トラウマ(3/5トラウマ反応とは(2))

この他にも、感情の変化や対人関係の変化、トラウマ反応によって引き起こされる一般的な精神疾患などがあります(表2)。

先に述べたPTSD、ASDの主な特徴は、表2にあるように、本人の意思とは無関係にトラウマ記憶がよみがえる「侵入」とその結果として生じる、気持ちが張り詰めた状態である「過覚醒」。一方で自ら体験したトラウマ体験が、あたかも自分の身に起こったことではないかのように振る舞い、その記憶や実感が乏しくなる「麻痺」といったものがあげられます。

感情の変化としては、抑うつ、悲哀、怒り、焦り、不安、無力感などが引き起こされ、その結果生じる身体症状も主な特徴です。

これら感情の変化に伴い問題となってくるのは、基本的信頼関係を維持することの困難です。

トラウマイメージ
「自分のつらさなんてどうせ誰にもわかってもらえない」
「自分が弱いから苦しめられているんだ」

などといった考えに捉われることで、他者とのつながりが不安定になり、更に上述の感情の変化が繰り返しトラウマ被害者のこころを傷つけていきます。

先に述べた感情の変化は、対人関係における孤独感を強化し、ますますトラウマ反応を引き起こしやすくなります。また、周囲の人の不適切な関わりによって二次的トラウマを誘発する恐れもあり、トラウマを受けた本人のみならず、周囲の人のトラウマの正しい理解が求められるところです。

表2 トラウマ体験への多様な心理的な反応

種類 内容 影響 結果
PTSD症状 侵入、過覚醒、麻痺 短期間で自然に軽快する場合もあるが、一部は慢性化。また、潜伏期間を経て発症することもある。 ASD、PTSD
感情の変化 抑うつ、悲哀、怒り、焦り、無力感
不安の身体症状として不眠、食欲低下、動悸、ふるえ、発汗、呼吸困難、しびれ
行動の一貫性のなさ
対人関係への感情の投影
必要な治療、支援の拒否
自傷行為
援助者への怒りの転移
スケーブゴート探し
慢性的な悲嘆反応
人格障害との誤認
対人関係の障害
対人関係の変化 社会と自分への信頼の喪失
体験の意味づけの困難
生活基盤の破壊による生活範囲の狭まり(一部は感情反応の影響による)
職業への支障
交友関係の減少
経済的困難の増大
家族葛藤の増幅
引きこもり
社会的不適応
付)一般的な精神疾患※ 気分障害(うつ病など)、不安性障害、短期精神病性障害、転換性障害、妄想反応
既往の精神疾患の再発または治療中断による悪化
アルコール類の不足による依存症患者の離脱症状など

※一般的な精神疾患については、トラウマ反応それ自体ではないが、トラウマ状況をきっかけとして生じ得るということである。

(厚生労働省精神・神経疾患研究委託費外傷ストレス関連障害の病態と治療ガイドラインに関する研究班 編 心的トラウマの理解とケア、じほう、2001年)

ところで、表2で示されているトラウマ反応は、いってみれば「異常な状況に対する正常な反応」です。

赤ちゃん誰もがトラウマ場面に遭遇すれば人間の正常な反応としてトラウマ反応が起こります。そしてトラウマ反応の程度は、トラウマの内容やトラウマを受けた人の年齢や遺伝的・人格的素因、周囲のかかわり方によって変わってきます。

また、これは遺伝的・人格的素因と区別するのが難しいのですが、精神発達の初期にトラウマに遭遇していたかどうかが、その後のトラウマ場面でのトラウマ反応の程度に影響してきます。特に子ども時代に受けたトラウマは強い後遺症を残します。

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