特集 引きこもり依存症(第14回日本嗜癖行動学会より)

現代社会の象徴としての「摂食障害」とその地域差 1.摂食障害が教えてくれるもの

香山雪彦(福島県立医科大学医学部 生理学第二講座)

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抄録:
 筆者は人間を機械として見る生理学を専攻しているが、その仕事を離れたところで摂食障害の学生たちとかかわり、また、福島お達者くらぶという摂食障害に苦しむ人たちおよびその家族の会の運営スタッフを務めて、その心の闇を眺めてきた。摂食障害という行動に依存せざるを得なくなっている人たちというのは、この現代社会に流れる「不安」という空気の変化をもっとも敏感に感じ、なおかつ誠実に生きようとしているために、育ってきた過程で「安心感」を得られなかったことによる自己評価の低さゆえの苦しさをそのような形でしか訴えることのできない人たちである。

 なぜ現代社会では不安が強くなっているか、その中で苦しさの世代連鎖を起こしてしまう家族の姿、さらに、その人たちに楽に生きられるようになってもらうためにはどのように受けとめるかなどについて考えてきたことを、第14回日本嗜癖行動学会ワークショップでの発表を基にして、ここにまとめた。

索引用語:摂食障害、不安、自己評価、現代社会、機能不全家族

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