2007年08月の一覧

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2007年08月06日

学力テスト不正問題

 耐震構造偽造問題や食肉偽装事件など、生活の根幹に関わる不正事件が相次ぐなか、今度は東京都足立区で、区が独自に行なってきた学力テストの不正が話題になっています。

 ある小学枝で、あまり成績のよくない特定の子どもの答案を集計から外したり、過去のテスト問題を練習問題として繰り返し行なったり、テスト中に子どもが間違っているところを指差しで教えたりしてきていたことが明らかになったのです。

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 学力テストに反対する教育関係者たちが指摘してきた通りです。
 一斉に学力テストをやり、その結果を公表するようになれば必ず、こうした不正が起こり、かえって正しい学力が測れなくなってしまう可能性が高まります。

学校の“頑張り度”をどう測る?

 足立区は、東京都品川区と並んで都内でも突出した教育「改革」が進む地域です。96年から実質的な学校選択性が導入され、すべての小中学校の学力テスト結果を公表しています。
 中学校の人気は、学力テスト結果が上位10校に入っている学校に集中し、「選ばれる学校」と「選ばれない学校」が固定化し、学校間や子ども間の格差も固定化しています。

 さらに本年度からは、トップダウンの強力なリーダーシップを発揮する教育長の下、学力テスト結果の伸び率に応じて各学校への特別予算に差をつけるという取り組みも始まりました。
「頑張った学校とそうでない学校に差をつけるのは当たり前」というのが教育長の考えです。

 ではいったいどうやって“頑張り度”をはかるのでしょうか? 足立区に勤務していた教諭は言います。

 「区は『頑張った学校を評価するのは当然』と言うけれど、教育の“頑張り度”がテストの得点で図れるのでしょうか。点数が低くても頑張っている子はいるし、下位校にも子どもが『この先生が一番好き』と慕う教師はいます。
 教師の“頑張り度”とは、子どもとそうした信頼関係が築けるかどうかではないでしょうか。
 家庭だって同じです。生活のために働き詰めで子どもの教育どころではない家庭の保護者を『頑張っていない』と言えますか?」

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2007年08月13日

学力テスト不正問題(2)

 全体的に見ると、足立区の上位校と下位校の間で保護者の所得格差も顕著になってきています。
 生活保護家庭と同程度の所得水準の家庭に給食費や学用品の一部を援助する就学援助制度を受けている家庭の割合が、上位校と下位校ではぜんぜん違うのです。上位校の就学援助率は20%台ですが、下位校では75%を超えている学校もあります。

 上位校には、教育熱心で教育のためにお金や時間を多く費やすことができる保護者の子どもが集まりやすくなっています。
 一方、下位校には生活が厳しく、片親家庭で昼夜問わずパートタイムなどで働きながらようやく生計を立てている保護者の子どもも少なくありません。
 こうした家庭では、子どもの教育や進学のことにまで気を配ることが難しかったりします。
 
 こうしたなか、下位校に入っている中学校では養護学校や定時制高校を第一志望にする子どもたちも出てきました。
 私学援助も削られるなかで、公立一本で勝負しなければ進学できない子どもが増えてきたからです。

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障害者手帳取得に奔走する親

 保護者のなかには、
「今の社会でうちの子どもが食べていくには障害者手帳を手に入れなければ難しい」
 と、障害者手帳を取るために奔走するケースもあるそうです。

 もちろん、障害者手帳を取ることは正当な権利です。いろいろな事情で社会生活を営むことが難しい人が、社会的な保障を受けられるのは当たり前の話です。

 でも、一昔前には「少し勉強が不得意な子」であったり「みんなと同じに振舞うことが苦手な子」であったりした子ども・・・つまり普通高校に進学できた子どもが、「障害者手帳がなければ生きていけない」と考えざるを得ないようになってきていることは、そのまま素通りしていい話なのでしょうか?

 障害者手帳を取ろうとやっきになっていた保護者の子どもを担任していた教諭は、その子どもについてこう話していました。

 「確かに、できる教科に偏りがあったり、こだわりが強すぎたり、生活習慣が身につかないところがある子どもでした。でも、少し前までなら十分、普通校でやっていけたと思います」

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2007年08月20日

学力テスト不正問題(3)

あきらめる子どもたち

image070820.jpg「下位校の子どもを見ていると『どれだけ早いうちに諦めるか』という感じです。
 親は生活に手一杯。教師も、現場の状況を無視した区の教育『改革』に振り回されて子どもを見る余裕がありません。
 親身にかかわってくれるおとなに出会うことができず、『支えられて最後までやり遂げた』とか『頑張って何かに取り組んでほめられた』などの経験を持てない子どもが増えました」(足立区の中学校教諭)

 こうした子どもたちの多くは、小学校段階で「自分は駄目だ」と諦めているといいます。成功体験を持つことができなかったからです。
「小学校時代の勉強までさかのぼって教えようとしても『もういい』と、やる気になれない子も多い」(足立区の中学校教諭)そうです。

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 それだけでなく、中学生になったころには「進学校に行く子と自分は住む世界が違う」と格差の壁をしっかりと意識してしまっていることも少なくありません。
 授業中に立ち歩いたり、騒いだりしてしまうのは、こうした子どもたちが多いそう。どうしようもないやるせなさを隠すため、つい“はしゃいで”しまうのです。

校長や教師へのプレッシャー

 学力テストをすれば、絶対に学校は序列化されます。必ず一位になる学校はあるし、逆に最下位になるところも出てきます。
 一位になれば「このまま頑張れ」、二位だと「もっと頑張って一位を目指せ」、下位なら「とにかく少しでも上に」と言われます。「これで十分」という終わりがないのです。

 しかも、その“頑張り度”が学校の予算や評価に反映されるのです。校長や教師たちが受けるプレッシャーはどれほど大きくなるでしょう。

 そのうえ、学校選択制も実施されています。「できることなら下位校ではなく上位校に通わせたい」と思う保護者が増え、学校によって生徒の数や学力に偏りが出るのは必然です。
 足立区に住む小学生の母親は言います。

「予算に差がつくのは反対だし、頭では『テストの順位なんてあてにならない』『いろんなタイプの子どもと交わった方が子どものためになる』と分かっています。でも、なんとなく下位校には問題児が多い気がして避けたくなってしまう。『どうせ選ぶのならなるべくリスクは減らしたい』と思ってしまうんです。多くの人に選ばれる中学校を選んでおいた方が安心な気がして・・・」

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2007年08月27日

学力テスト不正問題(4)

 実は、この母親の子どもが通う小学校の学力テスト成績はあまり良いほうではありません。そのせいか他校の保護者や教師から「授業も成り立たない困難校に違いない」と誤解されることも多いそうです。
 でも、中身はまるで逆。子どもと教師の関係はわりと良く、学級崩壊などもありません。行事が多く、子どもたちも楽しそうに通っています。

「でも最近、校長先生が『学力向上』とよく言うようになって学校の雰囲気が変わって来ました。校長先生は行事を削ってプレテストの時間を確保したいんだと思います。上位校の親に聞くと、その学校は毎月のようにプレテストをして学力テストに備えていると言います。テストでいい点数を取るためには“テスト慣れ”も大事。行事や授業を削ってテスト対策をすれば点数は上がるでしょうね」(母親)

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「選ばれる学校」であり続けるために

 蛇足かもしれませんが、いわゆる上位の中学校に子どもが通っている足立区在住の母親の話も紹介しておきましょう。

「学校の雰囲気はけして良くはありません。落ち着かない子が多く授業が成り立たない時があったり、男子の間ではイジメが日常化しています。子どもたちは仲間をつくるとか、つながりを大事にするという意識が希薄。教師のなかには、子ども同士がトラブルを起こしてもかかわろうとしない人もいます」

 こちらの母親の子どもは上位校のなかでも成績優秀。そのため、いつも教師に「この調子で頑張れ」と言われています。そのため、学力テスト前には「成績が下がったらどうしよう」とかなりのプレッシャーを感じているようだと話していました。

 統廃合されない「選ばれる学校」であり続けるためには、子どもの気持ちなど考えてはいられないのです。

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