第6回うつ病における問題

うつ病の女性が、精神科医から処方された新薬の副作用で夢遊病を発症し、無意識状態のまま殺人を犯してしまう…サスペンス映画『サイド・エフェクト(副作用)』が話題だ。服装や外見に無頓着になり、朝起きられず会社に遅刻、意欲がなくなり昼夜の生活リズムに構わなくなるといったうつ病の様子や、精神科医と患者のやりとり、向精神薬など精神医療について描かれている。監督のスティーブン・ソダーバーグは、アメリカに蔓延するうつ病、向精神薬が社会問題化するなかで問題提起として製作したという。

近年急激に増えたうつ病患者は、日本では100万人、アメリカでは約2000万人いるとされる。昔から潜在的にうつ病は多かったのだろうか。

うつ病キャンペーン

「うつ病はこころの風邪」「うつ病の疑いがあれば精神科にいって薬で治しましょう」といったうつ病キャンペーンが開始されたのは2000年頃。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)と呼ばれる新薬の抗うつ剤の販売がきっかけである。メディアには副作用がほとんどない画期的な新薬として紹介され、精神科への早期受診・早期治療を呼びかけるCMも流された。

パナソニック健康保険組合健康管理センター・メンタルヘルス科東京担当部長の冨高辰一郎医師は、「日本ではうつ病患者やメンタル面での休職者が増えたため啓発活動が行われたと考えられているが、それは原因と結果を取り違えています」という。

2000年にパキシルという向精神薬を発売したグラクソ・スミスクラインが啓発キャンペーンを行った結果、年間150億~ 170億円程度だった日本の抗うつ剤市場は、わずか数年で年間500億円の売り上げを記録した。つまり、一般の商品と同様、マーケティングが成功した結果なのだ。

現在、うつ病診断には、アメリカで生まれたDSM(精神障害の診断と統計の手引き)を基準に使っている。うつの疑いで病院を訪れると、うつチェックリストで「眠れない」「やる気が出ない」「人に会うのが億劫」「朝起きるのがつらい」「常に不安」などの症状と頻度のチェックで診断される。

「うつ病の診断基準の項目に『ほとんど毎日』、『ほとんど1日中』とありますが、『ほとんど』なんて、いくらでも意味を膨らませることができる」(冨高氏)。

内臓疾患だと、血液や尿の検査から検出されたデータから一定の基準を超えると病気であると判断されるが、精神疾患の場合は曖昧な判断基準で病気と診断され投薬治療が始まってしまう。

東京DDクリニック院長の内海聡氏は、「DSMに純粋に従えば、あらゆる人を精神病と診断することができる。つまり教科書そのものが間違っているのです。うつ病は脳内のセロトニンの分泌異常が原因といわれていますが、脳内のセロトニンの動きを検査する方法さえありません。そもそも 『うつ病』 の定義そのものがありません」。

2004年に設立された「日本うつ病学会」は製薬会社の支援によるもので、学会会則には患者への啓発活動が主目的に明示されている。どの学会も製薬会社のバックアップがあり、臨床研究では医師の協力が必要となるため、医師と製薬会社はもちつもたれつの関係である。「製薬会社からサポートを受けるということは、学会も製薬会社の影響を受けやすい」(冨高氏)
このように製薬会社と医師によってうつ病キャンペーンが大々的に行われたことによって、うつ病患者が急激に増えたのである。

薬の副作用

抗うつ剤などの向精神薬を服用すると落ち込みや意欲低下が改善されるが、眠れなくなることがある。不眠を訴えると向精神薬に加えて睡眠薬を与えられる。継続して飲んでいると薬物への耐性が強くなり効かなくなる。すると、量を増やされるか、さらに別の薬が与えられる…というふうに、向精神薬を多剤大量投与され、5~9種類を服用している人も珍しくない。特に日本は多剤大量処方が多い。

たくさんの薬を飲むと効果が高いと思いがちだが、薬はあくまでも化学物質。多くの副作用が表れる。向精神薬の副作用の代表的なものには、体重の極端な_増加、肝臓や腎臓への障害、暴力、攻撃性、躁状態、無気力、幻覚などがある。

最も恐ろしいのは、極度な興奮で正気を失い異常に落ち着きが無くなる「アカシジア」という症状。この症状を経験すると幻聴や自殺願望が表れる。アメリカでは製薬会社が精神科医に提示する警告書では、向精神薬の投与で自殺の危険性が 6~7倍増加すると報告されている。

最近の凶悪犯罪や奇怪な事件に向精神薬が関与していると疑われている。1999年のアメリカのコロンバイン高校での銃乱射事件の主犯者はSSRIのルボックスを処方されていたことから、被害者遺族が製薬会社を告訴し、裁判で因果関係は証明されなかったが、この薬は販売中止に追い込まれている。2007年のバージニア工科大学の銃乱射事件、日本で起きた大教大附属池田小学校事件や西鉄バスジャック事件など多くの犯罪者も向精神薬を服用していた。

「国内の自殺者数の6 ~ 7割は向精神薬を飲み、全国自死遺族連絡会による調査では飛び降り自殺者は100%が向精神薬を飲んでいた。約3万人とされる自殺者のうち、少なくとも7割近くが向精神薬の影響である可能性が高い」。(内海氏)

自殺や凶悪犯罪は、うつ病という病気のせいではなく、向精神薬が原因とされ、海外では副作用のデータが報道されているが、日本では報道されていない。

薬では治らない

薬があわないといって病院を転々とする人や、薬が良くないとわかっていても、急に薬をやめるとパニックを起こしたり以前の精神状態に陥るのが怖くて薬を手放せない人も多い。

「向精神薬は麻薬や覚せい剤と類似した作用機序をもち、依存性が高い。うつ病の治療には抗うつ剤の投与による治療が効果的とされていますが、WHOの1998年の調査によれば、抗うつ剤による治療を受けたグループのうつ病持続率は52%だったのに対し、抗うつ剤を投与しなかったグループの持続率は28%でした。つまり、薬ではうつを治すことはできません」(内海氏)。

元々、うつ状態に陥った理由を考えると、職場での重責や長時間労働、失業、いじめ、借金、家庭不和、離婚、失敗や挫折など社会的な要因である。薬は気分の落ち込みなどを緩和する対症療法であって、本来の原因を薬で解決できるわけではない。「根本的な原因を取り除かない限り、うつ症状は治らない。」という専門家もいる。

独協医科大学越谷病院こころの診療科の井原裕教授は、「1999年以降の、『うつ病・躁うつ病』の不自然な増加は、精神科医が製薬会社の疾患啓発に踊らされた結果にすぎない。そこでは、本来『悩める健康人』にすぎない人に保険病名『うつ病』が付され、必要のない向精神薬が投与された例も含まれよう。その結果、常用量依存ないし中止後発現症状といった有害事象が発生し、治療は終わりなき薬物調整となる。この事態は『医原病』そのものである」と言っている。

自分で自分を守る

体調を崩すと病院に行き、薬をもらうと安心する。専門的知識がないからといって、医師の言う事を鵜呑みにし、疑うことすらしない人は多い。現在の健康保険制度では、病気を治してしまうと患者が来なくなるため、定期的に通院してもらう方がいい。患者より医療を守る制度である。

「一般企業であれば、成果が大きければ対価は高くなり、成果がなければ対価はなし。しかし、医療では病気を治しても治さなくても同じどころか、治さないで長く通院させた方が儲かる仕組み。このような制度の欠陥が薬漬け患者を増やしている」(内海氏)。

薬害エイズ事件、薬害肝炎事件などの薬害事件、最近話題となっているノバルティスの高血圧降圧剤のデータねつ造事件などの製薬会社による情報操作などはたくさんある。薬害や医療過誤で患者側が裁判を起こして勝つのは、ほんのわずかだ。製薬会社も病院経営も経済活動である面を忘れてはならない。

広告料で運営するマスメディアは、製薬会社の広告が入っていれば広告主にとって都合の悪い事は報道しない。マスメディアが広告主に配慮して真実を報道しないということを、日本人は福島原発事故で学んできたのではなかったか。マスメディアで報道されない医療問題についての情報は、インターネットでいくらでも探すことができる。

ワークライフバランスの基本となる健康。昔は、薬などに頼らず、自然と対話しつつ五感を研ぎ澄まして養生をして健康を保ってきた。自分の身体を守るためには、周りの情報に振り回されず、自分の感性を鍛えること、そして自ら正しい情報を探求し知識を増やすこと、医師まかせにせず自分で身につけるしかない。

参考:
「週刊金曜日 954号(2013年8月2日)」
「医学不要論」内海聡(三五館)

2013/11/28

Posted by iffp