのすべてを引き受けなければならないとしたら、子どもに受容的で応答的な関係を提供することなどできようはずもありません。

悲劇を繰り返さないために

 子どもたちをめぐる悲劇を繰り返さないためには、社会全体が変わっていかなければなりません。
 
 いつまでも労働力確保のための少子化対策や、子どもを経済発展に役立つ“人材”としてとらえた教育施策、経済界の発展を念頭に置いた雇用対策、根本的な格差解消につながらない子ども手当などをしていてはダメなのです。
 
 財産や学歴、能力などの「ある」「なし」などで、大きく生活に格差が生じるようなことがなく、だれでも安心して弱音を吐き、愚痴を言い、困ったときにはだれかに頼れるような社会に転換すできれば、子どもの思いや願いを受け止められる親が増えていくことは想像に難くありません。

 そんな親が増えれば「感情はもううざいし要らない」とつぶやき、あきらめ、つぶれていく子どもも、必ず減っていくのです。

(終わり)

[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ]↑ページ上端へ

2009年11月17日

「子どもの貧困」の何が問題か(1)

「子どもの貧困」という言葉を目にすることが多くなりました。

 新聞やニュース番組などでも、「学費を払うためだけでなく、家計を助けるためにアルバイトをせざるを得ない高校生」や「健康保険が無いため、病院に行かず、保健室に繰り返し訪れる小中学生」などの姿がリアルに報道されています。

 子どもが貧困であるということは、つまりその子どもが暮らす家庭(世帯)が貧困ラインにあるということ。

 ちなみに、経済協力開発機構(OECD)のデータが採用している日本の貧困ラインは、親子二人世帯では年収195万円以下、親二人子一人世帯では239万円だそうです(『子どもの最貧国・日本 ーー学力・身心・社会におよぶ諸影響』山野良一/光文社新書)。

 10月20日に厚生労働省が公表した相対的貧困率によると、今や国民の七人に一人が「貧困状態」で、OECDの最新統計に当てはめると、なんと上から四番目だそう。
 しかも、他の国に比べて「貧困層全体に占める働く人の割合」が八割以上と、高くなっているのが特徴です(『東京新聞』2009年10月21日付け)。

===
困窮するシングルマザーの家庭

 とくに厳しい状況にさらされているのがひとり親家庭。
 2005年のOECD調査によると、主要先進国の中で日本のひとり親家庭の貧困率の高さは第1位。OECD全体で見てもトルコに次ぐ2位になっています。

 ひとり親家庭の中でも、とりわけ生活が厳しいと言われているのがシングルマザーの家庭です。 
 国連「子どもの権利委員会」に日本の子どもをめぐる現状を伝えるために「第3回子どもの権利条約 市民・NGO報告書をつくる会」が全国から集めた基礎報告書には、ダブルワーク、トリプルワークで働いて生活を支えざるを得ないシングルマザーの状況が克明に描かれています。

働いても楽にならない国・日本

 ちょっと蛇足になりますが、ひとり親家庭について補足をしたいと思います。

 前述した山野氏の著書によると、OECD全体の「働くひとり親家庭」と「働いていないひとり親家庭」の貧困率は、前者が20.6%で後者が58%。つまり、OECD諸国では働くことによって貧困から抜け出せる可能性が高くなることが示されています。

 一方、日本はどうかというと、まったく逆。冒頭に記した厚生労働省調査と同じ事実が示されています。データからは「日本は働いても暮らしが楽にならない」国であることが読み取れます。

----------------------------------------------

0902cover_l.jpg☆最新刊

アディクションと家族26巻2号
【特集】「貧困」問題と共依存社会

詳細、ご購入

[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ]↑ページ上端へ

2009年11月27日

「子どもの貧困」の何が問題か(2)

 前回書いたような「子どもの貧困」をもたらす要因のひとつに、90年代後半からの非正規雇用者の増加が挙げられます。
 
 90年代には20.0%だった非正規雇用者が2008年には33.9%にもなっているのです。
 とくに、これから子どもを育てたり、今、子育てをしている世代に当たる20〜30代男性の割合が増えていて、24歳未満の若年労働者では48%前後。10代後半の非正規雇用率は約7割との報告もあります(2008年版『青少年白書』)。
 
 非正規雇用者の場合、年収は300万円未満が多く、生涯賃金にすると正社員とは2.5倍もの格差が生じるそうですから、その影響は深刻です(『経済財政白書』2009年)。

 高度成長期以降、2%台という低水準を維持してきた失業率も、90年代以降は5%台まで上昇しています。

 雇用環境の悪化を受け、生活保護受給世帯も増えました。98年度には66.3万世帯でしたが、2009年4月現在では120.4万世帯にもなりました。

===
高い教育費

 しかも日本の場合、子どもの教育にびっくりするほどのお金がかかります。 

 大学を卒業するまでの基本的養育費と教育費合計は「並コース」でも子ども1人に2985万円、「最もかかるコース」だと6064万円がかかります。しかも、そこには学習塾費用の約200万円は入っていません。

 文部科学省の「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査」によると、「学習塾がよいが過熱している」と考える親は6割にも上るのに、子どもが公立の小中学校に通っている家庭の学習塾等にかける補助学習費は、毎年過去最高額を更新しています(文部科学省「子どもの学習費調査」)。

 前回紹介した国連「子どもの権利委員会」への市民・NGO報告書には、高く鳴り続ける学費への不安を訴える声が小さい子どもがいる家庭から寄せられています。他方、大学生がいる家庭では預貯金や退職金を切り崩すだけでは足りず、借金をして学費を工面しているという報告もあがってきています。

 こうした家庭の中には「経済的に困窮していることを周囲に知られたくない」と、夜中に母親がこっそりパートに出ては学習塾代を稼いでいるケースもあるということでした。

専門家の指摘

 おおまかに言えば、このような社会状況が前回のブログの冒頭で紹介したような状況に子どもたちを追い込み、子どもの「貧困」を生み、教育格差を生じさせ、人生のスタート地点における不平等をまねき、子どもたちが成人した後にも取り返せない格差の固定化が起こると、多くの専門家は指摘しています。

[←ブログメインに戻る][←IFFトップページへ]↑ページ上端へ