
最近、「ひきこもり」が社会的に注目されています。
厚生労働省の委託調査結果によれば、ひきこもりの子を持つ家庭は、全国で約41万世帯にのぼり*、今やどこの家庭にも起こりうる決して珍しくはない状態であるとさえ言えます。
*:平成14年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業) 心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究 総括研究報告書「心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究」(主任研究者 川上憲人(岡山大学大学院医歯学総合研究科 教授)) より
現在の「ひきこもり」の増加は、10代・20代の「不登校」からの流れの他に、フリーターの増加なども一因であると考えられます。実際、ひきこもっている人の中には、既に30代以上、それどころか50代以上の方も珍しくありません。
また、この10年弱で「ひきこもり」という言葉が社会的に認知されるにつれ、今まで社会的に認知されなかった人たちに対しても光が当てられるようになり、その人数が増加していると思われます。
厚生労働省による「ひきこもり」の定義は
「6カ月以上自宅に引きこもって社会参加しない状態が持続しており、統合失調症などの精神的疾患が原因の場合を除いたケース」
となっています。
ここで示されているように、ひきこもりの原因が統合失調症などの精神疾患かどうかをきちんと見分けることは大切なことです。というのも、精神疾患がないひきこもりであっても、一切の他者・外部とのコミュニケーションを断つことにより、妄想のような様々な精神疾患のような状態像を示すことも多々あるからです。
他にうつ病、強迫性障害、パニック障害などがある場合、または、軽度の知的障害や高機能広汎性発達障害などがきっかけで、周囲の理解を得られずに「ひきこもり」という手段を使って自分を守ろうとしている人たちもいます。
上で示された「明らかな精神疾患がないひきこもり」とはどの様なものなのでしょうか。
精神科医の斉藤環(さいとうたまき)は、『社会的ひきこもり―終わらない思春期 (PHP新書)』の中で、「本人と家族の接点、家族と社会の接点の欠如」、すなわち孤立化を「ひきこもり」の原因としてあげました。また、同じく精神科医の斎藤学(さいとうさとる)は「ひきこもり」を「親の“子離れ”の失敗」と位置付け、具体的な指針を述べています。(『アディクションと家族「ひきこもり依存症」 Vol.21 No.1』)
こうした意味で、「ひきこもり」は発達段階の一プロセスの一形態と言うこともでき、そのプロセスを適切に進めることが「ひきこもり」からの脱却のステップとなると考えることも出来ます。
また、「ひきこもり」は必ずしも悪い面ばかりではありません。特に10代中頃より後半にかけて、自分の内なる力を確認するために、物の考え方が自分の内側に向くことにより一時的に起こっていると考えられる場合もあり、このようなひきこもりは、発達上から見ても大切なことです。
しかしその後に外に目を向けていくきっかけをなくしてしまったり、その状態を必要以上に否定されたりしてしまうことにより、本格的に「ひきこもり」に入っていくことあります。
つまり、ただ静観するのが大切な時期もありますが、積極的に関わっていくことが必要になってくる時期もあるのです。
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